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付き合うことになるなんて聞いてない!5/7

スマホを使わない生活に違和感を感じなくなったころに退院となった。


午前中に最後に軽く診察を受けて、昼食後すぐに退院したので、学校は明日からの予定である。


1週間も休んでしまったため、授業についていけるか少し不安ではあるけれども、美琴と一緒に勉強したので多分大丈夫だろう。


「はー。久しぶりの我が布団だ」


お兄ちゃんが昨日布団を干してくれたそうなので、サラサラのシーツが心地良い。


ちなみにお兄ちゃんがシーツを洗濯したいと言い出すことは予測済みだったので、美琴に持ってきて欲しいものを頼むついでにオタクグッズを置きっぱなしにしていないかを事前に確認してもらっていた。


そのため、お兄ちゃんにオタクバレはしていないと思う。


そのことを頼んだ時に、美琴からはオタクがばれてもいいじゃないと言われたけれども、できれば避けたかった。


ただでさえ、運動もできないし、成績も中の中くらいだし、絵を描くことが取り柄の陰キャな私に、オタクという属性がついていることを知られたくない。


そんなことを考えていると、部屋のドアを叩く音がした。


「唯花?今大丈夫なら、少し話がしたいんだけど」


ドアの外から控えめにお兄ちゃんの声が聞こえる。


大丈夫な旨を伝えて、久々にリビングへ向かった。


----------------------------------------------------------------------------------------------


リビングのテーブルにお兄ちゃんと向かい合って座る。


「唯花、あの」


お兄ちゃんが気まずそうな言い方から、楽しい話ではないだろうと思われる。


え、なんの話だろう。怖すぎる。


けれども、その前に私から話がしたかった。


「その前に、改めてお兄ちゃん、色々ありがとうございました」


学校の帰りに毎日来てくれたし、お見舞いにとデザートに美味しいものも持ってきてくれたし、病院の中庭を散歩するときも一緒に歩いてくれたり、退院する時も迎えに来てくれたから、改めてお礼を言いたかったのだ。


「・・・・・・。そのことも含めてなんだけど、僕のせいでいろいろ唯花に不愉快な思いをさせたと思ってる。ごめんね」


お礼を言ったら謝られた件について。


「急にどうしたの?」


もしかして階段から私が突き飛ばされたことを知ってる、とか?


でも、それでもお兄ちゃんが謝る理由にはならないと思う。


突き飛ばされた本人としても、どうして突き飛ばされたのかよくわかっていないのだから。


人に恨まれるようなことをした覚えはないけれど、覚えはなくても恨まれることもあるだろう。


「美琴ちゃんから色々聞いたから・・・・・・」


なるほど。納得した。お兄ちゃんのことを色々教えてほしいとか、教えてくれないなんてひどいとか色々言われてきたことを指しているのだろう。


「・・・・・・でもそれはお兄ちゃんのせいではないと思ってるから、気にしないで」


というか、一番そのことで困ってきたのはお兄ちゃんだと思うし。


私の分まで負担に感じていたら相当つらいと思う。


「僕がはっきりとした態度を取らなかったのが悪いと思ってるんだ。それで、はっきり皆に伝えた方が良いと思って」


うんうん。僕のプライベートを詮索するのはやめてくださいとか言ったのかな。


「唯花と付き合ってるので、他の人とは付き合えませんって公言しちゃった」


・・・・・・。


・・・・・・。


え・・・・・・?


「それは…つまり…お兄ちゃんと私が付き合ってるって言ったってこと?」


お願いだから違うと言ってほしい。


そんな願いも虚しく、お兄ちゃんは「うん」と言った。


「ど、どうして…?」


聞き間違いじゃないなら、そこには理由があるはずだ。


「一番の理由は、唯花のことが好きだから、守りたいんだ」


好き?お兄ちゃんが、私のことを?


「ごめん…唯花を混乱させたいわけじゃなくて……返事だっていらない。ただ、僕の気持ちを伝えたかったのと、もう二度と唯花に傷ついて欲しくないってだけなんだ」


真剣な表情でそう言われて、ますます混乱した。


やっぱり、階段から落ちて、違う世界に辿り着いてしまったのかもしれない。

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