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酒宴にて 2

「ほら、あそこに月涼がいるぞ。不機嫌そうにすわっているが、ああしていると綺麗なんだよな~あいつ。」


仁軌が目ざとく月涼を見つけた。


「月、なんでこっちにこないんだ?」


「当たり前だ。藍。あいつは、こちらの王族の血筋でもある。月涼としてこの国へ来たのなら話は別だが、本来の姿で来ているからな。末席になど座らせるわけにはいかないのさ。」


仲達がそう言うと藍は、ふてくされた。


「藍、まあ、あいつのことだコッソリ抜け出してこっちへ来るから待っていたら良い。ほら、見ろ。動き出したぞ・・・。」

仁軌が上段席の方を見ながら言っていた。


「おっほんとだ。月がこっそり後ろへ向かったな。あれ?なんか、抱きかかえられたぞ・・・。」


「あんな事、簡単にされるやつじゃないよな・・・。」


仁軌と仲達がつぶやき3人は、不思議そうにそれを見ていた。



抱きかかえられたまま、あっけにとられていた月涼だったが正気に戻り下りようともがいた。


「ちょっちょっと下ろしてください。というか下ろしなさい!!」


「嫌だね。自分の許嫁を抱えて何が悪い。」


意地の悪い言い方で話し、ぐっと力を込めて下ろす気のない例のリュート


月涼が更にじたばたしても力が強く動じない。


「おお~仲睦まじいの。良かった良かった。」


見るとジアン公を筆頭に皆が注目していた。


げっ!!見られてたーーーーーーー!!。


月涼は、倒れそうになった。いや、抱えられているから・・・・・・卒倒もできなかった。


「おじい様、野暮ですよ・・・。私たちは、酒宴を楽しみましょう。」


フエルがジアン公に声をかけ、席についた。


えっ放置?本当に?えーーーーー。『助けてーーーー!!!』心の中で叫ぶ月涼。


例の人は、そんな月涼の顔を覗き込みニヤニヤし始めている。


『この人、絶対性格悪いよ・・・・・・・。』月涼は、なすすべもなく例の人をにらみつけるしかなかった。


「猫の威嚇みたいだな。ハハハハハ。まぁ、ここから出て、私の部屋に行こう。」


「嫌です!!なんで、行かなくちゃならないんですか?私は、仲間のもとに行きますから、早く下ろしてください。」


月涼の言葉を無視してスタスタと歩き始める例の人。


「殿下・・・お待ちを、どちらに向かわれるのですか?ここへ来たばかりでは?」


ついてきていた護衛が声をかける。


「用事は、済んだ。部屋に戻る。誰も通すな。」


「はっ。かしこまりました」


「だから、い、か、なーーーーい!!て言ってるでしょ。」


ガン無視して更に歩き始める例の人。


中庭を通り抜け、離れの貴人用の宮殿まで来た。この宮殿は、貴人の中でもかなりの高位でなければ入ることは許されていない。月涼も初めて入る場所だった。庭園から続く薔薇園の中にそびえ立ち、その宮殿を取り巻いて見事に色とりどりの薔薇が咲き誇る。覚めるほどの青い外壁の為、青の宮殿と呼ばれていた。そして、宮殿のその奥にはガラス張りの温室までも備えている。そんな場所にやって来たのだ。


『もしかして青華国皇族?ここを使えるのは、たしかその国の皇族だった気がする・・・。』


月涼は、我に返って、その意地悪そうな美男を見つめる。


「なんだ。私を思い出したのか?」


「・・・・・・・???????えーっと。」

頭をフル回転するがこんな意地悪な美男は知らない。私の周りにいるのは、可愛いお顔の藍と美男子ではないが、まぁ整ったお顔の仲達と仁軌。あと、ちょっといい顔の奏ぐらい。その他むさくるしいおじさん達だ。どこで、会ったんだ?


「勘違いということは?ないんでしょうか?」


「ない」

そっけなく答える上に微妙に怒りをにじませている気がする。


月涼は、思い出さないと帰してもらえない気がしてきた。


「その~。よろしければヒント等もらえないですかね・・・?」


そんな、やり取りをしていると部屋に着いたらしく・・・。迎えの者たちが出てきた。


「このまま、部屋に入る。誰も近寄らぬように」


「はい。仰せのままに」


一礼して下がる迎えの者たちに、月涼は、必死で助けてと目線を送るが当たり前に無視された。


バタン!!無情にも閉まる扉。去っていく足音に・・・『もどってきてーーーー』と心で叫ぶ月涼。


まるで捕獲された獲物である。


ドサッとベッドに下ろされ、やっと解放されたと思いきや覆いかぶられた。


「ひーーーー!!!!」


思わず声が出る。完全に凍り付いて不覚にも気絶してしまった。実は、月涼・・・このような経験が全くなかった。妓楼では高嶺の花子さん、普段は月涼。たまに、涼麗さんになるくらい。男の姿が大半でこのような状況下に置かれるなんて想像したことすらなかったのである。



一方、藍たち3人は、抱きかかえられたまま消えた月涼を心配にして、何とかジアン公に取り次いでもらったが、居場所はおろか探すのも許可が下りなかった。ジアン公からしてみれば、既成事実が出来ても良いくらいと思っていたからである。ひ孫がへんな輩にひっかるくらいなら、用意した許嫁と既成事実が先でも構わないと本気でおもっていたからである。


探すのを止められた藍は、気が気ではない。


「どうしよう・・・仲達さん、仁軌さん・・・月が、月が、」


「藍、ここが西蘭なら話は別だが、この場にいる以上身動きが取れない。それに・・・。」


「それに?」


仲達にかぶせるように藍が聞き返す。


「あれは、多分、月涼が言っていた見合い相手だろう。探すなという事は、ジアン公は見合いを壊すなと忠告しているんだ。藍。」


仁軌がそう答え仲達も頷いた。


呆然と立ちすくむ藍の肩を仲達と仁軌がトンと叩いた・・・。





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