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花邑杏子は頭脳明晰だけど大雑把でちょっとドジで抜けてて馴れ馴れしいがマジ傾国の美女【第13話】

ついに、この日がやって来た。

大徳エンジニアリング株式会社の入社式。

義範はーーすごく緊張していた。

そんな彼は、今日は一人。

花邑杏子からは、珍しくメールもなしーーではなかった。

「あのTシャツ着ていけよな」って来た。もちろん、着てきませんよ。はい。

会場は築地本願寺。変わった会社だとは聞いていたが、まさか、葬儀のメッカの築地本願寺で入社式とは・・・

受付にて手続きをしていたときーー

「あれえ、義範君だあ」

黒淵のメガネをしているボブの女性に声をかけられた。

「あたしぃ。あたしだよ。大原綾乃だよ」

「えっ!綾姉?本当に?」

「なーに?分かんなかったの?」

綾姉とは、大学の先輩。

陰謀論サークルという、構成員がたった四人の零細サークルにいたとき、随分お世話になった人だ。

「髪型が変わったから、分からなかったよ」

「ここ入ってから、ボブにしたの。ほらーー」

と言いかけて、慌てて口をつぐんだ。

「また、あとでね」

綾姉は、義範の手を握っている。

「じゃ、またーー」

義範は、彼女の手を握り返した。

かつては恋仲だった二人。だが今は、入社式の真っ最中だ。二人は手を離すと、名残惜しそうに別れたーー

義範は入社式会場へ。

約三十人ほどの新入社員がパイプ椅子に腰かけている。皆、緊張しているのが分かる。義範も、そのなかに加わる。

花邑杏子は、一番前の席に座っていた。遠い席でよかったと、心から思う。

入社式が始まった。

まずは司会である開発本部長から、五分ほどスピーチが。

そのあとで代表取締役社長の野中信次郎が、スピーチをしたが・・・これが長いこと!人生には三つの袋がなんとかから始まってーー

次は成績最優秀者によるスピーチなのだが、これがなんと!花邑杏子だった!あいつ、頭良かったんだ!

登壇する際に、足を踏み外して派手にコケてた。牛乳瓶メガネにマスク姿で表情は分からなかったが、ありゃ恥ずかしいぞ。だがしかしーー

壇上に立った彼女は、明らかに雰囲気が違った。気品すら漂わせて、堂々とした仕草で、持っていたメモを読み始めた。

「昨今の人工衛星開発事情は、さらに厳しさを増しています。スペースデブリの増加、それに合わせた筐体の小型化、運用を終えた衛星の廃棄処理問題ーー」

難しいテーマのスピーチは続いた。

「だが、今や世界の民は人工衛星なしでは、生活することもままなりません。メモリ容量の劇的増加により、気象衛星はメソスケールの細分化に成功しています。他にも、交通衛星はダイバーシティ使用時に、誤差十センチまで測定することが出来るようになりました。これからは量子コンピュータの台頭による、さらなる進化を、人工衛星は遂げようとしていますーー」

さらに続くーー

「私たちは、この過渡期に、この大徳エンジニアリングに入社出来たのは幸運と思うと同時に、新たなる競争に勝ち抜いていかなければならない使命をもって日々、精進するつもりです。以上で終わります」

盛大な拍手が花邑杏子に送られた。

しかし、壇上から降りる際に、また派手にコケてた・・・

(意外とドジだなーー)

スピーチの内容など馬耳東風な義範が、入社式の印象はともし尋ねられたら、彼は登下壇にコケた花邑杏子のことを話すに違いない。そのくらい、インパクトのあった光景であった。

入社式終了ーー

SHERBETSのライブまで、あと八時間ほど。

いかに花邑杏子に付きまとわれずに、南波澄香ちゃんと合流して、ライブを楽しむか。

義範は考えた。

一旦、家に帰って着替えたかったが、奴が押し掛けてくるのは必至。なので荷物を駅のコインロッカーに預けて、時間が来るまでネカフェで過ごすことにした。

彼はタクシーを拾うと、新宿に向かうよう指示したーー



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