表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

蜻蛉の三題噺

サイは投げられた

作者: 尻切レ蜻蛉



靴の中に画鋲が入っていた。

それだけのこと。



「いやがらせでしょ」

「間違いなく」

「絶対に」


断言する三人に、あたしはタコさんウインナーを口に入れて嫌そうに眉を顰めた。


「ただ入っちゃっただけかもしれ」

「まさか」

「ないない」

「あんたの靴箱、一番上でしょ?ありえないって」


うっと言葉につまると、三人はここぞとばかりにまくし立てる。


「だからやめなよっていったのに」

「あんな顔だけ男」

「遊びなれてそうだし、取り巻き多いし」

「あ、赤坂君は良い人だよ。初デート、20分も遅刻しちゃったのに待っててくれたし」

「えー?普通じゃん」


肩を竦めたロングストレートの少女に、あたしはぷぅと頬を膨らめた。


「紫野ちゃん、1分遅れても怒るでしょ」

「そりゃ、アタリマエでしょ」


しらっという紫野ちゃんに怒る気も失せて、あたしはもう一つのタコさんウインナーを口に入れる。


「でもさ、なんであいつなの?」

「あんたが軽々しくOKするなんて思えないから、もともと好きってことでしょ?」


どうなのよ-ずいずいっと迫られて、あたしは危うくタコさんウインナーを喉につまらせるところだった。


「ひ、秘密だよ。先に行くね」


ばたばたとお弁当を片づけて、あたしは屋上から逃げ出した。


「流石に、いえないよねぇ」


あたしはぽつりとひとりごちて、階段を下る。

学年一のモテ男、赤坂君に頼まれて、偽彼女をやっているなんて知ったら、きっと人の良い三人は彼のところに文句をいいに行くに決まっている。

けれど、それでも


「近くにいられて嬉しい、なんて、もっといえないよねぇ」


小さい頃に一緒に遊んだ。

あの頃は髪も染めていなくて、カラコンも入れていなくて、散々苛められていた。

でも彼だけは唯一仲良くしてくれた。

母国から、またこの国に戻ってきて再会できるとは思っていなかったから、傍にいられるだけで十分。


『Alea jacta est』


あたしがママから聞いたこの言葉を思い出すのは、もう少し先のこと。

彼とあたしとあの三人を巻き込んで、物語はもう動き出していた。



【三題噺】初デート、がびょう、サイコロ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ