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日常生活で国語の問題を解くような気分になるなんて聞いてない。

「で、メールにはなんて書いてあるの?」


「あぁ。うん。えっと、剣道部に入ろうと思うのですが、唯花はどう思いますか?友達に誘われただけで、そんなに乗り気じゃないので、唯花は嫌だって言ってくれても構いませんだって。嫌じゃないよ!全然良いよ!」


えぇ。何だこのさっきの理論を大きく覆すメールは!


しかしこれはこれで好都合。部活、しかも剣道部なら拘束時間長そうだし、決まった時間家にいないのは気楽そうだった。


「何て返事をしよう……。私に気にせず、部活に入ってください。とかかな?」


「いや、違う。そうじゃないよ、唯花」


え。何が違うというのだろう。


「いい?きちんと登場人物の気持ちを考えないと、自分の理想とする快適な生活は、やってこないわよ」


な、なんだそれは!


「え、なにそれ。登場人物って、お兄ちゃんのこと?」


「そう。そしてお兄さんがどうして唯花にわざわざ袴を着た写真を送ってきたのか、どうして部活動の相談をするのか、その二つを考えて、もっとも唯花の望んでいる結末を得られるような返信を考えるのよ!」


え、えぇぇ。もしかして美琴はいつもそんなことを考えて返信してるのか……?


「りょ、了解。えっと、どうして写真を送ってきたのかというと……。そうだなぁ」


これは結構難しいぞ……。国語のテストの問題で言ったら一番最後に出てくるくらい難しい。


「あ、私が剣道部のイメージが湧かないかもって思ったのかもしれない。だから袴を着てするんだよーっていう心遣い、的な?あとは、どうして、部活動の相談をしたか、だっけ。それは簡単だよ」


これは割と簡単だ。


「家事を分担してるから、ちょっと家事をしてもらう日が増えるかもしれないけど、いいかな?ってことでしょ。そうか。分かったぞ!」


美琴の言いたいことがはっきりとわかった。


「家事は全部私に任せてください!って付け足したらいいんだね!」


「全然ちがーう!!!!!!」


物凄い勢いで手刀が降ってきた。うわぁぁ。


「え、違うの?」


「違うよ!まったく。よくそんなんでオタクが名乗れるわね」


そんなところにまで及ぶの。


「というかよくそんなんで国語が一番取れるわね!!!」


「いや、国語は昔から得意だから……」


「ならさっきのところで使え!!!ったく。違うわよ。写真を送ってきたのは、あんたに褒められたいからでしょ。袴姿格好いいね!お兄ちゃん!みたいな」


まじで……。あの人、容姿の評価とか気にするタイプには見えないんだけど。


「で、部活動の相談はあんたの心の中を気にしてるんでしょ。これで、私を一人にしないでって反対されたらそれはそれで嬉しいし、応援されたとしてもどういう応援をしてくるか、という相手の心理が、私には見える……」


「美琴。そんなに深読みするから、国語のテストのひっかけに引っかかるんだよ……」


「うるさい」


まじかー。そんな深層心理、私にはさっぱり分からないけれど。ここは美琴の言うことを信じてみよう。


「え……。じゃあなんて返事したらいいの」


「それは自分で考えるべきだとは思うけれど、なるべく家に帰ってきてほしくないんでしょ?それなら応援してますっていうのをコーティングすればいいのよ。あ、でもあくまで言葉はシンプルに」


「シンプルに?」


「そう。相手に期待を持たせるようなメールをしちゃ駄目。例えば、大会で優勝できるくらい頑張って下さい。大会で優勝する姿を見てみたいですとか書いたら絶対に大会に連れて行かれるから、大会に応援しに行きたくないなら、書かないことね」


あー。うん。確かに。あまり心にもないことを書いても駄目だってことだよね。


「分かった。書いてみるよ」


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