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お菓子つくって待ってるね

作者: 丸窓ふゆ
掲載日:2026/09/28


ちょっと早起きして、

この小説を見つけてくれたあなたに捧ぐ


「おはよう、早起きですね」


同居人のハルが微笑みかける。リビングの椅子に腰掛ければ、キッチンからは甘い香りが流れてきた。


「紅茶はアッサムでいい?」


問いかけに頷いてみせれば、はーいと気の抜けた返事が返ってきた。しばらくしてハルが持ってきたマグカップでは、白い湯気が揺らめいている。

テーブルの上のはちみつの瓶を開け、ティースプーンで掬う。熱々の紅茶に垂らすと、あっという間に溶けて消えた。


外はまだほの暗く、やけに静かだ。この肌寒さでは紅茶もすぐに冷めてしまいそうで、早々に口を付ける。早朝の匂いとアッサムの芳醇な香りが混じり合って、体の中を駆け巡る。

ハルも冷蔵庫に寄り掛かって紅茶を飲んでいた。基本的にはめんどくさがりなくせに、いつもこの朝の時間だけは早起きして待っている。なんとも不思議な人間だ。

そのときオーブンから軽快な音が鳴った。ハルが開けると一気にの香ばしい香りが広がる。小麦粉、バター、砂糖。それから干し葡萄とレモンピール。パウンドケーキだ。

ハルのパウンドケーキはいつも決まってこれ。表面はサクッと硬めに焼き上げた、アッサムによく合う焼き菓子。切り分けたハルが2人分の皿を持って隣に座った。


「よければどーぞ」

「ありがと」


いつものやりとりを交わし、フォークを入れ、一口。温かい。干し葡萄の、甘みに隠れた微かな酸味。レモンピールはほろ苦くて良いアクセントになっている。少し冷めた紅茶で喉を潤せば、思わず嘆息が溢れそうになった。

隣でご機嫌にパウンドケーキを味わうハルは呑気に鼻歌を歌っている。もう一度「ありがとう」と伝えれば、ハルは「おはよう」と返した。


これが幸せの形なのかも、なんて。柄にもないことを思ってしまうくらいには、自分もこんな朝を気に入っているのかも。これではハルを不思議な人間だと笑えないな。


温かいパウンドケーキをもう一口頬張った。


おはようございます

あなたの一日にちょっといいことがありますように


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