第8話:龍脈書院からのスカウト状が来た件
神殿巡り? 龍王の使命? いやいや、こっちは今日も五十肩との闘いなんで。
ナギ、書状スルーで現場に専念します。
新しい診療棟で迎えた、ある日の午前ー
ナギは鍼の煮沸を終えて湯気の中で伸びをしていた。
「ふぅ……今日は“肩井”が大人気だったわね」
窓際では、ハチが湯気に顔をしかめている。
「湿気、嫌い。毛がしける」
そこへ、受付のリリナがそっと扉を開けて入ってきた。
「ナギ先生……あの……ちょっと、お届け物が」
「ん?」
差し出されたのは、**封蝋のついた豪華な書状**。
龍の紋章が、ど真ん中に押されている。
その紋章は、なぜかナギのいる方向を向いているように見えた。
「……なんか重いオーラの手紙きたけど?」
「“龍脈書院”からです。ギルドの受付に正式に届きまして……」
ルカがすぐ反応した。
「りゅ、龍脈書院!? って、確か……一番すごい魔法機関……!」
「“使命を帯びし者へ”って書いてました!
神殿巡りの依頼……とか……」
「ふぅん」
ナギは、まったく興味なさそうに
その封書を本棚のスキマに差し込んだ。
「えっ!? 今の、えっ!?」
「いやほら、今週も患者さんいっぱいでしょ?
神殿? 巡る時間ないのよ。あと五十肩の人、来るから」
リリナが心配そうに覗き込む。
「で、でも、“王命に等しき使命”とか
書かれてたらどうしますか……?」
「読んでないから知らないし」
「むしろ読まないから平和なのよ」
ハチが横からひとこと。
「使命スルー……やるわね」
「だって、わたし“気導士”よ?
神殿とかより、目の前の気の流れ整えるほうが性に合ってるの」
ルカが神妙な顔でうなずく。
「……ナギさん、かっこいいっす」
「ありがとう。でも、かっこつける暇あったら
ツボ押し練習して?」
「はいっ!」
こうして、異世界における神殿スルー第一号の気導士が誕生した。
まだ誰も知らなかったが、この日を境に──
龍王サイドが「ちょっと様子を見に行こう」
と思い始めたのだった。
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