表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/72

リュートとの対面 2

リュートに案内され、部屋へと移動する二人。その部屋は、煌びやかではなく、簡素ですっきりした部屋で、執務室の様だった。


「ここは、私の本城での執務室です。どうぞ、そちらへお座りください。先ほどの会話で出てきた・・・藍、かな?その者は、本城にある彼女の部屋にいますので、呼ぶように言います。それから・・・お茶を用意しましょうか。」


そう言うとリュートは、部屋で待機していた侍従頭ペンドラムに声をかけた。


ペンドラムは、にっこり微笑み挨拶をする。


「これはこれは、仲達様、仁軌様。お話が弾んだようですね。それでは、ミントティでもご用意いたしましょう。昨晩は、お酒も進んでいた様ですし胃によろしゅうございます。では、」


ペンドラムがドアを開けて、部屋を出ていくと・・・リュートは、フっと思い出し笑いをしながら、先ほどとは違い砕けた感じで二人に聞いてきた。


「仲達殿、仁軌殿は、あの日の出来事から聞きたいんじゃないのですか?貴方たちの月涼について。」


二人ともコクリと頷いた。


「では、もう一人の仲間である、藍が来るのを待つとしましょう。」


しばらくするとペンドラムが戻ってきた。側には、藍もいて、早速、お茶を入れる指導もされている様だった。ミントの良い香りが広がり鼻孔をくすぐる中、藍が黙って仁軌、仲達にお茶を出しながら、はにかんで目配せをした。仁軌がククっと笑いをこらえている。


上手くお茶を出せた様で、満面の笑みでペンドラムの横に立つ藍に、リュートが声をかけた。


「藍、私が誰か聞いたか?」


「はい。リュート殿下。これから、宜しくお願い致します。」


「そうか。少し、敵対意識でもあるかと思っていたが・・・ハハハ。そうでもないのだな。」


キョトンとした顔でリュートを見つめる藍。


「彼女の世話をしっかりしてくれ。彼女が本城に戻るための準備を母上・・・皇后陛下がしている。それを手伝いなさい。後で、案内させるから。」


「はい!!ありがとうございます!!」


藍は、この言葉で頭の中は、月涼でいっぱいになって、仲達と仁軌がなぜここにいるかすら考えていなかったが・・・我に返って思わず言った。


「あれ、仲達さん、仁軌さん、そう言えば何でここにいるんですか?」


ペンドラムが直ぐに反応した。


「これ、藍!お客様ですぞ。」


藍はシュンとなってうつむいた・・・。


「良い・・・。藍、今日だけだ。こっちに来て客人の隣に座りなさい。話が終わったら、ペンドラムと共に出て彼女の所へ行きなさい。」


「はい!!」


藍が座るとリュートは、いきさつから話し始めた。


ジアン公から、月涼が来ているからすぐにでも、海南国へ来てほしいと連絡が来たことで、慌てて早馬で向かった事や、月涼が斉明の一件を解決して、西蘭に帰ってしまっては、無駄足になると思って足止めも頼んだことなどだ。


「それで・・・やっとのことで着いて、彼女に会おうと宴の席に向かったら・・・姑息に逃げ出そうとする彼女がいてね。クククッ」


3人とも・・・思い浮かんだのは、お姫様抱っこされるあの場面である。


「私は、久しぶりに彼女に会えると喜んでいたんだが・・・。久しぶりとはいえ、すっかり、忘れ去られていたのには、かなりショックでね・・・少し、意地悪をしたんだよ。」


リュートは、あの酒宴で、3人が目撃していた場面を笑いながらそう言った。


「部屋まで連れて帰って、冗談で迫ってみたら、気絶するし・・・。」


「えっ?あの月涼が出会った人を忘れる?それに気絶?」


仁軌が驚いて呟いた。


「彼女が気絶したから仕方なく、起きるのを待ったんだが・・・一向に起きないので困ってね。治療するためにも、先に、彼女の陰陽の気の流れを見たんだがかなり悪かった。・・・眠っている間に、簡単な方術を施したよ。」


仲達も仁軌も不思議そうに聞いていたが腑に落ちないことがあった。


「すみません。青華国の方術は、他国でも使える?ということですか?我々が聞いたところによると、この国だから使えて、この土地でないと作用しないとも伺っていたのですが…?」


仁軌が興味深そうに聞く。


「他国でも十分使えますよ。施す側の人によりますがね。ですが、この地ほどの強い作用が出せないということは言えます。」


リュートは、そう言った後、さっきと違い済まなさそうに続けた。


「半日ほどで目覚めた彼女は、記憶が無くなっていたんです。それどころか、一度目覚めても、直ぐに眠ってしまう状態に陥って。すぐさま、青華国に戻る手配をしたんです。」


3人は、なるほどと思っていた。月涼があの宴の後、おとなしく連れて行かれるとは、思えなかったからだ。連絡を受けていたジアン公が、自分たちの問い合わせに対して、待ての一点ばかりにしてもそうだった。


「いきさつは、分かりました。それで、容体はどうなのですか?」


3人は、心配そうに聞く。


「体としては、神殿の作用と方術で半分以上治って来ています。月のものが来て、安定すれば、ほぼ大丈夫となるでしょう。婚姻による施しは、結果が出るまで分かり兼ねますがね。」


「記憶は?どうなのですか?」


藍が半分泣きそうになりながら聞いた。


「藍、もう、この場を離れて、ペンドラムと彼女の所へ行って確かめてきなさい。」


リュートは、そう言うとペンドラムに、藍を連れて行かせた。残された仲達と仁軌は、その後、月涼の事を更に聞くことになった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ