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十二話 愚行

簡単なあらすじ『血迷ったログマ、真正面からラネディに挑む』




騒つき始めた酒場の中心にて。

真正面からラネディと接敵し、それに挑まんとするログマ。


「……は?」


何故か自信に満ちたその表情とは裏腹に、キジカは唖然とした顔でそう呟く事しか出来なかった。


(予想してただの何だとの言っておいて、何をするかと思えば……まさかコイツ、正面突破するつもりなの?


……やっぱり、ただ性格が悪いだけの馬鹿なんじゃないかしら?


コイツの意地の悪さは、てっきり知能の高さから来るものだと思っていたんだけれど……?


というか、私の方をついでにするな!!)


そんな彼女の脳内には、ログマへの罵倒を主として様々な思考ものが浮かび上がる。


そして、最終的には怒りと呆れが混ざり合い。

キジカは今度こそ、どうする事も出来ずに固まってしまった。


「なっ……!

お、お前達!!」


だが、その間にもラネディは当然ながら護衛を呼び寄せ。


「そこのお前!杖を置け!」

「今ならまだ憲兵共に突き出すだけで勘弁してやるぞ!」


これもまた当然ながら。

護衛達は剣を手に取り、背後から二人に迫り。


それを見た客の群れは騒めきを恐慌と変え。


ある者は逃げ出し。

またある者はそれを喧嘩と勘違いしたのか野次を飛ばすと言う……


恐らく、想像し得るに最悪であろう未来へと辿り着いてしまった。


「ねえ、アンタ本当に何考えてるのよ……?

どうしたらこうなるの……?


お願いだから、教えて頂戴……」



「まあまあ、見てなって」


力無く自身の行動を非難するキジカを尻目に、ログマは随分と余裕げな様子でそう答えた。


とは言え、例え本当にこの男が余裕なのだとしても。

この状況を切り抜ける事など不可能であろう。


自らのせいで陥る事となった。

愚かで悲惨な、この状況からなど……


キジカはもう、何も言わなかった。


「置かぬと言うのなら……覚悟してもらおうか!」


だが、それで事が収まるはずも無く。

護衛達は二人の元にじりじりと距離を詰めて来る。


まあ、そうなる運命ことなどとうに分かっていたが。それでも、キジカはこう言わずにはいられなかった。


「はぁ、結局こうなってしまうのね……私達、もうお終いよ」


「そんな顔するなよお嬢ちゃん。

これが狙いだったんだからよ」


次の瞬間、護衛達は一斉に切り掛かってきた。


キジカはログマの寄越した返答の意味を理解する間も無く、固く目を閉じる……



最早ここまで、かと思われたその時。


「きゃっ!!」


突然にもキジカの身体が宙に浮かび上がった。


ログマが護衛達の剣を躱すため、彼女を抱え高く跳躍して見せたのだ。


「やれやれ、側近でこの程度かよ。

どうやら女遊びにかまけて、その辺はお座なりになってるようだな」


そうして護衛達の背後に回り込むと、ログマは。


「ま、お陰で事が上手く運ぶってもんだ」


笑みを浮かべた。


相も変わらず、その顔にはゆとりがある。

とは言え、ここからどうするのだろう?


……そう考えていたキジカは、再び混乱の渦に落とされる。


何故ならば。

キジカを床に降ろした後、ここから次の行動に移るとばかり思っていたログマが。


そんな様子など一切無いままに、側にあった手の付けられていない料理を勝手に食べ始めたからだ。


「な、何やってるのよ!?

早く反撃するなり逃げるなりしないと……!!」


「もう終わったよ。

これで俺達の勝ちは決まった」


焦るキジカの問い掛けに、料理を頬張りながらログマはそう答える。


だが勿論そんな事は無く。


当然ながら何もされていないラネディ、護衛達は共にぴんぴんとしており。


それどころか攻撃が空振りに終わった護衛達は少し苛立った様子で、すぐさま体勢を立て直し、こちらへと向けて再び切り掛かろうとしているのが見えた。


「いやいやいやいやいや!

アンタ何言ってるの!?


こんなの、誰がどう見ても……」


私達の負けに決まっているじゃない。


そう続くはずだった、キジカの言葉は途切れた。



それは、護衛達の様子が何やらおかしいように思えたからだ。


……そしてすぐに、キジカは確信する。

彼等が何処か普通では無いと意見した直感それが、間違いでは無かったと言う事を。


「うっ……!」

「う……あ……」


直後、護衛達は突然身体を激しく震わせると。

数秒後には構えもせず、ただ立ち尽くすばかりとなってしまったのだ。


「ど、どうしたんだお前達!?」


当然キジカにとってそれは驚くべき、予想外の出来事であったが。


ラネディもまたキジカと同系らしき感情を抱いているようで。彼は目を丸くして叫び、明らかに動揺していた。


そうして現れた、混沌とも言えるような状況……


その中で笑っているのは。


「へへ、始まったな……」


とうとう、ロク・ログマただ一人となった。


…………いや。

よくよく考えてみれば、最初からそうであったような気もする。



しかし、驚いてばかりもいられない。

またすぐに、吃驚そうしなければならないのだから。


そして、驚くべき(その)瞬間が再び訪れた。


「「う……うわぁああああ!!」」


沈黙し、立ち尽くすばかりだった護衛達が。

いきなり叫び出したかと思うと、今度は無茶苦茶に暴れ始めたのだ。


「こ、今度は何なの……?」


それを見、慌てて後退するキジカ。


幻覚毒ポイズン・エスコバール


簡単に言えば相手に幻覚を見せる毒魔法だ。

その魔力を吸い込むとほぼ同時に発動する。


恐らく、アイツらにとって今ここは『魔物の巣窟』にでも見えてるんだろうぜ」


すると、彼女の背後からそのような声が聞こえた。


ログマだ。

いつの間にやら、自分一人だけ安全な場所へと既に退避していたらしい。


それに気付き、自己中な男に非難の視線を送るキジカ。だがログマはそれに何やら別の意味合いがあると誤解したのか、こう続けた。


「あそこを離れる直前に仕掛けさせてもらったのさ。

発動が〝あの場所〟でなきゃあ困るからな」


そうして、結果的にではあるが。


ログマは今目の前で起こっている出来事の理由を、キジカへと説明したのである。



……もしかすると。


『魔法の発動はあの位置でなければならなかった』

と、言うような事を話したのだから。


ログマが今の今までしてきた奇行の数々は。

あそこまで護衛達を誘き出すため、敢えて行っていたものだったのかもしれない。


……いや。


『これが狙いだったんだからよ』

とも言っていたのだから、確実にそうなのであろう。


まあ、だとしても。


それならばそれで、事前に説明が欲しかったのだけれど……


そのようにして色々と理解したキジカではあったが。

だからと言って、彼女の不満が解消される事は無かった。


いいね、感想等受け付けておりますので頂けたらとても嬉しいです、もし気に入ったら…で全然構いませんので(´ー`)

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