こんなデートになるなんて聞いてない!2/3
美術展へ行く日は、少しだけ日差しが夏の名残を感じさせるものの、爽やかな秋の風を感じられるような天気だった。
お兄ちゃんの隣に立つためにはそれなりにおしゃれな恰好をしないと他人の視線が痛いということを学んでいるため、先日お兄ちゃんと買いに行った洋服から、私が特に気に入っている洋服を選ぶ。
うん。これなら他人にどう思われようとも自分が納得している私になれていると思う。
「よし」
鏡の前で気合を入れて、私はお兄ちゃんの元へ向かった。
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「はぁぁぁ。すっごく良かった」
正直絵が好きでない人と行く美術展って相手に気を使ってゆっくり見られなかったりするのでは・・・・・・?と思っていた。
しかし、お兄ちゃんも絵を楽しんでくれているみたいだったので、多少は気を使ったけれども、全体としてはゆっくり絵を見ることができて大満足である。
「お土産買って帰ろうか」
そう言ってお兄ちゃんは高い画集を二冊手に取った。
「え、二冊も画集買うの?」
一冊は私のと仮定しても、もう一冊はお兄ちゃんの分と考えるとすごく意外だった。
「うん。僕に気を使ってゆっくり見られなかった絵をゆっくり見てほしいから唯花の分と、今日の記念に。それに意外と絵もいいなぁって思ったから」
自分が好きなものを好きって言ってもらえたことがすごく嬉しくて、お昼ご飯を食べに近くに併設されているカフェへへ向かいながら、私は調子に乗って今日の絵の話を熱くお兄ちゃんに語っていた。
「特に私は風景画が好きなんだ。なんていうか、人の営みを感じるというか、世界の広がりを感じるから、かな」
人物画も抽象画も勉強になるし描きたいとも思うけれども、好きな絵のジャンルと言われれば私は風景画と答える。
「世界の広がり?」
「そう。自分が生きていない時代にそこにある景色みたいな営みが実際にあったんだろうなぁって思うし、それを絵に描こうと思ったからにはその景色がその人にとってとても大切なものだったんだろうなぁって思うと、すごく感情を揺さぶられる絵が多いんだよね」
温かみを感じる絵もあれば、哀愁や郷愁を感じる絵もあって、風景画といってもその幅は様々だ。
「そっか。そこまで僕は感じることはできなかったけど、今度からそう言う視点で見てみようかな」
「え、いや、その絵の捉え方は人それぞれだし、お兄ちゃんなりに楽しんでもらえるだけで充分だよ」
お兄ちゃんがどう思って絵を見ていたのかは分からないけれど、少しでも良いと思ってもらえただけで充分今日一緒に見に来た甲斐があったというものだ。
「うーん。絵は特に素人だし、自分だけの視点で見るより、そうやって教えてもらって初めて見える世界もあると思うんだよね。だから、家に帰ってこの画集を見る時はそうやって色々考えて見たいなぁって思ったよ」
確かに、時代背景とか絵画の歴史を知ってから見る絵もまた面白さがあって良いけれども、ただ綺麗だな、好きだなと思う絵の鑑賞の仕方も良いと思うのだけれど。
感想やいいね、評価などありがとうございます!すごく嬉しくてやる気に繋がってます!
今までのお話にもいいねボタンを全部押してくださった方がいらっしゃって(同一の方かは分かりませんが、重複してないから同一の方なのかなぁと思ってます)驚いたと同時にものすごく励まされました。
なんとか完結できるように少しずつ書いてますので、また完結に向けて良いお知らせができればと思ってます。




