可能性。
どんな能力でも、可能性を秘めている。
たった一つだけでも、人より優れた部分があれば、それを伸ばす努力ができるかどうか。
その根気が必要なんだろう。
俺には、人より真面目、それだけだった。能力と言えるのかどうか・・・この時は、好奇心ではなく、真面目さが俺を動かしていた。
古い小屋の壁の隙間から、光が差し込んでいる。
結人は光を感じ、ゆっくりと目を開けた。
「あ〜良く寝た!ゔっ。
背中が痛い。
ベッドで眠りたいな。」
結人は起き上がると真っ直ぐ駅へと向かった。
1番ホームに電車が参ります。
白線の後ろまで下がって下さい。
ゴー!キィー。
駅にアナウンスが流れ、電車が停車する。
「あ〜!久々に帰れるな。」
結人は安堵の表情を浮かべ、電車に揺られている。
「結構遠くまで来てたんだな〜。」
結人が二晩すごした所から、電車は30分ほど走っていた。
窓から見える景色には、ビルや整備された街並みが見える。
プシュー。
電車は駅に止まり、一人の女が乗ってきた。
女は、薄い白い光で覆われている様に見えた。
(何だろ?あの光。
そういえば・・・逃げるのに必死で気にならなかったけど、あのキツネ目の男も黄色い光をまとっていた様な。)
そんな事を考えていると、白い光を放つ女は、結人の正面に座った。
(げっ。今日は平和な1日でありますように。)
そう心で願い、結人は寝たフリをした。
(・・・気になる。)
結人は、薄目を開け女を盗み見た。
女は、素敵な笑みを浮かべ、結人を凝視していた。
(ハァー。勘弁してくれよ。関わりたくね〜。
でも・・・あの子、めちゃくちゃ美人だな〜。
イヤイヤ!関わらない。関わらない。)
結人は寝たフリを続けたが、
視線は終始感じていた。
ようやく家の最寄り駅に電車が到着した。
プシュー。
電車のドアが開くと同時に、結人は立ち上がり、早足で電車を下り改札を出た。
駅から出た所で振り向くと、女は後ろを歩いていた。
(いやいや、俺結構早く歩いてたよな?やっぱりつけられてるのか?)
それからは恐怖で振り向く事ができす、ひたすら早足で自宅へ向う。
(あの角を曲がれば家に着く!
いないでくれよっ!)
結人は勇気を振り絞り、振り向いた。
「ハァー。いない。助かった。」
更に足を早め、玄関のドアを開け急いでカギをしめた。
「ハァー。勘弁してくれよ・・・疲れた。」
部屋に入ると、空気がこもって居心地が悪い。
「2日帰れなかったからな。換気しよ。」
ガラガラ。
結人は窓を開けた。
「・・・。」
ガラガラ。
そして、開けた窓をすぐに閉めた。
(イヤイヤ・・・めっちゃ目が合ったし!)
いなくなったと思った女は、結人の住む2階の窓を、不敵な笑みで見つめていた。
「終わった・・・家バレしたな。」
結人は絶望した。
「ストーカーされたらこんな気持ちなのかな・・・いや!物も申してやる!」
結人は開き直り、玄関から外に出た。
「・・・いない。ふざけやがって!」
そう叫ぶと、イライラした様子て家に戻った。
久しぶりのシャワー。
ベッド。
ベタベタする体は綺麗になり、
寝心地の良いベッドに横になっても、
リラックスできない。
「クソー!あの女のせいだ!
やっとベッドで寝られるのに!」
カチカチカチカチ。
時計の音さえも不快に感じる。
「あー!寝れない!
・・・・・ステータス。」
結人は思い出した様にステータスを開いてみた。
「あれっ?・・・MPが増えてる。」
他の部分は変わらないが、МPだけは増えていた。
「18か。元々6で、4回使った。スリープ一回が3使用だから・・・。
使った分だけ増えるって事か?」
結人はステータスの変化に嬉しそうにしている。
「これ、ゲームみたいで面白いな!
よし!18使い切るか!」
結人は起き上がり、辺りを見回して眠らせられそうな物を探した。
「さっき寝る邪魔をしたあいつだ!」
結人は時計を見つめ、唱えた。
「スリープ。」
カチカチ・・・
「1、2、3、4、5」
カチカチカチカチ。
「眠った!時計が眠ったぞ!」
結人は嬉しそうに飛び跳ねる。
「眠らせられるのは、人間だけじゃないって事だな。」
「・・・・だから何?」
ケラケラケラケラ〜。
憎たらしく笑う奴らの姿が脳裏をよぎる。
「5秒が短いんだよな。
もう少し長いこと眠らせられたら、逃げるのには使える。何か方法はないか。」
「・・・そんな上手くはいかないと思うが。
スリープ。スリープ。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10!
お〜!できた!増しがけ成功だ!」
時計は、10秒止まった。
スリープを二度唱えると、眠らせる時間が増える事に結人は感動した。
「ふっふっふ。」
結人は不敵な笑みを浮かべ、
薄気味悪く笑う。
「次は、次はー!
ヤバい!楽しいぞこれっ!」
結人は喜びも束の間、問題に気付いた。
「・・・じゃあ、30秒眠らせるには、6回となえるのか?
非効率この上ないな。
・・・いやっ!小学生でも分かる!
足し算じゃなくて、かけ算だ!」
結人は期待に胸を膨らませ、唱えた。
「スリープカケル3」
カチカチ・・・
「1、2、3・・・・・15!
できた!できたぞ!これでМP分眠らせられる!すごい!すごいぞ!」
結人は、喜びもつかの間だった。
МPを使い切り、極度の眠気に襲われ、
寝落ちした。