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月涼を追いかけて

青華国へ向けて、積み荷の馬車で移動しジアン公の用意した船に乗り込んだ藍は、月涼へ思いを馳せていた。


「月・・・どうしてるのかな?連絡もくれないなんて。なぁ、チビ。お前も寂しいよな。」


甲板で、そんな風に独り言をつぶやいていると、金糸の様な髪に薄い青の瞳のまだ14・15歳くらいの少女が声をかけてきた。一緒に乗り込んだと思われる女官のようだ。


「私、ルーランって言いうの。貴方が藍様?」


「えっっ、あ、うん。そうだけど・・・。」


「良かった。食事の用意ができたわ。一緒に来て、船内を案内するから。」


「ありがとう。チビも連れて行って大丈夫かな?」


「えー、リァンリー様の大切な猫ですもの。」


そう言ってルーランは、楽しそうに食事の場所まで藍を連れてきて、船内で過ごす人たちの事を教えてくれた。料理長のハッチ、清掃員のトンタ、衣装係のフルル、雑用女官のラキとルキ姉妹だ。彼らを紹介されこの食堂で共にするメンバーだとルーランは言った。


ハッチは、恰幅が良く、いかにも大食漢といった感じに見える。頭には頭巾をかぶり髪はきれいに隠しているがオレンジ色のくせ毛の様だ。

トンタはハッチと正反対にひょろっとしていて手足が長く、垂れ目で誰にでも優しそうに見え、黒髪を後ろにまとめて括っていた。

フルルは、年は、30ぐらいだろうか?スラっとした体形で、赤茶の髪をひっつめて結い上げているうえに、しっかりした目鼻立ちのせいで少しきつく見られると自分でぼやいていた。


ルキとラキは双子で、15歳になる。二人とも赤髪に緑の瞳だ。背が低く髪の括り方で見分けてもらうようにしているらしい。二つ括りを上で括るのがルキで下がラキだと説明してくれた。


そして促され席に着くと用意された食事が運ばれた。ルーランたちと話しながら楽しく食事が出来て、藍は、少しほっとしていた。やはり、一人では、不安な気持ちはぬぐえなかったからだ。

そんな、藍にルーランはいろいろと質問し始めた。


「藍様は、青華国の言葉を話せるの?」


屈託なくニコニコしながらルーランは、藍に聞いてくる。


「君は?」


「私?ちょっとだけなら話せるわよ。だから、選ばれてこの船に乗ったんだもの。」


「俺は・・・ほとんど知らないんだ。文字を見たら青華国の文字だってぐらいで読むこともできないよ。」


ルーランの質問に、にわかに不安になる藍だった。


「そうなのね。じゃあ私が船にいる間教えましょうっか?ふふ。」


「良いのか?」


「えー。だって、ここにいる人みんなに教えてるんだもの。」


「なんだ、みんな、仲間か~。」


和やかな雰囲気の中、皆が頷いているのが分かった。


その後もルーランは、楽しそうに藍の年齢や出身を聞いたり、月涼の事も聞いてきた。


そんな会話の中、料理長のハッチが藍に食事の味を聞いてきた。


「どうだい?おいらの料理の味は?」


「とっても美味しいです!!これは、何の肉ですか?」


「あー、羊だよ。そうやって、豆と煮込むと柔らかくなる。それから、果汁をたっぷりいれてあるからな。船の上では栄養が不足しやすい。天候にもよるが順調に行っても青華国まで7日はかかるからな。一日一食しか主食は出さない。後は、軽食だけだ・・・しっかり食べておけよ。」


藍は、食事が終わり船旅での注意点をいろいろと聞いた後、皆が青華国でどう過ごすのかを知りたくなり聞いてみることにした。


「みんなは、この荷物を送り届けたあと、どうするんですか?」


料理長のハッチ、清掃員のトンタは、肩を組みながら答えた。


「俺たちは、荷下ろしを手伝った後、港で2日ほど停泊して、船の調整後に海南にもどるのさ。彼女たちは、リァンリー様の侍女として、青華国に残るだろうから、藍様と一緒に過ごすと思うぜ。」


「藍様の様はいらないよ~藍でいいから・・・。それより月・・・違ったリァンリー様は、いつまで青華国にいるのか知ってる?」


藍の言葉に皆が顔を見合わせる。


「おいおい、リァンリー様のそば使えなのに、そんな事も知らないのか?」


「あーだって、あの宴の日になんの連絡もなくいなくなったんだから・・・。」


藍は、その時の様子を皆に話した。


「そうか・・・そんな風に聞くと心配に思うのは無理ないな。俺たちは、使用人で詳しくは聞いていないが、今回の積み荷は、ランドール家からリァンリー様を嫁がせる為の婚礼荷入れだって聞いてるぜ。フルルが侍女頭で、ラキとルキはルーランと共にお嬢様の女官として向こうでの生活を支えるために残るんだ。」


「そうよ。リァンリーお嬢様によく使えるようにってスルヤさんにも大旦那様にも言われているわ。婚礼の日が決まったら、皆さまもいらっしゃるって聞いてるし。」


フルルが困った感じで答えた。ルーランとルキ、ラキも口を揃えて言った。


この話を聞いて藍は、とにかく月涼に会って話したい・・・ただそれだけを思った。


見合いの話を聞いていたから予測できないことは無かったからだ。






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