姿かたちを変えても出逢ってしまう君へ。今度は、笑顔を増やせますように
空を見上げて、瞬く光たちに少しだけ目を細める。
きらきら光る、天の川。
さて今年は彦星と織姫は逢えたんだろうか。
「……年に一度くらいなら、逢うのもいいね」
「だ、誰にですか?」
小さくこぼした言葉は、隣にいた友人に聞こえていたようで。ゲームショップからの帰り道。雫来の声で、天の川から正面へと目を戻す。
「ナイショ」
「ず、ずるいです……!」
「なんでさ……」
冗談で言った言葉への、突然のずるい発言には一瞬苦笑い。それでも「なんでもです」と言ってくる雫来に肩を竦めて、もう一度上を見上げた。
隣で、同じように上を見上げる雫来が横目に入る。
正面を見ていないと危ないというのはわかっていつつも、きらきらと光る天の川に魅入って、二人でゆっくりとした足取りで天の川を見ながら歩く。
「あ、逢いたい人でも、いるんですか?」
「……んー」
雫来から聞こえた声に、どうだろ、と。自然と本音がこぼれていた。
答えながら、天の川の中に浮かぶのは、逢いたいようで、逢いたくない、
――もう、逢えない人。
きっとこんな空が似合うであろう、月のような人。
「……逢っても、たぶん」
「はい」
「まともに言葉もかけないとは思う」
あの日のように。
俺はきっと、顔だけ確認して。すれ違って、薄情にも「はじめまして」と言うんだろう。
けれど。
「なんとなくね」
一年に一度だけだったなら。
そのくらいの頻度だったのなら。
たとえ終わりが来るとわかっていても。
「もう少し、素直になれたのかなぁなんて」
一年に一度だけ。
たった一度だけしか逢えないのなら。
その日を大切にして、君への態度も柔らかくなったんじゃないか。
「そんなこと思うんだよ。たまにね」
笑えば、雫来も笑った声を出して。
「……そのくらいの、頻度だったら、すごそう、ですよね」
「ん?」
唐突な言葉に、思わず雫来を向く。
雪のようなはずなのに、どこか月を思うその人は、俺を見て美しく笑って。
「一年間の、ぉ、お話が……止まらなくなりそうです」
なんて、言うから。
どこか、いつの日かを思い出してしまう。
毎日のように逢っても話が尽きなかったあの人。一日逢えないものなら話の量は倍になって。
そういう日は、来る時間も早くて、帰る時間は遅くなる。「送ってくよ」なんて言っても、「もう少しで終わるから」なんて、終わらない話をまた始めて。
それを、楽しんでいた自分もいて。
――そうだね。
「一日じゃ足りないわ」
きっと二十四時間なんて時間じゃ足りないくらい、”君”は話すんだろう。
「だったら、こ、こまめに逢っておく方が、いいと思います」
「同感」
再び一緒に空を見上げて、想う。
もう逢うことはない、”あの日の君”へ。
あの時素直になればよかったと、今も後悔してる。
名前すら呼ばなかった大切な君は、あの後、少しでも幸せになれたんだろうか。
――ねぇ、今度はさ。
「雫来」
「はい」
たくさん、”君”の名前を呼ぶから。
「今日のゲームの話、今日中で話足りそう?」
「ううん、――全然、足りないよ」
あの頃のように、どうかたくさん笑ってくれますように。
願いを込めて、星が降りそうな夜の中。
雫来と共に、足を進めた。
『姿かたちを変えても出逢ってしまう君へ。今度は、笑顔を増やせますように』/レグナ




