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三十三話 この人の話 2

簡単なあらすじ『ログマの話は続く』




「だが、すぐにそうもいかなくなった。


俺はまた前みたいに、師匠の事を考えてばかりいるような日々に戻されちまったんだ。


……師匠が、重い病に罹った」



「お嬢ちゃんも知ってるだろうが、今でこそその病は人が死ぬようなものじゃあなくなった……だが。


あの頃不治の病と呼ばれていたそれは、当時の人間にとっては死の宣告と同義だった……


だから、師匠の罹患りかんを知った俺はすぐに治療法を探し始めたんだ。


そうして普段修行をしていた時間も、眠る時間も。

仕事以外の人生全てを、あの人を治すため捧げた。


国の図書館。病院。町医者。薬屋。教会……数え切れない程の場所に足を運んだ。


時には違法とされていた他国の施設や、こっそりと闇医者の所にまで出向いた事もあった。


俺が毒魔法を覚えたのもこの頃だ……別に何も、師匠に直接それを使おうだなんてつもりは無かったさ。


回復魔法は僧侶共の専売特許だったし、そもそもアイツらにも師匠の治療は出来ないみたいだったからな。


だったら俺は、こいつを治療に使えないかと、色々とその可能性を試してたんだ。


ほら、『毒にも何かしらの病気に対する有効成分が〜』……とかって話もあるだろう?


……だがそれでも、治療方法なんざこれっぽっちも見つからなかった。


流石、不治の病って言われてただけはあるぜ……それで、八方塞がりの状態になった俺は。


正直、もうどうしたら良いのかも分からなくなっちまってな……焦るばかりで何も出来ない日々を、心底うんざりしながら送っていたんだ。


そんな時だった。


俺が色々とその病について調べ回ってる……っていう話を何処からか嗅ぎつけてな。妙な奴が俺の元へとやって来たんだ。


ソイツは国家研究員で、自分で自分の事を博士だと言った。


そう、あのタイヨー博士だ。

アイツとはこの時に知り合ったんだぜ。


博士は挨拶もそこそこに、俺にその訳を聞いてきた。


だが、当時はまだ知り合ったばかりだったし、あの頃の俺はアイツの事を全く信用してはいなかったんだが……


でも、俺が信用しようがしまいが、相手は正真正銘その道のプロである研究屋には違い無いんだ。


そんな奴ならばもしかしたら、何か良い治療法を探し出してくれるんじゃないかって……


そう考えた俺は、藁にもすがる想いでアイツに協力を頼み。師匠の事。病気の事。俺が今まで調べた事全てを打ち明けた。


そしたら博士は少し黙った後にな。

こんな事を言い始めたんだ。


『専門家達も匙を投げたのならば、最後の手段に頼るしか無いだろうね……国に仕える騎士だ。君にも心当たりはあるだろう?


ほら、〝転生者〟の事だよ。


アレにあるって言う、〝あの性質〟をどうにか利用出来れば、或いは……』



「…………転生者」


自身の中に生じた疑問のせいか。

知らず知らずのうちにそう呟いていた私は。


それを聞いてか、少しばかり顔を近付けてきた彼を見。思い切ってある事を尋ねてみた。


「……あの、さ」


「ん?」


転生者それって確か、あのくらいの頃他国に突如として現れたっていう、この世界とは異なる場所から来た人間の事よね?


でも……あれってただの噂話じゃないの?」


すると彼は顎に手を当て、数瞬黙った後。


ぽつりぽつりと少しずつ、脳裏から答えを掘り出していくかのようにしてこう話し始めた。


「まあ、く言う俺も実物は見た事が無いからな。確かな事は言えない。


だが、そんな噂が立った後も、近隣諸国で確認されたって言う報告がちょこちょことあったらしくてな。


しかもそうして見つかった転生者達はどれも、転生者そいつら特有だっていう、特徴なんかが殆ど一致していたそうなんだ。


ただ、だからと言って、転生者共がよく分からん存在って事には変わりが無いし。


それに、特徴が一致していたとは言え。

それがその存在を証明する、確固たる証拠になるかと言われればそんな事は全く無いんだが…………


まあ、実在はしてる『可能性が高い』、とは言えると思うぜ。


事実、この国のお偉いさん方も。

ソイツらを見つけるため血眼になって、極秘で調査をしていたくらいだしな……」


「え……く、国が調査を?

そ、そうなのね、知らなかったわ。


それで、話を戻すけど。

その転生者がどうしたって言うの?


それと病気の治療には、何の関係も無いような気がするんだけど?」


「いや、それがそうでもないんだ。


その理由とか、理屈とかまでは流石に分からないんだが……転生者の特徴の一つにな。


『超人的な肉体。もしくは再生能力、耐久力等を有している』ってのがあるんだよ。


ちなみに、転生者やつら自身は、その能力を『ちーと』とか何とかって呼んでるらしいんだけどな……で、だ。


博士はな、それに目を付けたんだよ。


アイツはその能力を研究、そして分析すれば。

それを治療にも使えるんじゃないかと考えたんだ……」



そうしてまた、彼は視線をやや下げ。


私では無く追憶を見つめ返すと共に、語りを再開するのだった。

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