婚儀に向けて
「お取込み中・・・申し訳ございません。・・・殿下。コホン。ノックをさせていただいたのですが・・・。」
二人は、少しだけ頬を赤らめて、ペンドラムの方を向いた。月涼に至っては、リュートの後ろに隠れている。
『なんて恥ずかしいところを見られていて、しかも気づかないとは・・・私としたことが・・・。これが世に言う、浮かれているということなのか?』と月涼は、頭でぼやいていた。
『しまった・・・。少し浮かれすぎて、ペンドラムが来るのを忘れていた・・・』とリュートも、苦笑いしながら頭でぼやいた。
そんな二人を無視して、連絡をするペンドラム。
「殿下、婚儀の日程と来客の目録が、出来上がってきております。お目通しいただきたく存じます。」
「ああ。分かった。リア、一緒に見よう。」
目録は、来客だけでもかなり有り、うんざりする量だったが、月涼にとって、問題だと思えたのは婚儀の日程だった。
「14日後・・・。早くないですか?仲達さんが戻ってくるのに、10日はかかります。仁軌さんも珠礼さんの治り次第だし・・・。」
「だが、君の事は、周知の事実で、婚儀がいつになるのか?噂になり始めている。これ以上伸ばすことは、無理だな。」
ペンドラムが頷きながら月涼に説明した。
「リァンリー様、婚儀用の衣装も明日、仕上がってくる予定でございます。それと、すでに婚儀の式場も出来上がっており、神殿での、儀式の準備も終わっております。ご来賓の面々を考慮しなければ、明日にでもできるぐらいなのです。」
「えっ?そうなんですか?」
驚いて慌てる月涼。
『私は、明日でも良いぐらいだけどね。』それを横目にぼやくリュートだった。
「来賓の方で一番遠いのは、仲達様ぐらいです。ジアン公もこちらに向かう連絡が来ております。」
ペンドラムが更に説明に入った。この説明を聞いた後、月涼が安里の事を思い出して聞く。
「あっそう言えば・・・安里様は、どうなりましたか?北光の手の者から逃れたのでしょうか?」
「ああ。君の誘導作戦が効いたからね。春恩川で、乗船したところまで情報が来たよ。」
月涼が、また、何かを考え始めているのをリュートは、見逃さなかった。
「リアーーー!また、策を弄しているだろう?」 『ばれないと思っているのか?リアは・・・。はぁ~、先が思いやられる・・・。』
「えっ」 『しまった。顔に出た!というか目ざといな・・・リュートって。』
『コホン』ペンドラムがまた、咳払いで二人の会話を遮って話す。
「よろしいですかな?殿下、リァンリー様?目録の来賓は、ざっと目を通したようですので、後は、婚儀の綿密な日程の確認をお二人でなさってください。それと、明日から儀式、婚儀両方の予行もございます。それでは、・・・。」
一礼をして、去ろうとしたペンドラムだったが、言い忘れたことがあったと月涼に言う。
「忘れる所でした。リァンリー様には、特別授業もございます。フルルに任せておりますので、しっかり、学習なさってください。それでは、・・・あっ、先ほどの続きをどうぞ。」
そう言うと、ペンドラムは、笑いを堪えながら去っていった。
「また・・・続きって言ったわ。これ以上、何の続きがあるのかしら?ねー?リュート。」
月涼のこの回答に、堪えられずに笑うリュートだった。
「クククッ。その続きがしたいけどね。君の学習次第かな?」
「もう!また、揶揄うんですね!!」
拗ねて怒る月涼も可愛いので、抱きしめたいリュートだったが、頬にチュッとしただけで、先ほどの月涼の考えを聞くことにした。
「きゃっ、もう、また・・・。」『すぐ、するんだから油断も隙もない!』
「私の頬だ!ふふふ。それより、先ほど、頭に浮かんだ考え言ってごらん。リア?」
待ってました!!とばかりに顔が綻ぶ月涼。
「北光は、安里様を取り逃がしたので、西蘭を脅す人質にが居なくなりました。同時に安里さんを餌に、仁軌さんを呼び戻す事も、出来なくなりましたよね?となると、私たちの婚儀の日に合わせて、範安を落としに行くかなと?思ったんです。」
「そうか・・・婚儀ともなれば、青華国の軍事応援が出ないと、北光国側は、踏むというわけだな?」
「そうです!兵は、範安に集中します。」
「その時に、摂津港を攻め落とせると思っているのか?」
「はい。ですが、綿密には違います・・・。仲達さんが戻れば、婚儀が必ずあると思うでしょう・・・その時、北光国の間者に婚儀の、偽の日の情報を与えるのです。この状況を西蘭とも共有して、出来る限り、範安を守ってもらいたいと思います。」
なるほど・・・と頷いたリュートが月涼に重慶をどうするつもりか聞く。
「重慶をどう使うつもりだ?」
「北光国に戻らせて、範安を落とす軍になってもらいます。重慶の味方6割で。ここまで、お膳立てすれば・・・重慶は分かると思います。残り3割を寝返りを阻止するための摂津港です!!艦隊を見れば無血開城するでしょう。そして、指揮を仁軌さんにさせれば!」
リュートは、月涼が敵でなくて、本当に良かったと思う瞬間だった。
そして、この後、例の学習で悲鳴を上げる、月涼であるがそれは、また、別のお話で・・・。




