1. 谷底の村
初投稿です…!よろしくお願いします。
1話あたりが短いですが、全7話の短編作品です。
今日だけ2話で、明日から1話ずつ20:00に投稿します。
とある国にドンゾコバレーという村があった。この村は高く険しい山々に囲まれ、太陽の光が差し込まない。村は常に湿った暗闇に覆われ、人々の顔は曇り、笑みは消えていた。
日光は人間が健全な生活を送るためには必要不可欠なもの。そこで、この村では「太陽の塔」が特殊な装置を使って日光浴ができる機械を開発し、人々の生活を支えていた。それがなければ生活がままらないほど、人々は麻薬のように日光を渇望していた。
太陽の塔による日光浴の日は月に一度、一人当たり月1万Cで日光を浴びることができる。そのため日光浴の日には、広場にほぼ全ての村人が集結する。目の下に隈をつくり、陰鬱な雰囲気を纏った人々が行列を成して、今か今かと自分の番を待っていた。
早く日光を浴びたい村人たちは、いつも以上に気が荒く、横暴だ。中には行列に割り込んまで入ろうとする輩までいる。
「女、そこをどけ!」
大柄な男が列に割り込み、前にいた女を突き飛ばした。よくある光景に人々は誰も彼女を助けようとしない。むしろ娯楽を見つけたかのよう卑下た笑みを浮かべ、その状況を楽しんでいる。
「俺が先だ、俺に譲れ。俺はもう日光を浴びないともう死んじまいそうなんだ、譲ってくれるよな?」
「い、いやです!」
日光浴の日に気を荒げた男に反抗するのは、あまり得策ではない。なぜなら、力には敵わないからだ。だからこそ、割り込めると踏んで気の弱そうな女を選んだのだが、大柄の男は出端を挫かれた。だがすぐに怒りが込み上げて来て、その女に平手打ちをかまそうとしたーーその瞬間、誰かがその腕を掴んだ。
「おじさん、やめなよ」
周囲がざわつく。振り返ると、光の塊のように神々しく輝いた青年が男を制止していた。
「レ、レイヴ」
レイヴと呼ばれた青年は、特異な体質なのか他の何かなのか、身体中が明るく発光している。その輝きはドンゾコバレーの人々にとって、癒しであり羨望、それから嫌忌の目を向けられる的だった。
「暴力はだめだよ?」
腕を掴むレイヴの拳が一層強くなった。純粋そうなキラキラと輝く瞳で真っ直ぐ見つめられると、つい顔を背けたくなる。
「くそっ、眩しいんだよテメェは!」
男は悪態をつきながら、後列へと下がっていった。面白いものを見るかのように見物していた人々も、つまらなさそうに列へ戻って行った。レイヴは鼻で笑うと、倒れた女に手を差し出した。
「もう大丈夫ですよ」
しかし、差し出された手はあろうことか彼女によって弾かれた。彼女の表情は醜く歪んでいた。その瞳に浮かぶ色は、嫌悪。レイヴはしばらくの間赤くなった手と、逃げ去っていく彼女の後ろ姿を見つめていた。