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▩ 第二章 それは不思議な世界への入口2 ▩

 


 ガラガラガラッ。


 大きく砂ぼこりをまき散らし、目の前を馬車が駆け抜ける。


 石畳の上で小石は踊り、砂は宙を舞う。


 猛スピードで通りかかるキャラバンの車輪に巻き込まれた石はあたりに飛び散ってまた別のキャラバンにまきこまれ、跳ね上がる。


 すっかり、目を覚ました街は朝の活気に満ち溢れていた。






 きゅるるるる…。


 お腹の音が鳴る。


 ううっ…。ちょっとお腹すいた…。


 ここがどこかもよくわかんないし。


 何時なのかもよくわからない。


 向こうでは夕方だったのにこっちでは朝だし…。




 というか、ほんとにわたしが昨日、遅くまで読んでた本にそっくり。


 ところどころにある街の装飾も王家の紋章も。


 みんな、みんな、あの絵本のせかいかんそのまま。


 夢かと思えば。


 ぎゅうっと、ほっぺたを引っ張っても覚めるわけでもないし。


 それに結構痛い。


 後に残るのはジンジンした痛みだけ。


 ハンバーグとか落ちてないかな?


 そんなことを考えているとドスンと何かにぶつかった。




 そしておでこがゴツンとなった後、わたしは意識を手離した。




 






 ぴたっと頭にヒンヤリ冷たい感覚。


 閉じた瞼を開くとすすけた天井が目にはいった。


 おでこに触れる、タオルの感触。


 そばには水の入った桶と救急箱が置いてある。


 誰かがここまで運んできてくれたのかな?






「起きたか?」


 目を開けると私をのぞき込み誰かを呼ぶ人。


「ここは?」


 絞ってのせてくれた冷たいタオルに。


「わぁっ。」


 思わず変な声が出た。


「おい、うごくな。」


 傷の手当をしてくれるタオルを絞ってくれた人。


「荷馬車にぶつかるところ、だったんだ。しばらくじっとしてろ。」




 ゆらゆらと揺れるカーテンを背にしているその人は腰に豪華そうな剣をさして、ローブみたいなものを着ていた。


「あの、どちらさまですか?」






 ☆☆☆




 ちゃぷん。


 レモンが湯気の踊る紅茶の上へと落ちる。


 酸っぱいレモンの香りが心地よい。


 目の前にはタオルをのせてくれた人。


 ほんとに本の世界に迷いこんじゃったのかな。


「あの、さっきはありがとう。」


 私は助けてくれた人に手を合わせる。


 助けてくれた人は私と同じくらいの歳の人。


 白っぽいシャツに剣。


 騎士さんか何かなのかな?


 とにかくそういう感じ。


「いや、お礼は言い。商人の馬車をせかしちまったのはこっちも悪いから。」


「ううん、私も考え事してたし。」


 私はぺこっと頭を下げる。




「じゃあ、お相子だな。」


「お前はボーッとしてて、俺も注意不足。だからお相子だ。」


 そう言って頭に手をのせてくる助けてくれた人。


「もっ、私、子供じゃないんだけどー。」


 ぷくっーと頬を膨らませて抵抗する私。




「ね、それより、ここってそのどこ?」


「冒険者酒場の二階だが?」


 即答する助けてくれた人。


「そうじゃなくって。国とか町とか、そーいうの。」


「ここの国?」


「うん、私、ちょうっと遠いところから来たから。」


「珍しい服だとは思ったが、異国かどこからか?」


 無言でこくこくうなずく私。


「そうか。わかった、じゃあ、こうしよう。」


「お詫びといっては何だがどこか街を案内しよう。その様子だとこの街のこと何も知らないだろうしなっ。どこか行きたい場所でもあるか?」


 う~ん、行きたい場所か。


 元の世界に帰る方法とかありそうなのは…。


「図書館…かな。」


 図書館か、それなら王立図書館がいい。」


「それと、これは旅人への餞別だ。その様子じゃ、まだ、宿も取ってないだろっ。」


 そういうと助けてくれた人は一枚のカードと地図をおき、片手を上げて立ち去った。


「それじゃ、明日の朝、中央広場でなっ。」









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