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一週間もスマホが使えないなんて聞いてない! 2/2

「ううん。唯花が無事ならそれでいいんだ。でも、何があったか聞いても良いかな」


その質問は絶対に聞かれると思っていたため、あらかじめ「考え事をしていたら足を滑らせてしまったの、ほんとドジだよね」という答えを考えていた。


犯人を庇うわけではないが、誰かに突き落とされたと言えば、必ず犯人を見つけ出すとお兄ちゃんと美琴は言うだろう。


そうなると私の記憶が頼りになるわけだけれど、一瞬しか見ていない人を目の前にしたところで、犯人だと言い切れる自信がなかった。


だって、犯人だと言った場合その人の人生を大きく変えてしまうことになるから。


そのことが恐ろしかった。


それに、犯人と再び顔を合わせないといけなくなるのも怖い。


犯人が今何を考えているのかはわからないけれど、もう二度と私の前に現れないというのなら、それ以上に望むことはない。


しかも、犯人を見つからなければきっとお兄ちゃんたちは永遠に犯人を探し続けるだろう。


そうなるとみんながずっと苦しむことになる。


それよりは私の胸に納めて、今後背後を気を付けて生きた方が良いと思った。


けれど、お兄ちゃんの"何があったか"という聞き方が引っ掛かった。


お兄ちゃんがただ単に事実を聞きたいだけなら、別に良い。


けれども、誰かに押されたという目撃情報があった上で聞いているのなら、私が足を滑らせたという発言では、齟齬が生じてしまう。


「あー。それが、あんまりよく覚えてなくて・・・・・・」


だから誤魔化すことにした。


あんまりよく覚えていないことも事実だし、頭を打った人が記憶がないこともよくあるって先生がさっき言っていたから。


「え、記憶喪失!?大丈夫?気分悪いところない?もう一遍お医者さんに良く診てもらうように言おうか!?」


そう言ってナースコールを押そうとする兄を止めるのは大変だった。


「大丈夫だから!全然平気だから!」


という言葉を繰り返したけれど、全然納得していないお兄ちゃんの表情を見て、ここは話題を変えるに尽きると思った。


話題話題。何かあったっけ。


「あ、スマホ!お兄ちゃん、私のスマホがどこにあるか知ってる?」


そういえばすっかり忘れていたけれど、スマホが見当たらないのだった。


ちらっと病室を見渡してみたけれど、見える範囲においてある様子はない。


どんなラインが来ているかわからないため、スマホを確認するのは少し怖かったけれど、でもやっぱり確認したい。


「あー、それが画面が割れちゃってて、使えなくなってたから、修理に出そうと思って預かってるんだよね」


私のスマホがそんなに衝撃を受けていたなんて知らなかった……。


たまに大切にしていたものが身代わりになったおかげで本人にあまり怪我がなかったっていう話を聞くけど、それかもしれない。


ありがとう私のスマホ。


「でね、それの修理が一週間くらいかかるみたい」


え、それって現代っ子には辛すぎる所業なのでは。




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