大言壮語
まだ若かった頃に
おれはどうしても
作家になりたくて
それまで勤めていた
郵便局を
辞めてしまった
郵便局の連中には
文筆業に
専念すると
宣言した
そこまでは良かったが
おれには実績もなければ
出版社から
原稿の依頼が
ある訳でも無かった
おれはいっぺんに
職を失い
世間に放り出された
おれはその頃
日中は近所の喫茶店で
本を読んだり
図書館で時間を潰した
しかしその図書館も
週一回は休館日があった
おれはそんな時は
朝っぱらから絶望感に
襲われた
今日丸一日
どこでどう過ごせば
良いんだろう?
お金があるわけでもないし
クルマを持っているわけでもなく
唯一原付きバイクだけは
持っていた
おれは原付きバイクで
何のアテもなく
ブラブラと外を
街中を走るしか
術が無かった
そんな生活にも
嫌気が差し
仕事をしたいと
思ったが
その仕事すら
全く見つからなかった
郵便局で
もう一度
働こうとも
思ったが
作家になると
大言壮語を吐いた以上は
みんなの笑いものに
なることは必至で
それすらも
出来なかった
おれは何にもない生活を
送っているうちに
ふと、ため息をついた
「ハーッ、最近おれ
笑ってないなあ」
そう気づいたのも
ちょうどその頃だった
そんな辛い時期を経て
今のおれがいる