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こんなに怖い呼び出し理由だったなんて聞いてない!(side 桐葉)

『文化祭の件で話があるから、明日の朝礼の前に生徒会室に来てほしい』


真咲からそういうLINEが届いたため、俺はいつもよりも少しだけ早い時間に学校に登校していた。


真咲が文化祭の件を相談できるのって、唯花の件で大変な湊以外だったら俺くらいだし??湊が大変な時だからいつもより働いてやらんことはない。


そう思いつつ生徒会室のドアを開けると、そこには真咲はいなくて、代わりに湊がいた。


え、なんで湊がいるんだろう。あ、まさか3人で話すとか?で、呼び出した張本人の真咲はまだきてないとか?でも時間ぴったりに来た俺より遅いとか、遅刻だろ、とか思いながらドアを閉めた。


「よ、湊。唯花ちゃん大丈夫なの?てか、真咲遅くね?」


声を掛けても湊に特に反応はなく、仕事をしているわけでもなく、不気味なほど静かに生徒会長の椅子に座っていた。


まぁ、あれだけ大切なお姫様が階段から落ちた2日後に元気いっぱいというのも不自然だろう。


真咲に『着いたけど。お前遅刻?』とLINEを送って、俺もいつもの席に座った。


「真咲もさぁ、今日くらい湊抜きで話し合ってもいいと思うだけどなぁ。というか、朝からそんなに話し合う時間ないってのに遅刻って。呼び出しといてなんだよ、あいつ」


既読にもならないってことは、気がついてないのか?


「真咲は来ないよ。呼び出したの、俺だし」


こんなテンションの低い湊と同じ空間にいるのも気まずくて、空気を誤魔化すために真咲に電話しようかと思っていたところにとんでもない爆弾発言が聞こえてきた。


「は?いやでも真咲からだったと思うけど」


見間違えたっけ?


「真咲にLINE送るように頼んだけど、呼び出したのは俺だから」


あぁ。そういうことか。いやでも、なんでそんな回りくどいことをしたんだ?


「なんかよくわかんないけど、まーそれなら用件をどうぞ?」


湊に呼び出されても普通に来たと思うけど、こんなろくな話じゃなさそうな呼び出し内容だったら相手が誰でも来なかったと思う。


・・・・・・出来うることなら逃げ出したいけど、今逃げても湊が逃がしてくれるとは到底思えないからなぁ。


「唯花を突き落とした犯人が分かったんだ」


へー。スピード解決。目撃者が見つかったのか?


それでその見事な手腕の話を今から俺にわざわざ話したいとでも言うのだろうか、名探偵。


「それで?その報告をわざわざ俺にする理由って何?」


意味が分からなさ過ぎて、流石の俺でもイライラしてきた。


「・・・・・・結論から言うと、首謀者は山口佐鳥だった」


湊のじっとこちらを見つめる冷たい視線が気になったが、それ以上に発言内容が気になった。


「は?あの山口が??」


いや、でもよく考えれば分からなくもない。


「そう。突き落としたのが二年の堀って奴で、そいつに指示をしていたのが山口ってことなんだけど」


この俺を利用したくらいだ。他人を利用することを何とも思ってないタイプだと思うし。


「でも改めて考えてみたら、君が一番の黒幕という可能性があるという結論に達したんだよね」


何か釈明はある?という湊の言い方は、あまりにも静かで、落ち着いていて、それが逆に物凄く怖かった。


嵐の前の静けさってきっとこういう事を言うのだろう。


「いやいやいや、ちょっと待って。俺はマジでこの件に関わってないんだけど!?そもそもどうしてそんな結論に達したの!?」


山口かその堀って奴が俺の名前を出したのか??でもほんとに俺関わってないんだけど。


「俺が山口と付き合うきっかけになったのが、桐葉だったから」(※74話)


あー。そう言えばそうでしたね!!柚葉の恋愛を成就させるのに湊が邪魔だったからっていうのは建前で、正直二人が付き合ったらめちゃくちゃ面白そうなことになりそうだったから山口の手伝いをしたっていうのが本当の理由だけど、唯花ちゃんが怪我した上に黒幕に疑われるんだったらしなければ良かったって今めちゃくちゃ反省してる!!


馬鹿!!過去の俺の馬鹿!!


「もしも桐葉がこの件に関わってないって言うなら、その証拠を見せてよ」


証拠って、それって悪魔の証明じゃないのか?関わってないんだからその証明とかないんですけど。


いやでもここで『ない』っていう二文字だけで終わってしまえば、うまく釈明できなかったってことになり、それはつまり死を意味しているわけで。


「ないけど、納得するまで隅々までスマホ見てもいいから!あとはそう、もし二人と顔を合わせていた日とかがあるなら、その日会ってなかったっていうアリバイを証明するし!」


神様仏様湊様、どうかお願いします。これで納得してください、とスマホを差し出しながら命乞いをする。


「じゃあ、何であの日俺と山口をくっつけようとしたの?」


え、気になるポイントそこなの?今からスマホをチェックする流れじゃないの?


「・・・・・・何でと言われましても。山口さんが健気すぎたから、応援してあげたくて」


流石に正直に『面白そうだったから』とは、言えないよなぁ。


「黒幕じゃないって言うのは本当だけど、健気すぎたからっていうのは嘘。


はぁ。・・・・・・どうして人って嘘を付くのかな?見抜こうと思えば見抜けるのに」


黒幕の疑いが晴れたのはありがたいけど、見抜こうと思えば嘘が見抜けるって普通に怖い。それが普通の人もできると思っている湊が怖い。


「まぁ、正直に言うと、面白そうだったから、です」


実際面白かったよね。学校中の騒ぎようが。


「そう」


今度は本当の理由を言ったからか、納得して頂けたみたいで。


いやぁ、無罪放免、良かった良かった。そう思って和やかなムードになるかと思いきや。


「桐葉って、そうやって俺をおもちゃにして遊んでたの?そのために友達になったの?」


湊から意外過ぎる言葉が飛び出してきたので驚いた。いや、揶揄(からか)っていたことがあったのは確かだけど、おもちゃにして遊ぶって人聞きが悪いんじゃないか?


「そういうわけじゃないけど、過去にお前を揶揄(からか)ったことがあるのは認める」


まぁ、お前は気が付いてなかったみたいだけど。誕生日プレゼントを真剣にダイヤの指輪にしようとしていた時は最高に面白かった。


「でも、友達なんだからそれくらい当たり前だろ?つーか、これでも今までの友達よりも加減してるんだけど」


中学までの友達に対してはそれこそ何でもやった。やり返してくるタイプの奴らだったから骨を折ったことさえあるけど、だからこそ最高に楽しかった。


「お前が友達に求めるものが面白さだったとしたら、俺が友達に求めるものは誠実さなんだけど」


友達に求めることが誠実さなんて、湊らしいといえば湊らしいな。


「だから俺は、お前が俺に面白さを求めるのだとしたら、もう友達ではいられない」


は?


「いやいやいや。どうしてそんな結論になるわけ?確かに揶揄(からか)ったこともあるけど、俺は俺なりに誠実だったって。それに俺の言葉が揶揄(からか)っているかどうか、嘘が分かるなら湊なら分かるんじゃないの?」


誕生日プレゼントの件だって、真面目にアドバイスした時もあったし。


そりゃあ時には面白さに負ける時もあったけど、俺は湊に対して基本的には誠実だったと思う。


「友達と話す時にそんな風に警戒したくない」


まぁ、確かにそうか。


「別に冗談や揶揄(からか)うことが全て嫌だというわけじゃない。けど、今までを振り返ってみて、お前が俺を揶揄っている時の揶揄い方が、俺なんかどうでもよくてお前さえ面白ければ良いって言う感じがするのが嫌だって思った。だって、俺とお前は友達だと思っていたから」


確かに、それはそうだったかもしれない。こいつは頭も良くて、運動もできて、少しくらい俺の冗談で傷つけばいいのにって思ってた。でも傷ついても、痛くも痒くもないだろうって思ってた。


「俺は友達に誠実さを求める考え方を改めることはできないと思った。だから、お前も友達に面白さを求める考え方を変えられないっていうなら、俺はお前と友達を辞めるしかないと思う」


え、友達を辞める時って普通こんな会話するっけ。なんとなく疎遠になっていって、こっちも空気を読んで友達じゃなくなるものだと思っていた。


もしくは一方的になじられて友達終了とか。


こんな風に考え方がお互いに合わないなら友達を辞めましょうって言うパターン、初めてなんだけど。


「・・・・・・お前ってほんっと変わってるな」


今まで考えたことがなかった。友達に誠実さなんて求めたことがなかった。


面白ければそれでよかった。使うか使われるしかなかった。


でも確かに湊と真咲と一緒にいる時には安心できたことも事実だった。


面白い友達なんていくらでもいたけれど、安心できる友達なんて今までいなかったから。


「ごめん。謝る、今までのこと。言い訳じゃないけど、俺にとっては友達っていうのはそういうもんだったからさ・・・・・・。それにお前相手に調子に乗ってた一面もあったと思う。ほんとごめん」


俺より頭が良いはずなのに、唯花ちゃんのことになるとポンコツになるこいつを見て、優越感を感じていたのは事実だったから。


「でも、今回話して俺も思った。俺も湊や真咲と誠実に向き合いたいって。だから、勝手かもしれないけど、友達を辞めたくない」


そう言うと、今日初めて湊は冷え冷えとしたオーラを消して、普段の湊と同じオーラに戻った。


あれが敵に対するオーラだとしたら、敵になりたくないなぁとしみじみと思う。


「桐葉の本音は分かった」


「わかってもらえて嬉しいよ、湊」


こうして俺たちは改めて友達になった。


俺は初めて友達ができたような気がした。

5年前の子供の日に投稿したので、今日で6年目に突入しました。

そんなに長期間連載できているのも、皆さんの応援のおかげです。

web拍手を定期的に押してくださる方とか、少しずつ増えてる評価などを見ると頑張ろうと思います。

これからも応援よろしくお願いします。


今回の話で第3章が終わりとなります。

以前活動報告の方に載せていたホワイトデーの話を番外編として挟んだ後に第4章が始まるのですが、

第4章が最終章なので、やっと終わりの章まで辿り着いた感じです。

とはいえ、第4章もそれなりにボリュームがある予定なので、完結までにどのくらいの期間が掛かるのかは分かりませんが・・・・・・最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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