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二十三話 笑う男

簡単なあらすじ『作戦を練る二人、声を上げるカイリ』




議論を重ね、打倒イフリャに向けた作戦を練るログマとキジカ。


しかしそれもまた行き詰まり、二人の間には沈黙が流れる……と、その時だった。


「だったらその役目、私が引き受けます!」


今まで静観を続けていたはずの、カイリが声を上げたのは。



イフリャの気を逸らす役目を自身が引き受けると言ったカイリ。


それを聞いた二人は暫くの間唖然としていたが、思い直すとすぐに反対の意を示した。


「ダメよ!危険過ぎるわ!」


「だな……

ま、俺としちゃあそうしてくれれば助かるんだが。


でも小娘、お前それがどう言う事か分かって言ってんのか?アイツはお前ごと俺達を消すつもりなんだぜ?


相手が子供だろうが何だろうが、容赦はしないはずだ」


「分かってます!

でも……私はカイヤを治療してやるまでは、死ぬわけにはいかないんです!」


しかし、カイリは頑なであった。


そう、少女は本気なのだ……そして。


「それに……せめて自分に出来る事くらいは、『自分の力』でやりたいんです!!」


続けてそう言う彼女の言葉に心打たれ。


ログマは遂に、それを認めた。


「ほう、俺の言葉、覚えてやがったか。


気に入ったぜ小娘……いや、カイリ。

じゃあ頼んだぞ」


「はい!」


「ちょっとアンタ!いくらこの子がやる気だからって……」


しかし、キジカは尚も反対を続ける……が。


「まあまあお嬢ちゃん。

コイツは本気だ、最悪の場合は俺が何とかしてやるから、ここは見守るとしようぜ?


せっかくアイツが自分の力でどうにかしようって立ち上がったんだ。それを邪魔をするのは野暮ってもんさ」


反対それを遮り、押し止めようとする性悪と。

最早実行する気満々のカイリという、二人の姿を見。


「はぁ、全くアンタって奴は……

まあ良いわ。私も自分の事に集中しないと……」


とうとう、仕方無しにではあるが首を縦に振るのだった。



それから少しして、イフリャに動きがあった。


「さて、身体も元に戻った事だし……それじゃあ早速。

さっきのお礼といきましょうか」


そう、遂に反撃を始めようかとしていたのだ。


そうして彼女は起き上がり、脚を手を、頭を軽く振り、手指の調子を確かめ、回復を終えた事を知ると。


直後、ログマ達が身を隠しているであろう骸へと自身の持つ大きな三叉槍を向けた。


すると、その先端には光が集まり始める……


どうやら、まずは魔法によって竜の亡骸(障害物)を排除するつもりのようだ。


「いきますわよ……大槍より放たれし閃光(スピア・ザ・ルーチェ)!!


…………あら?」


しかし、それが放たれる直前。

彼女の前に躍り出る一つの影があった。


「うぉおおお!!喰らえ!!」


それはカイリだった。


短剣を抜いた少女は脇目も振らず、イフリャへと無謀にも一直線に駆けてゆく。


そして、そんなカイリを前にしたイフリャは。


一度魔力を集める事を中断し、自身に迫り来るそれを大槍で防ぎ止めた。


「へえ、少し驚いてしまいましたわ。

まさかあの三人の中で、最も非力そうな方が出て来るとは夢にも思いませんでしたもの。


それとも小さなお花さん。

もしかして、貴女が一番強いのかしら?」


「うわっ!?」


だが、三叉の大槍に短剣がそう長く抗えるはずも無く。


鍔迫り合いに敗れたカイリは、そのまま力を込めて振るわれたイフリャの大槍それによって弾き飛ばされてしまった。


「くっ!!…………うぐっ!!」


踏ん張るもその勢い止まらず、壁に強く叩き付けられてしまうカイリ。


命こそ奪われてはいないがもう、少女は動く事さえも出来ないと見える。


「……って、そんなはずはありませんわよね。

魔法を使う必要性すら感じませんでしたもの……ふふ」


しかし、それでもイフリャは。

蹲る少女へと向けて淡々と歩を進め、粛々と迫り。


残酷にも、それで今度こそ終わりにするつもりでいるのだろう……かと思いきや。


彼女はカイリの目と鼻の先にまでその大槍の先端を近付けるとそこで止め、静かに、だが確かに響くその声でこう言った。


「キジカ王女、ロク・ログマ。

お二人共、聞こえているんでしょう?


この子の命は今、風前の灯も同然ですわ。

吹き消されたくなければ、大人しく出て来ては頂けないかしら?」


……敵として見れば非道この上ないが、策士としては一級、と言った所だろうか。


イフリャが止めを刺さずにいたのは少女を人質として使い、残りの二人を誘き出すためであったようだ。


「ああそれと、お二人共。

もし素直に出て来て頂けるのであれば、この子の隣に立って頂けますこと?


そしたら、ここから私の魔法でまとめて灰にして差し上げますわ。


私の装備はどれも高価ですから、返り血なんかで汚したくないんですの。だからそうしてもらえるととても助かりますわ」


それで勝利を確信したのか、人道を外した大槍使いは饒舌を振るいそう続ける。


すると、それから少しして。


亡骸の裏からは両手を上げ、降伏である事をその身で示したキジカとログマが姿を現すのだった。



人質を使い、二人を誘き出すばかりか白旗をも上げさせる事に成功したイフリャは。


苦虫を噛み潰したような表情の王女と元騎士の顔を一度じっと見つめ、その後満足げににたりと笑った。


それから、彼女は投降したにも関わらずその場からなかなか動こうとしない二人へと向けて、少女の側に行くよう再び指示を飛ばす……


「お二人共、そんな所で何をじっとしてらっしゃるの?私はこの子の隣に立てと先程」


……と、その時。


ロク・ログマがそれを遮り言った。


「分かってるって。

ちゃんとお望み通りにしてやるから少し落ち着けよ」


気付けばその男の口元は、いつの間にやら微笑の形に歪んで……いるように見えた。


「……」


それを目にしたイフリャは妙な胸騒ぎを覚え、沈黙に身を沈める。


するとその代わりをするかのように、またログマが口を開いた。


「ただし、先に謝罪させてくれ。

アンタの装備、汚れるどころじゃ済まねえだろうからな」




今度ははっきりとイフリャにも分かった。


この男は間違い無く笑っていた。


いいね、感想等受け付けておりますので頂けたらとても嬉しいです、もし気に入ったら…で全然構いませんので(´ー`)

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