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月涼を追いかけて 3

「ルーラン、これ、なんて読むの?」


「これは、キタップ。本ですよ。」


「藍様、ずいぶん単語覚えましたね。挨拶の仕方もできるようになりましたし。すごいです!この数日で・・・。」


「ありがとう。早く覚えないと困るしさ。へへ。それと様はいらないって。」


「ですが、藍様は、リァンリーお嬢様の侍従長です。私たちより上になりますから。ここで良くても向こうで怒られます・・・。」


「そっか~そうだね。でも、この船にいる間と誰もいない時は、様は無しにして。お願い。」


少し悩んでから、ルーランは元気良く了解してくれた。


船は、航行して7日になる。途中天候が悪く首都に入る手前の港で避難したのもあり思ったより遅れをとっていた。


首都タブールまで、後1日半ほどかかるらしい。


早く月涼に会いたい藍にとっては、悩ましい航行だが、反面、青華国での作法や言葉を覚える時間となった。


その頃、仲達、仁軌はすでに国境を越え、青華国のテスタの街まで来ていた。ここは、海南国のアビスの様な都市だ。


この街には、腹ごしらえと馬の休憩の為に寄ったのだった。


「にぎやかな街だな。それは、そうと青華国は薬剤の豊富な国だったよな。」


仁軌が仲達に市井であちらこちらを散策しながら聞く。


「そうですね。それに不思議な石が取れるそうですよ。この国でしか力を発揮しないらしいですが。」


「なんだ?その石。」


「なんでも、人体に力を与えるとか?って聞きましたね。例えば、体が弱った人などを回復させるような作用だそうです。こちらには、病治院というものがあって。侍医師が常にいる役所もあるらしいですよ。」


「国が違えば、いろいろとあるな・・・。」


「えー本当に。以前、この制度を月涼は学びたいと陛下と皇后に言っていたらしいです。」


「あいつは、いつも、自分の事より世の為、人の為だな・・・。俺を呼びつけるのに、よこした書簡もそんな感じで書いてたよ。命を大事にしたいと。それを信じて安里と孫を迎えに行ったんだ。」


市井を散策した後二人は、テスタの街で宿を取ることにした。

首都まで、馬を休ませずに走らせたとしても丸一日かかると分かったからだ。


一方、月涼は・・・・・・。


気絶した後、記憶がないまま船上にいた。


頭が割れそうに痛いし、ぼんやりして目がかすむ・・・。


一体ここは、どこなんだろう?いつここへ?えっと・・・。


誰といたっけ?


ぼーっと窓の外を眺めていたらノックする音が聞こえた。


「目が覚めたのか?」


「えーっと。貴方は?」


入ってきた男性は、月涼に飲み物を渡してくれた。


「喉が渇いているだろう。ずっと眠っていたからな。」


渡してくれたコップを受け取りその男性の顔を見上げるが誰か分からなかった。


飲み終わるとまた眠くなってきた。うつらうつらするとフッと抱き上げられ看板に連れて行かれた。


その男性の腕の中で眠りそうになりながら・・・


「ここは?」


「海の上だ。もうすぐ城につく。」


そうして『また眠れ』と言われ月涼はそのまま、記憶がとぎれていくのだった。


月涼を乗せた船は、そのまま首都タブールの港に入り、青華国王城内の波止に着いた。


船の入港の合図が城内に響き。出迎えの準備が始まった。迎えの者たちが並び荷下ろしが始まる。


そして、青華国王侍従長が足早にやってきた。


「お帰りなさいませ。リュート殿下。国王がお待ちです。」


「後で、私だけで行く。そう伝えよ。ジアン公からの書簡だ。先にこれを父上に持っていけ。」


侍従長は、リュートの書簡を受け取り、また、足早に戻っていった。


リュートの腕の中の月涼は、やはり眠っていた。


颯爽と歩き城内へ入っていくリュートを皆が目で追いかけて行った。


そして、抱かれた月涼は、白い肌に淡い水色の青華国の衣を纏い、伽羅色の美しく長い髪が流れている。見ていた青華国の出迎えの者たちは口々に『なんてお美しい花嫁だろう』とささやいた。


リュートは、月涼を部屋で寝かせた後すぐに謁見の間へ向かった。


青華国王ザンビスは、彫の深い顔立ちで、深い紫の瞳が特徴的だ。背も高くほっそりとしているが華奢というわけではない。


国王として即位する前は、海南国に留学しておりジアン公の屋敷で滞在していた。その為、ジアン公と懇意なのである。この度の縁談は、随分前からジアン公より、月涼の体の事での青華国の医療が、使えないかと相談をしていた際に、すでに持ち込まれておりその時から快諾されていた。


「第2皇子リュート。只今、戻りました。」


「よく帰った・・・。ジアン公よりの書簡は、先ほど目を通した。直に、西蘭国からの使者も来て正式に調印する。婚儀の日取りはその後だ。許嫁はどうしたのだ?」


「船旅で体調を崩しております。それと、例の件で術を施しており副反応が出ている様です。状態が落ち着き次第連れてきますが到着後にする術と投薬が残っておりますので数日要します。・・・父上。」


「そうか・・・・・・。それは、心配だな。早くついていてあげなさい。大事な人だ。それから、効果の出る方法をとるほうが良い。奥神殿へ連れて行き術を施してあげなさい。」


「はい。有難く存じます。では、下がって彼女のもとに。」


国王は、早くいけと手を振った。





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