表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄龍の診療所 ― 世界を診る気導士、龍界で開業中  作者: 転々丸
異世界で鍼灸師やってます

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/15

第6話:龍香灸、爆誕しました(たぶん万能)

ナギさん、この世界の「龍香草」という香気を持つ薬草をベースに、お灸の研究を始めました。


鍼×灸×気、というナギらしい方向性が固まり始める回です。

ゆったり読んでいただけたら嬉しいです。


昼下がりの診療所で、ナギは鍼箱を整理しながら、ふと手を止めた。


「……この世界、電気がないのよね」


ぽつりと呟いて、苦笑する。


かつての世界では、鍼に微弱電流を流して深部の反応を見る──

そんな医療も当たり前に使っていた。


「電極も通電装置もない異世界で、それはさすがに無理か」


けれど、すぐに気持ちを切り替える。


「なら、原点に戻ればいい」


ナギの視線が、窓の外──ギルドの裏庭へ向いた。


そこに自生していた、ふわふわとした淡い青緑色の植物。

最近、どうにも気になっていた草だ。


(……これ)


摘んでみると、指先がほんのり温かい。

乾かすと、質感はもぐさに近い。


試しに、ほんの少量に火をつけた瞬間──


ふわり。


立ち上った煙と同時に、印堂がぽかりと温まった。


「……完全に“気”に効いてる」


思わず、声が漏れる。


煙は柔らかく、刺激がない。

なのに、空間の詰まりをほどくように広がっていく。


「これ……灸にできる」


その夜、ナギは小さな実験を始めた。


◇◇◇


翌日。


小皿の上で、灰になりかけた香草を見つめながら、ナギは満足そうに頷く。


「名付けて──《龍香灸》」


鍼よりも穏やかで、

それでいて、体全体に作用する“気の波”。


(鍼が怖い人にも使えるし、魔力との干渉もほとんどない)


つまり──かなり万能。


「龍香灸、爆誕しました」


誰にともなく宣言した、その直後。


挿絵(By みてみん)


「……で、なんで俺が実験台なんですか」


不満たっぷりの声がした。


診療台にうつ伏せになっているのは、ルカである。


「だって、昨日“肩重い”って言ってたじゃない」


「言いましたけど! 灸って火つけるやつでしょ!?

燃えたりしません!?」


「しないわよ。温かいだけ」


ナギは淡々と準備を進める。


龍香草を米粒ほどに丸め、

ルカの肩甲骨の間──“風池”のあたりにそっと置く。


「合谷もいいけど、今日はこっち」


「風池……名前が強そう……」


「風の気を整えるツボ。あなた、最近しゃべりすぎだから」


「とっちらかってません!」


火をつけると、ふわりと香りが広がった。


「……あ、あったか……」


ルカが急に静かになる。


「ね? 気持ちいいでしょう」


「……はい……肩が……軽い……」


そのまま、目を閉じかけている。


ナギは記録帳を開き、さらりと書き留めた。


『試作1号《龍香灸》

煙が柔らかく、五属性との干渉反応なし。

精神安定作用あり。睡眠障害・肩こり・魔力乱れに応用可能。

※熱系体質は要注意』


「書いてる内容、なんか怖いんですけど!?」


「大丈夫。あなた、火属性じゃないから」


「……それなら……まあ……」


完全に脱力したルカを横目に、

ハチが静かにしっぽを揺らした。


「……香りは悪くない。煙も、許容範囲」


「No.88の嗅覚チェック合格ね」


「評価は仮。……でも、嫌いじゃない」


◇◇◇


その日の午後。


龍香灸は、初めて“患者”にも使われた。

相手は、重い荷運びで肩と腰を痛めた土属性の魔法師。


「鍼と一緒に、これも使いますね」


「それ……火、大丈夫ですか?」


「平気。熱じゃなくて“気”が働くの」


鍼を一本、肩に。

同時に、首の付け根へ龍香灸。


ふわり、と香りが広がる。

しばらくして、男が目を見開いた。


「……体、軽い……!

魔力の流れも、引っかからねぇ……!」


「気が巡った証拠よ」


「これ……回復魔法より効いてる気が……」


「相性が良かったのね」


施術が終わり、男は何度も礼を言って帰っていった。


受付には、すでに次の相談者が待っている。


「ナギさん……今日、もう十人目です」

ルカが順番札を持って、少し不安そうに言った。


「大丈夫?」


「……疲れてない。

こうして、整っていくのを見るのが好きなの」

ナギは微笑んだ。


その背中を見ながら、ルカは胸の奥で、静かに思う。


(もっと……楽に施術できる場所があればいいのに)


(ちゃんとした診療台とか、道具とか……)


その小さな願いが、

やがて“形”になるとは──


この時は、まだ誰も知らなかった。


挿絵(By みてみん)

ご覧頂き、ありがとうございますm(_ _)m

毎週火曜日と金曜日20時に開院しております☆



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ