輝夜と華夜
「華夜、おはよう ママよ」
「ママ?…うん、おはよう」
薬を入れられて記憶を失った輝夜は満月帆名嘉の娘、華夜
として過ごすことになった
「華夜、朝ご飯できてるから食べに行こう?」
華夜は「コクッ」とうなずくだけだった
らせん階段を下りキッチンへと入りカウンターに座った時、華夜が
「ママ、変な夢を見たの」と言った
帆名嘉は「どんな夢?」と尋ねた 華夜は夢について話し始めた
「私は輝夜って呼ばれてたの」そんな出だしに帆名嘉は
ドキッとした しかし華夜こと輝夜の夢の話は続いていく
「先生って思ってた人が私のお母さんで睡眠薬を飲まされた夢…変でしょ」
華夜はそう言って微笑した 帆名嘉も華夜に続くように微笑した
「華夜、ご飯食べたらおばあちゃんの家で留守番しててくれる?」
帆名嘉はボスにこのことを報告しに行きたいのだ
「ママ、お家で留守番しててもいい?」「ダメよ、危ないでしょ」
帆名嘉は華夜の言葉に瞬発的に釘を刺した
華夜が一人で家に居て記憶を取り戻したら都合が悪い 自分の首が飛びかねない
おばあちゃんと言う人は帆名嘉の仲間でボスの手下
「はぁい」華夜は素直に返事をした「ありがとう」帆名嘉は
一瞬ほっとした「華夜、そろそろ行く準備して」華夜にそういうと
電話をしはじめた
「華夜?準備できた?」
そんな帆名嘉の声が、らせん階段から家じゅうに響いた
「はぁーい」華夜は不機嫌そうに返事をし階段を下りてきた
「行こうか?」そう言い玄関を出て車に乗り込んだ
~到着~
(ピンポーン)チャイムを鳴らすと誰かが歩いてくる音がした
ガラガラと音を鳴らして華夜のおばあちゃんが出てきた
「あらあら、帆名嘉おかえり 華夜ちゃんいらっしゃいお部屋でお菓子でも食べて
お留守番してましょうね」おばあちゃんは優しい口調で二人に話した
「わかった ママいってらっしゃい」
華夜は素直におばあちゃんの家に入っていった
すると帆名嘉の優しげな|顔が一瞬にして明るさが消えた
おばあちゃんと慕うのは帆名嘉の本当の母でもなければ華夜の祖母でもない
私達家族とは一切血のつながりがない…
(バン)帆名嘉は大きな音を立てて赤いランボルギーニに乗り込んだ
小一時間ほど車を走らせただろうか
立派な家が立ち並んでいた
帆名嘉がその内の一軒に入っていくのが見える
家政婦さんに案内された部屋は薄暗くて気味悪い
「待ってたよ、49894」
『49894』とは識別番号、マイナンバーだ
49894は満月帆名嘉のナンバー
「で どうしたんだい 急に報告とは」
先ほどから話しているのがこの星の支配者『アペンテスト』だ
「はい 試験台となっている『月野輝夜』なのですが」
「それがどうした」 少し苛立ちがあるのか せかし気味に話を聞きたがる
「それが… 記憶の消す薬を投薬し『華夜』として生活するのには問題ない
のですが輝夜としての記憶が『夢』としてあるのです 華夜自身が
「変な夢を見た」と話してきたのが無くしたはずの記憶でした」
「……………」「そうか 報告ご苦労 49894」
「では失礼いたします」 そういい帆名嘉は部屋を去り シェルフと呼ばれる
ランクの上の方しか立ち入りができない部屋に案内された
帆名嘉は組織を内側から操作する『サジ』と呼ばれる仕事をしている
「サジ様よ!」「ホントだわ!サジ様よ」「サジ様だ!」
アペンテストの使い捨ての駒 一般職員からしてみれば『サジ』
それは天職そのもの
しかしサジはアペンテストに一瞬でも刃向ったら首が飛びかねない
サジになる前にチップを埋め込まれているから…………
~家~
「お義母さん!やめてください!首が飛びますよ!」
「だって!輝夜が!輝夜の首も飛びかねないじゃいのよ!」
「そうですけど………」
「だから祖母の私が、 私の弟から孫を守るのよ!」