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3日前の攻防

月涼の助け舟で、難を逃れた藍は、国王との謁見を終えた仲達を、月涼の部屋に案内した。


「仲達さん、あの沢山の積み荷は、月の婚礼祝いですか?」


「ああ。あの積み荷で、戻るのにかなりの日数を要したからな~。青華国で着る衣装を仕立てる反物やら装飾やらが積んでいる。それと、干し物を中心とした食物だな。西蘭の米や麦とかも持って来ている。その土地で味が違うからな。」


部屋の前まで、和気あいあいと仲達と話し込んでいた藍だが、さっきの失敗が有るので畏まって、月涼たちに告げる。


「リュート殿下、リァンリー様、仲達様を案内しました。」


「リュート殿下、涼麗様・・・只今、戻りました。」


リュートが、月涼の横でにこやかに対応する。


「仲達殿、無事に戻られて、何よりです。また、西蘭国からの祝いの数々をお届け頂きありがとう。」


「いえ。こちらこそ、西蘭国陛下から、リュート殿下へのお礼の書簡も預かりました。これを・・・。」


藍が畏まるせいで、仲達まで、少し緊張しながら、リュートに書簡を渡す。


そんな状況を見て、月涼がクスクス笑うので、仲達の緊張が一気に解けた。


「月涼・・・笑うな。」


「仲達さん、お疲れさまでした。それと・・・ありがとう。奏の事。」


月涼が頭を下げて言った。


「ああ。もう、大丈夫だ。東宮妃が、しっかりしておられる方でな。それと禅譲は、3年後になった。今回の軽率な行動が・・・一部にバレたからな~。それと、北光国の件で、まだまだ、陛下でなくては、との声が大きくなった。」


「そうですね。私も選秀女は別として、禅譲は、早いと思っていました。雨降って地固まるといった感じですね。」


月涼は、どこか、遠い目をして答えるのだった。その様子に気づいたリュートは、そっと寄り添い耳元で囁いた。


「其方を守るのは、私だ。リア・・・。」


「くすぐったいですよ・・・リュート。フフフ。分かっています。」


その様子を見て、ホッとしながらも複雑な仲達だった。


3人で和やかに話している中、フルルがお茶を運んでやって来た。


「さぁ、仲達様、疲れが取れます。カミツレ花のお茶です。どうぞ・・・。」


フルルがお茶を出すだけなのに、なんだか緊張している事に、月涼とリュートが気付いた。フルルの手が震えていたからだ。それに、なんだか、顔もほんのり赤い。


「フルル?どうしたの?頬が染まっているわ?」


そう言って月涼とリュートは目を合わせてクスっと笑う。


「リァンリー様!!揶揄わないで下さいまし。」


フルルがより一層、頬を赤くして、目を伏せる。仲達も突然の状況におどおどし始めた。


「なんだーーー。両思いですか?いつから?」


その様子を廊下で見ていた藍が入ってきて、仲達にすり寄って聞きに行く。


「藍!!お前も茶化すんじゃない!!失礼だろうフルル殿に・・・。」


仲達が、下を向いたまま、焦って怒る。


「まあまあ、これぐらいにして置きましょう。大人ですからね・・・二人とも。」


リュートがそう言って、話の流れを変えた。


「仲達殿、西蘭国からの範安への出兵は、どうなりましたか?」


「その件なら、手筈は、整っています。重慶殿とも連携も完了しておりますので、今頃、開戦しているかと・・・。仁軌殿は、艦隊に乗り込んでおられるのでしたね。」


「ああ。今頃、王后陛下と摂津港を攻めに言っているだろう。」


リュートがそう言っったのを聞いて、皆が驚いた。


「えっ王后陛下?」


リュートが困った顔をしながら、経緯を説明した。今回の作戦は、策を練ったのは月涼だが、その采配を王后が担ってもらうように頼んだこと。王后には、あくまで采配のみで、戦艦での実際の指揮は、仁軌にと言っていたが、それを無視して戦艦に乗り込んでいるということだ。それもこれも、リュートが月涼を婚儀に、集中させるためにしたことだった。


遡って、仁軌がテスタの街で珠礼の治療に付き添っている頃、今回の作戦についての書簡を藍が、持ってきた。


「仁軌さんに、直接渡る様にと預かってきました。」


「あー、ありがとう。藍。」


「珠礼さん、どうですか?」


「うむ。北光国の医療なら・・・腕を切り落としていただろうな。此処の医療は、すごいよ。もう、山は越えて、後は、体力が戻る様にしてもらっている。」


「良かったですね!!後は、安里様たちが船で到着すれば、皆・・・揃いますね。」


仁軌は、嬉しそうに顔をほころばせて、頷き、藍の持ってきた書簡に目を通した。


「ふーむ。婚儀3日前の攻防か・・・。なんて、作戦考えるんだ・・・自分の婚儀を利用して・・・。まっ、あいつらしいが・・・。これによるなら、私は、北の艦隊にもう、向かわねばならないな。」


「はい。仁軌さんが直ぐに発てる様に、出立の準備もさせています。」


「それも、月涼か?」


「はい。仁軌さんなら、その日に発つはずだと・・・。珠礼さんの転院の準備と、他の方々の住居のご用意も整っていると、伝えるようにも言われました。俺は、この後、その件を手伝いに戻ります。」


せっかくの珠礼さんとの時間を割くように感じた藍は、ちょっと申し訳なさそうに伝えた。


「フッ何もかも・・・完璧だなーーー。本当に。分かった・・・嫌でも出立させるってことだな。ハハハハハ。」


珠礼に、また、しばらくの別れを告げた仁軌は、その後すぐに北へ向かい、王后と共に摂津港を攻め落とす指揮を執るのだった。



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