第13話 気導士ギルド まさかの“龍王直属院”になる
ナギの診療所がついに……『気導士ギルド 龍王直属院』に?
診療所の朝は、今日も薬湯の香りと共に始まる。
「ナギさーん、今日の予約分、全員“肩と腰と不眠”のセットです!」
ルカが元気に叫びながら伝票をかかげた。
「三点セットね。今日も気の滞り祭りだわ」
ナギは朝の煮沸が終わった鍼を確認しながら、
慣れた手つきでお灸の準備に入る。
一方、リリナは受付でなにやら分厚い封筒を睨んでいた。
「……ナギさん、これ……どうしましょう」
「また依頼? 今日は午後いっぱい埋まってるけど」
「いえ……そういうのじゃなくて……」
そう言って差し出された封筒には──
【龍脈書院・神殿連携局】の紋章。
「……龍界、また来たか」
封を切ると、中には金の縁取りがされた厚紙の“書状”と、
書面付きのギルド登録書類が。
ルカが身を乗り出して読む。
「“正式なる神殿連携機関として、気導士ギルドを
龍王直属の治療院として登録します”……って書いてありますよ!」
「気導士ギルド……?」
ナギは眉をひとつあげた。
「え、勝手に名前まで付いてるの?」
「しかも“龍王直属”って、すごくないですか!?」
「直属ってことは……お上がついたってことねぇ」
ハチが窓辺で欠伸しながら言った。
ナギは書状をぺらっとめくる。
「ふーん。“これより、診療は“許可制”とし、
認定ギルド登録の下、活動してよし”……って、なんか、上からだわね」
「え? それ、つまり……?」
「診療を許可されてる代わりに、報告義務が生じるやつ。
ギルドとして認定する代わりに、自由診療じゃなくなるかもの匂いがする」
「えええっ!? じゃあこのままじゃ、
ルカの“本日のラッキーツボ占い”とか、禁止になっちゃいますか!?」
「最重要問題そこ!?」
ナギはしばらく無言で考えた。
そして、封筒に入っていたペンを手に取る。
「……名前は勝手に決めないでください。
あと、診療方針には干渉しないことって付箋つけて返すわ」
「さすがナギさん……!」
「で、ギルド名は?」
「うーん。正式名称なら──」
ナギは紙の隅にさらさらと書き記した。
《気導士ギルド 龍王直属院》
(ただし、完全自由診療制・個人方針により運営)
「向こうが“直属”って言うなら、
こっちも好きに書くわ」
リリナが、苦笑いを浮かべた。
「……通りますかね?」
「通すしかないでしょ。
患者さんが最優先なんだから」
ハチがしっぽをふりながらうなずく。
「直属院なのに居心地いいとか言われそうね。」
ナギはぺたっと書状の返信欄にスタンプを押した。
こうして──
診療所は正式に
《気導士ギルド 龍王直属院》
として登録されることになった。
◇◇◇
その夜。
イグナスがふわりとナギの肩に降り立った。
「ナギさま……まさか、正式に直属院になられるとは」
「だってそっちが勝手に送りつけてきたんじゃない」
「ですが、自由診療のままでとは、前例が……」
「前例は、作るためにあるんじゃない?」
イグナスが目を丸くした。
「……さすがです。龍界の伝令部が倒れておりました」
「どんまい。肩に一本打っといてって伝えて」
その笑顔に、イグナスもつい苦笑する。
「──龍王さまに伝えておきます。
ナギさま、承認のうえ、マイペースに継続中と」
「うん。それで」
こうして、ナギの診療所はついに──
名実ともに“異世界初の気導士ギルド”として、
龍界の歴史に登録されることになった。




