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三十四話 彼の話

簡単なあらすじ『ログマは転生者について語った』




「博士の言った、『転生者の特徴を利用する』という方法……正直、そんなもんで上手くいくとはこれっぽっちも思ってなかった。


だが、俺に残された道はもうそれしかなかったし。

それに博士も協力してくれるってんで、俺は舵を切って今度は転生者について調べる事にしたんだ。


けど、な……それはただでさえ眉唾物の話であるのに加えて、肝心の転生者が現れたのも、当時だと『ごく最近』と言えるくらいの事だったから……


ソイツらの居場所は愚か資料すらも、何処を探しても見つからなかった。


だから俺は当然、それを博士に軽い文句と共に伝えたんだが。


そしたらな……アイツ。


『なら、資料は王宮ここにあるものを拝借するしかないだろうね』と、俺にそう言ったんだ。


聞けば、国のお偉いさん方は博士達研究屋に色々と依頼したり、各地に兵士、騎士達を派遣したりしてな。


極秘に調査をしていたから、転生者について書かれた資料を持っていたそうなんだ。まあ、これはさっきお嬢ちゃんにも話したがな。


ちなみに、その理由は『兵力の増強』、『転生者達アイツらの『ちーと』を利用して不死の肉体を得るため』とかだと、博士は睨んでいるらしい。


……ん?俺か?

俺は、後者の理由が一番デカいと思ってるぜ。


もっと言えば調査を極秘に進めていたのも、恐らくはその情報や利益を独占したいと上の奴等が考えたのが原因だろうともな。


どうせ人間、突き詰めた先は永遠の命だの何だのと、そんな下らない事ばかり…………まあ、良い。


で、その話を聞いた俺はな……博士にキレちまったんだ。


ああ、今度こそは文句どころじゃあない。

本気も本気で俺はアイツを怒鳴りつけたさ。


何せ、ただでさえ俺には時間が無いってのに。

アイツはそんな、最も近い場所にあったはずの資料の存在を隠してやがったんだからな。


ただ……博士は俺が憎くてそうしたわけじゃあ無かった。それにはちゃんとした理由があったんだ。


その資料は前にも言った通り、極秘に行われていた調査によって得られたものだ……当然、存在自体が国の重要機密となる……


だから、それは王宮の中でも最も警備の厳重な。

中央保管庫でこれまた厳重に管理されていたんだ。


……そうだ。それは最終手段だったんだ。

だから博士は最後まで俺に隠していたんだよ。


だってよ、そんなものを狙った人間が見つかればどうなるか…………なあ、お嬢ちゃん。


これ以上は、言わなくても分かるだろう?」



「資料は、王宮の中央保管庫にある……


それを聞いた俺がどうするか……まだ知り合ったばかりの博士でも、当時の俺の様子を見れば一目で分かったんだろうな。


『バレたら首では済まないだろうが。

ログマ、君はそれでもやるつもりなのかい……?』


俺に全てを話してくれた博士は、随分と真面目な顔で最後にそう尋ねてきた。


……だが。


全部承知の上で、俺は即答したよ。

勿論やるってな。


どうせあの人に拾われてなきゃ、とっくの昔に死んでたかもしれねえんだ。


それが今になったとしても、あの人に恩返しが出来るのならそれだけで満足だったのさ……


例え満足それが、俺の自己満足だったとしてもだ……とにかく。


そうして俺は博士と組んで、アイツと共に転生者について書かれた資料を手に入れる事に決めた。


ちなみに実行役は俺で、博士はそれを指示する役だ。


アイツは王宮内部については俺よりも詳しかったし。

俺も俺で、その頃丁度覚えた毒魔法で保管庫の錠くらいなら簡単に溶かす事が出来たからな。


それが一番、お互いにとって適任だったんだよ。


……ん?その時の博士か?


いや、ビビってはいなかったな。

と言うか、いざやるとなったらむしろ積極的だったくらいだ。


ま、自分から指示役を買って出たくらいだからな…………もしかすると。


アイツ本当は、その資料が目的で俺に近付いたのかもな……まあ、アイツも元が研究屋もとだからな。


それに、奴の話に乗った俺も俺だ。それが事実だったとしても文句を言うつもりは無いが。


……まあ良い、続けるぜ。


それから数日後だ。

俺達が遂に、それを実行に移したのは。


計画は順調に進み、博士から貰った地図のお陰で迷う事無く保管庫に辿り着いた俺は。


別行動していた博士が警備の人間の気を引いている隙に、錠を壊してその中に入り込んだ。


そして資料を手に入れた俺は、すぐに保管庫を抜け出したんだが……丁度、交代でいなくなるはずの警備が目の前にいた。


捕まった博士と共に、しかも大勢がな。


これは後で知ったんだが、どうやら錠を壊す時に使った毒魔法がマズかったらしい。


その刺激臭のせいで、異変に気付いた警備の人間が応援を呼んだんだとよ……全く、情け無い話だ。今思い出しても笑えてくるぜ。


何しろ手前てめえの魔法に、そんな欠陥があるって事すらも頭から抜け落ちてたんだからな……本当にどうかしてたぜ、あの時の俺は……


……その後、俺はあっさり御縄になって、博士と二人で牢獄行きさ。


別に、死ぬのは怖くなかった。


だが『もう、あの人に何もしてやれない』。


そう思ったらどうにも辛くてな、獄中では無気力で、何も出来なくて、飯もロクに喉を通らなかった……


もういっその事、さっさと死刑にしてくれよ。

そんな事ばかり思っていたな。


……だが、そうはならなかった。


何故だか俺達は数日後には釈放されて、そのまま解雇宣告をされた……ただそれだけだ。


そう、職を失ったってだけで、命まで取られる事は無かったんだ。


正直、今でも訳が分からねえよ。

俺達がやったのは重罪も重罪、その先には極刑しか待っていないはずなんだがな……


でも、そんな事を考えてるような余裕なんて、当時の俺には無かった。


師匠が、師匠が。


師匠が、死んだっていうのを聞いたから……


…………これで、俺の話は終わりだ」

いいね、感想等受け付けておりますので頂けたらとても嬉しいです、もし気に入ったら…で全然構いませんので(´ー`)



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