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赤い小箱の秘密 6

「藍!藍!起きろよ!ここから出るぞ。」

よだれを垂らしながら、だらしなく寝ている藍をたたき起こす月涼。


うーん、・・・とうなりながら藍は、やっと起きた。

「うまいもの食う夢でも見てたのか?ったく。暢気だな。拉致されてたんだぞ!」


「えっ月来たし。」

全く動じない藍にあきれる月涼だったがそんな藍だからホッとした。

巻き込んでごめんという気持ちが頭にあった。

それでも、巻き込んだ以上調べてもらわないとな・・・。


「藍、お前を拉致したの女官だったよな。宮中に戻ってどこの女官か調べられるか?」


「おう!だてに、宮中で長いこと仕事してないからな。任しとけ。でも命の保証はしてくれよ~」

と冗談めかしていう藍だった。


「それから、しばらく門番は、他の者に変わったから、藍は女官について調べてくれ。お前の命は保証する・・・。」


・・・とはいったが、宮中に関わることに死はつきものなんだけどな。と不安を覚える月涼だった。


その頃、離宮には左丞相が参内していた。


「子は順調ですか?皇太后様・・・必ずや男の子を生んでもらわねばなりません。万が一の手はずは整えております・・・、その際はご安心を。」

不敵な笑みを見せながら語り掛ける左丞相に対して、皇太后は笑みも見せずに答えた。


「父上、現帝にあっさり政権を取られたのは、貴方ですよ。当たり前のことを報告に参られたのですか?」

親子とはいえ権力争いの渦中で暗躍する二人に情というものは無かった。


「いえ、現帝に妙な動きがあるとのことです。何か入ってきていませんか?」


「現帝がこれまで、全く、放置されていた奥司書に手を入れたということですか?それなら、探りを入れました。」

そういって、偽の赤い箱をたたきつけるように左丞相に渡した。


赤い箱には本物と同じように翡翠の指輪と短冊を書き写して入れてあった。


この名前は・・・崔!?と思い浮かぶと同時に皇太后が口火を切った。


「・・・父上、これが、こちらに来なければ今頃どうなっていたのか?・・・あれほど、伝えておいたではありませんか!!生まれるまでに、こちらの足を引っ張るようなものは調べ上げてすべて排除しろと!!」


バン!!机をたたき怒りをあらわにする皇太后。


娘の鋭い目つきと怒りに満ちた言葉でなす術もない父の左丞相。


「このような危うい土俵に立たせ、全てを背負わせたのは、誰だったのですか?自分が国舅になり睡蓮政治でこの国を治めると言い放ち、無理やりここへ入れたのは?」


皇太后は、そういった後、箱の始末をする事とこの箱の存在を知るすべてのものを消せと言い放った。


左丞相は拳をぐっと握り血がにじんでいた。


なぜ、今更、このような物が出てきたのだ…。とにかく、奥司書にさらに探りを入れなければ。

左丞相は、当時に回帰した。



あの時先々代の皇后の位は、長きに渡り空白となっていた。


産褥熱により子と共に死亡した皇后の喪が明けて数年、私にとっては、絶好の機会がやってきていた。


右丞相の娘である寛氏皇貴妃が皇后の座に一番近かったし陛下の寵愛も令妃の次にあったが寛氏には、公女3人だけで男子には恵まれなかった。


それを理由に皇后には立てられず代理で待ったがかかったままだった。


令妃は、異国より来た妃の為、反対派が多くその地位には、程遠かったし

本人もそのような気持ちは無く、子を守れれば良いとだけ思っていたような女だ。


当時の宮廷は、北への遠征に力を入れすぎた右丞相よりも宮廷軍部に力を入れた私の力の方が勝った。だから右丞相は、寛氏を皇后へとごり押しできなかった。


離将軍との結婚の約束を知っていたが、妹を西寧から連れてきて、破談させてまで皇后の座へ座らせた。


ここまでは、計画通り進んだんだ。


ところが妹は、令妃にしか興味がなく皇后の居室に向かうのも、法で決められた時のみであった先々帝との間に皇后即位後すぐに身ごもった。


すぐに分かった・・・離将軍の子だと!!


先帝が生まれたのも二月も早く合房からの計算も合わなかった。


だが決定的な証拠がなく、合房事態もないわけではなかった。計画は崩れなかった。


無事生まれ嫡子となったんだ。


これを機に政権をつかむはずだったのに娘を皇后に座らせこれからという時にあっけなくいってしまった。


娘まで・・・嫁がせてやったのにだ!!!


奥歯から血が出るほど噛みしめて怒りをにじませる左丞相。


何故だ!私の行く手を阻む・・・


皇后崔王妃・・・左丞相の妹であり青海西寧の出身でその一辺で一番美しいと言われ西寧美と呼ばれていた。離将軍と幼い頃より婚姻の約束をしていてとても仲睦まじかった。ところが左丞相の政権争いに巻き込まれ離将軍は、右丞相側の北光国遠征部隊に駆り出され、そのすきに宮中に召されたのであった。


この赤い箱は、離将軍と崔氏の婚姻の約束の指輪だったのだ。そして、それは前線に届けられ愛する人が宮中に召されたのを知る証となった代物である。


その後、離将軍は嘆き悲しみその消息を絶った。





『東風吹く世に青海の華咲き相まみえん・・・西寧美』


正に当時のようなことが繰り返されようとしているのだった・・・





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