付き合うことになるなんて聞いてない!1/7
「トイレ綺麗すぎてびっくりしたんだけど、ここホテルだったりするわけ・・・・・・?ってどうしたのよ、唯花」
1週間もスマホが使えないという話を聞いて絶望した顔をしていたのか、お手洗いから戻ってきた美琴に不審そうな顔をされてしまった。
「画面の修理に一週間くらい掛かるっていう話をしていたところなんだ」
苦笑いをしながらお兄ちゃんはそういうけれども、現代人にとっては死活問題ですよ。スマホが使えないというのは。
「あぁ、確かに辛いわよね。でも安心して!」
も、もしかして代替機があるとか!?流石美琴!私の気持ちを分かってくれているのは美琴だけだよ。
「退屈だろうと思って、唯花が読みたがってた本と、見たがってた映画と、DVDプレーヤーと、スケッチブックと教科書類を取り揃えて置きました。湊さんのお金で」
違う。そうじゃない。
いや、助かるけど。助かるけど、プラスαでスマホがあってもいいんですよ、美琴、お兄様。
「他にもほしいものがあったら言ってね。あとこれ、連絡が取れるように」
あ、そういう?落としてから持ち上げる系のやつ?
「はい、テレフォンカード」
わー。テレフォンカードだ。久々に見た。
「あ、唯花、公衆電話使える?」
「小さい頃はよくお母さんに電話かけるために使ってたから使えるけど・・・・・・」
そういえば昔は携帯電話も契約してなかったから、出先から連絡するとき大変だったなぁ。
「ならよかったぁ。ロビーの公衆電話でいつでも電話してきていいからね」
って違うんですよ、お兄様。私が欲しいのはスマートフォンです。
でもあまりにもニコニコ笑顔でテレフォンカードを渡してくれたお兄ちゃんに"テレフォンカードじゃなくてスマホがほしい"とは言えなかった。
だって、普通に考えて代替機が借りられるのなら借りて渡してくれるだろう。
渡してくれないということは、代替機が借りられなかったということだ。
携帯の画面が壊れて修理にお金がかかっているというのに、新しいスマホを契約してきてくれとは言えない。
「まぁまぁ、デジタルデトックスと思えばいいじゃん」
理屈では理解していたつもりでも、あまりにも顔にスマホが欲しいと書いてあったのか、お兄ちゃんがお手洗いに行った間に美琴にそう言われてしまった。
うーん。確かに。そう思って過ごそう。
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