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不信感。

人は、世界を破壊できる力を手にした時、何を思い、何をするのか。

人によって違うのかも知れない。

でも、度合いは違えど、どこかで手を止めると思う。

人は一人では生きられないから。

俺は、手を止めるのが人より少し早かった・・・それとも。



「とりあえず、野宿せずに済んで良かったとしよう。」

結人は辺りを見回した。


「なんだか疲れたな。あのベンチで少し休んでから帰ろ。コーヒーでも飲むか。」

結人は、自動販売機てコーヒーを買い、

ベンチに座った。


カチッ、カチッ。

「ふぅ〜。コーヒーを片手にタバコで一服。至福の一時だな〜。」

結人はしばらくベンチでだらけていたが、ふと姿勢を正した。

「そういえば・・・ステータスって他の人から見えないよな?って!ステータス出てるし!あいつら適当すぎだろ。もはやオープンもいらなかったじゃねーか。」

結人はあきれた表情で頭を抱えた。


結人の目の前に出たステータスに通りすぎる人達は見向きもしない。


「どうやらステータスは周りの人からは見えない様だな。」

結人は一安心だ、という表情でステータスに目を向ける。


「何々?ステータス。

スリープ レベル1。

МP6。

備考 スリープはМP3使用で、5秒間眠らせる事ができる。」


「えっ?・・・・・・それだけ?」


結人は、ステータスを触ったり、念じたり、口に出したりして、他のページに移動できないか色々と試してみた。


「ダメだ。・・・・たったこれだけ?」


結人の脳裏には、ケラケラケラ〜と憎たらしく笑うあいつらの顔が浮かんでいた。


「何が世界を破壊する力だ!

あいつらー!バカにしやがって!

・・・きっと今、宇宙から俺を見て爆笑してんだろうな・・・・ハァー。」


結人は、一度でも奴らを信じた自分を恥じた。


「とは言うものの・・・ちょっと使ってみたいな。」


「・・・使い方・・・分からねー!」


一人でブツブツと言っている結人を通りすぎる人々は不信な目でみていた。


(しまった。めっちゃ見られてるな。

口に出さない様に気を付けないとな。

ステータスの時の事を考えると、スリープって口に出すと使えそうだよな。)


「なぁ、金貸してくんね〜?」

結人が考え事をしていると、向かいのベンチに座る気の弱そうな学生に、柄の悪そうな男が絡んでいた。


「い、いや、僕お金ないです。」


「イヤイヤ、ちょっとくらいあるんだろ?いいから貸せよ!」

抵抗され、男はイライラしているようだ。


「か、返してくれるんですか?」

気の弱そうな学生は、食らいついている。


「ハァー。嫌なものを見てしまった。

・・・・あっ!あの男で試してみるか。」

結人はニヤニヤとしている。

男を見ながら小さく唱えた。

「スリープ。」


バタン。

柄の悪そうな男は、気を失う様にベンチに倒れた。


「えっ?」

驚きながらも、気の弱そうな学生はその隙に走り出した。


(1、2、3、4、5。)

結人は心の中でカウントしてみた。


「あ、あれ?俺、何だ?」

柄の悪そうな男は何が起こったのか理解できていない様だ。

「あいつは?」

辺りを見回し、男は気の弱そうな学生を探す。

「あっ!おぃ!待て!!」

男は学生を追いかけようと、立ち上がる。


「まだ追いつきそうだな。スリープ。」

結人は、もう一度男を眠らせた。


5秒後、男は目を覚ました。

「俺、どうしちまったんだ?

あ〜・・・なんか、疲れたな。

今日は帰ろ。」

男は、足元がおぼつかない様子で、トボトボと歩いて行った。


「おー!すごいな。

本当に眠らせられた!

しかも、気の弱そうな学生を救ってしまった。世界の破壊どころか、いいことしちゃってるし。

と言うか、眠らせられたから何なんだよ!全く世界の破壊には繋がらないだろ・・・ハァー。なんかしんどいな。

МP使い切ると疲れがくるのか。

ちょっと眠るか。」

結人はそのままベンチに横になり、眠りについた。


カァカァカァー。

「ゔ、うん。」

結人は、夢見心地の中、微かに聞こえるカラスの声に目を開いた。


バサッ。

結人は起き上がり、驚愕した。


辺りは夕日に照らされ、オレンジ色で塗られた様に美しい景色に変わっていた。

結人は、夕日に照らされた田園風景に見とれてしまった。

夕日が沈み、辺りが暗くなるまで。

「あ〜。綺麗な景色だったな。

仕事してた時はこんな事する余裕無かっもんな。幸せってこういう事なんだろうな。」


「ハァ〜。帰るか。」

結人は立ち上がり、人気のない駅へと歩き、時刻表に目を向けた。


「・・・。」


時刻表に貼り付く様に、もう一度、よーく見た。


「・・・。」


肩を落とし、膝から崩れ落ちる。


「土日は終電6時って・・・あー!」

結人は一人叫んでいた。


「今日こそ野宿確定だな。」

グ〜。

「腹減ったな。昨日の夕方から何も食べてないしな。」


結人はあきらめてベンチに戻り腰を下ろした。


「あーぁ。俺・・・何してんだろ。」

結人は空を見上げた。


「おい!お前!」

結人と満天の星空を遮る様に、

キツネの様な容姿の男が顔をのぞかせた。


「わぁ!」

結人は驚き、男と距離を取る。

「な、何だよ!」


「昨日、ここに宇宙人の奴らが来ていた。お前、奴らの使徒か?」


「はい?」

結人は男の言う事の意味が分からなかった。


「とぼけるな!我らの縄張りで何をするつもりだ!」


「何?縄張り?意味わかんね〜よ!

じゃっ。」

結人は面倒に巻き込まれるのはごめんだと思い、その場を立ち去ろうとする。


「待て!」

男は結人の腕をつかんだ。


「ハァー。俺は今、お前みたいなやつにかまってやれるほど余裕がないんだよ!」

結人は男の腕を振りほどき、走り出した。


男は後ろを追いかけてきている。

「待て!止まれ!俺と戦え!」


「ハァハァハァ。意味分かんねーよ!」

男はあきらめる気配が無いのが分かると、走りながら唱えた。

「す、スリープ。」


バタン。

男は地面に倒れこんだ。


「ハァハァハァ。5秒って短すぎ!」

結人は5秒後、もう一度唱える。

「スリープ。」

男が眠っている隙に、物置き小屋の様な所へ逃げ込み、息を潜めた。


男は辺りをウロウロしている。

「ちくしょう!逃げられたー!」

悔しそうにしながら、男はトボトボと歩いてどこかへ行ってしまった。


「ハァ。昨日から散々だな。」

結人は物置小屋で眠る事にした。


物置小屋の天井を眺めながら、結人は考えた。


(この能力、何なんだよ。

何のために?

そういえば、あいつ、使徒とかなんとか言ってたな。戦えって?

あの宇宙人、大事な事何も言わずに消えやがって。ムカつくぜ。)


グーグーグー。

結人は知らない間に、眠っていた。


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