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▩ 第三章 王立図書館 ▩

 一匹のウサギが元気に荒野を飛び回る


 ピョンピョンピョンぴょんぴょん。




 ビュウー。


 そのときふいに大地に大きな影が降りかかる。




 大きな影はそのとがった大きな爪でウサギをで捉え、岩山にある巣へと向かった。


 巣へと戻ると大きな影は体を草と小枝の積まれた巣にふさふさとした胴体をうずめる。


 時折、そばにある骨のようなものをくちばしでコツコツと叩くとその大きな口の中へと放り込む。


 そして、そのくちばしがついにウサギへと迫る。




「って、わたしたべられちゃうのっー⁉」




 ☆☆☆




 コンコンコンコン。


 何かがガラスを叩く音が響き渡る。


 コンコンコン、コンコンコン。


「なんだ、夢か。」


 私は眠い目をこすると体を起こした。 




 窓のほうから誰かが叩いている音がする。


 まだ、朝なんだけど…。


 私は窓のロックを外してベランダへと出た。


 街はまだ暗い。


 ぽつぽつと明かりが見えるだけ。


「あれ?誰もいない?」


 確かにコンコンって音がしたんだけど…。


 辺りを見回しても小さな鳩さんがいるだけ。




「おいで。」


 私は、昨日の夜にオーナーさんの差し入れてくれたパンを窓辺に細かくちぎって鳩さんの前に置く。


 クルゥ?鳩は小さく首をかしげ、ちょこちょこやってくる。


 ちょっとかわいいかも。


 鳩さんをなでなでする私。


 鳩さんもクックルウと鳴き声をあげ、気持ちよさそう。


 ふと鳩の足に目が留まった。


 今、なんか光った?


 よく見ると足に銀色の筒。


「ちょっとごめんね。」


 私は鳩さんを腕にのせて、足についている金属の筒を外す。




 こういうのって伝書鳩っていうのかな?


 本とかでしか見たことないけど…。


 たしか、こうして、そうしてっと、そうこうしていると筒の中から白い羊皮紙が出てきた。


 “朝、八時半、中央広場にて待つ”




 空はもう白み始めていた。




 ☆☆☆




「うう、お腹、苦しい。」 


 外に出て約束の場所を目指す私。


 ちょっと朝ごはん食べすぎたかも…。


 それにしてもほんとに何から何まであの本にそっくり。


 街並みも。


 景色も。 




 ちょっとだけ違うのは街角にある不思議な銅像。


 不思議な触覚生やした虫さんがあちこちにある。


 あそこにあるのは口から水を噴き出す虫さんの像。


 もっとあっちにあるのは…。


 はぁ、私、いったいどこにまよいこんじゃったんだろーっ。






「お~い。」


 うーんと頭の中で考えを巡らせていると不意に誰かの声が聞こえた。


 振り向くと大きな噴水があってそのまえにきれいな格好の男の子。


「?」


 わたし男の人の友達なんていた覚えないし…。


 きっと人違いだね。


 私は男の人を心の中でそっとじしてテクテクと歩く。


 ええと、中央広場っ、中央広場っと。


 地図…。


 地図…。




 私は歩きながらカバンをゴソゴソ。






「お~い!」


 遠くから大きな声


「どこまで行く気だ。ここで待ち合わせって…はあ。」


 ふいに声をかけられ振り向くとさっき噴水に腰かけていた人。


 ぜぇぜぇと息を切らしながら立っていたその人は、遠くで見たときはよくわかんなかったけど、近くで見るとわかる。


 着ている服は豪華だけど、昨日の人?




「わっ。ごめん。大丈夫?」


「ああ、気にするなっ。というか足速いなお前っ……。」


「本当なら噴水で待ち合わせだったんだが…、もう着いたな。」


「ここが王立図書館だ。」




 




 鉄製の大きな門ごしには様々な色に彩られた花壇。


 その向こうに大きなドーム型の建物が見えた。


 正面の門の前には槍を携えた衛兵さん。




 そっちへと向かおうとすると止められた。


「こっちだ。」


 手をひく男の人。


「?」


「えっ、でも入口はあっちなんじゃ?」


「いいから。いいから。」


 そう言うと図書館の生垣と隣の建物の隙間を器用に進んでいく。


「よっと。」


「ほらはやく。」


 そういって、柵を乗り越える男の人。


「う…、うん。」




 そういうと花壇の左にある建物へと入っていく。


 看板には騎士団詰め所 本日 お休みの文字。


「zzzz…ふがっ、でんひゃ~。」


「zzz、もういっぱ~…い。」


「みょういっ…いいってみろおうう。」


 何とも言えない声が響く。


 びくびくしながら進む私。


「気をつけろよ。起こさないようにな。」


「zzz…んがっ。」


 そういうと私の手を引っ張りずんずん進む。




 ようやくいびき地獄から抜けだすとそこには小さな庭園。


 黄緑色の生垣とそして四方、建物に囲まれて、小さな箱庭のようだった。


 真ん中には小さな噴水。




 そして、奥にはメルヘンな木でできた扉。


 その扉をコンコンと叩く。


 しばらくすると、扉が開き、こげ茶色のエプロンを着た金髪の女の子が顔を出した。


「ああ、ナツ様でしたか。そちらの方は初めましてですね。私、司書のレイア=ヴァン=シュタットと申します。レイアって呼んでくださいね。一応これでも公爵家の末子ですが呼び捨てで大丈夫ですから。」




「さあ、早く中へどうぞ。王立図書館は一日じゃ回り切れませんからねっ。」







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