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姿かたちを変えても出逢ってしまう君へ。今度は、笑顔を増やせますように

作者: 澪ナギ
掲載日:2026/01/28

 空を見上げて、瞬く光たちに少しだけ目を細める。

 きらきら光る、天の川。

 さて今年は彦星と織姫は逢えたんだろうか。


「……年に一度くらいなら、逢うのもいいね」

「だ、誰にですか?」


 小さくこぼした言葉は、隣にいた友人に聞こえていたようで。ゲームショップからの帰り道。雫来の声で、天の川から正面へと目を戻す。


「ナイショ」

「ず、ずるいです……!」

「なんでさ……」


 冗談で言った言葉への、突然のずるい発言には一瞬苦笑い。それでも「なんでもです」と言ってくる雫来に肩を竦めて、もう一度上を見上げた。

 隣で、同じように上を見上げる雫来が横目に入る。

 正面を見ていないと危ないというのはわかっていつつも、きらきらと光る天の川に魅入って、二人でゆっくりとした足取りで天の川を見ながら歩く。


「あ、逢いたい人でも、いるんですか?」

「……んー」


 雫来から聞こえた声に、どうだろ、と。自然と本音がこぼれていた。


 答えながら、天の川の中に浮かぶのは、逢いたいようで、逢いたくない、


 ――もう、逢えない人。



 きっとこんな空が似合うであろう、月のような人。


「……逢っても、たぶん」

「はい」

「まともに言葉もかけないとは思う」


 あの日のように。

 俺はきっと、顔だけ確認して。すれ違って、薄情にも「はじめまして」と言うんだろう。


 けれど。


「なんとなくね」


 一年に一度だけだったなら。


 そのくらいの頻度だったのなら。


 たとえ終わりが来るとわかっていても。


「もう少し、素直になれたのかなぁなんて」


 一年に一度だけ。

 たった一度だけしか逢えないのなら。


 その日を大切にして、君への態度も柔らかくなったんじゃないか。


「そんなこと思うんだよ。たまにね」


 笑えば、雫来も笑った声を出して。


「……そのくらいの、頻度だったら、すごそう、ですよね」

「ん?」


 唐突な言葉に、思わず雫来を向く。

 雪のようなはずなのに、どこか月を思うその人は、俺を見て美しく笑って。


「一年間の、ぉ、お話が……止まらなくなりそうです」


 なんて、言うから。


 どこか、いつの日かを思い出してしまう。



 毎日のように逢っても話が尽きなかったあの人。一日逢えないものなら話の量は倍になって。

 そういう日は、来る時間も早くて、帰る時間は遅くなる。「送ってくよ」なんて言っても、「もう少しで終わるから」なんて、終わらない話をまた始めて。


 それを、楽しんでいた自分もいて。



 ――そうだね。



「一日じゃ足りないわ」



 きっと二十四時間なんて時間じゃ足りないくらい、”君”は話すんだろう。


「だったら、こ、こまめに逢っておく方が、いいと思います」

「同感」


 再び一緒に空を見上げて、想う。



 もう逢うことはない、”あの日の君”へ。


 あの時素直になればよかったと、今も後悔してる。

 名前すら呼ばなかった大切な君は、あの後、少しでも幸せになれたんだろうか。



 ――ねぇ、今度はさ。



「雫来」

「はい」



 たくさん、”君”の名前を呼ぶから。



「今日のゲームの話、今日中で話足りそう?」

「ううん、――全然、足りないよ」




 あの頃のように、どうかたくさん笑ってくれますように。



 願いを込めて、星が降りそうな夜の中。


 雫来と共に、足を進めた。


『姿かたちを変えても出逢ってしまう君へ。今度は、笑顔を増やせますように』/レグナ




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