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酒宴にて

海南国王は、国民に対して、第7皇子の婚儀を3年後にすることを正式に発表した。


理由として、国王の正式な発表を待たずに第7皇子が自ら発表で有った為、国法に沿ったものでないとし、結婚ではなく婚約と訂正した。また、神官の神託によるものであるとした。(完全なこじつけである・・・。)


斉明公女という暴走車に巻き込まれた海南国であるが一緒に暴走した以上、仕方のない結果である。


逃避行の二人は、離島で神学と国法を学びながら、自給自足に近い庶民と同じように生活をしていた。


裕福に何の苦労もせずに生活していた二人にとっては、罰としか言いようがない・・・。


斉明公女・・・明明の叫び声が聞こえそうだ・・・『いやーーーーー。』と。自分で蒔いた種は自分で刈るしかないのであった。


そして、ここにも一人叫びたい者が・・・そう月涼である。


海南国王が部屋を出た後、入れ替わりにぞろぞろと女官たちが入ってきた。


「ランドール・ジアン公より遣わされました。ジアン公付き女官長アスと申します。リァンリー様は、こちらへおいで下さい。」


そう言うとすぐに月涼を取り囲んだ。


「えっ何?何?」


有無を言わさず連れて行かれる月涼に、あっけにとれる3人が部屋に残された。


月涼を連れ去った以外の女官が3つの衣装箱を運んできた。


「こちらは、本日の酒宴にて着用していただくスラーという海南国の正装でございます。お召替えをお手伝い致しますがまずは、湯殿へご案内致します。」


スラーは、食事や飲酒がしやすいように作られていて袖が少し短くなっており、帯も腰でゆったり締めれるようにした衣だ。酒豪の多い国ならではの衣と言っても良い。


そして、襟と袖には階級に合わせた色の刺繍が施される。3人は、今回の一件に貢献した者として海南国での爵位が与えられスラーを用意されたようだ。


藍は、初めての経験で恥ずかしそうにしていた。


一方、3人から引き離され、たくさんの女官たちに拉致?された月涼は、湯殿に連れて行かれ薔薇の花びらが、ぷかぷか浮かぶそれはそれは、素晴らしい浴槽に掘り込まれた。(逃げるので掘り込まれたのだ・・・)


「自分でするからほっといてくれーーー!!」


「いいえ!そんな事をしたら、私たちの首が飛びます。普段なら1日かけてお手入れさせていただくのですが、ほんの1刻しか猶予がございません。できる限りのことをせよとの命も受けております。どうかお静かになさいませ!!」


「頼む・・・。」


ぼやく月涼を女官長アスが月涼に一喝する。


「駄目です!!!」


月涼は諦めて身を任せることにした。『大おじい様め・・・恨んでやる・・・』とか『化粧など妓楼で何度も習ったし自分でできるのに・・・』とぶつぶつぼやいている。


浴槽の次は、香油でつるつるになるまでマッサージされ、気持ちが良いはずが疲れて寝てしまう始末だった。半分寝かけの月涼に女官が、喝を入れながら化粧に髪結いが始まり、女性用のスラーに着替えて全てが仕上がった時には、へとへとになっていた。


女官たちも疲れ切っているはずが、拍手喝采で達成感に満ちた顔をしている。


「なんとまぁー。お美しい・・・。この短時間でここまで仕上がるとは・・・。これならジアン公もご満足されることでしょう。」


女官長アスは、満面の笑みをこぼす。


疲れた・・・もう寝たい。そう思う月涼とは裏腹に、皆は、誉めそやす。


「さあ、宴席の間へ・・・移動致しましょう。リァンリー様は、上段、ジアン公様のと同じ場に席を設けられております。」


「えっみんなと一緒じゃないのーーー!!。」


「申し訳ございませんがリァンリー様とは、爵位が違います。後ほど交流もできますのでお席に・・・。」


ふてくされながら、案内された席まで行くと、ジアン公、アティア婦人、それにランドール家現主のフエルとその妻子もいた。フエルは、従伯父(月涼の母のいとこ)にあたる。


「久しいな。リァンリー。美しく成長したな。」


「お久しぶりでございます。フエルおじ様。」


和やかに挨拶を交わした後、国王ローデアルの合図で酒宴が始まった。


月涼は、退屈で、早く3人のところに戻りたかった。


「そういえば、到着が遅いな・・・。」


ジアン公とフエルも言い始めた。


月涼は、もしや例の件か?と思い目を盗んでコッソリ抜け出そうと試みた。


そろりと幕をよけ、席から離れようとしたときだった。


とんっと、誰かにぶつかった。


「どこへ行くのかな?私の愛しい許嫁殿。」


「へっっ?」


見上げると、とても美しいが怖ーい顔の男性が立っている。


「人違いです・・・。申し訳ございません。ぶつかって・・・。」


と言ってこそこそと逃げようとすると、すくっと抱き上げられてしまった。


「間違いではない。其方の許嫁のリュートだ。」


にっこり笑うがなんだか怖い。


抱き上げられたままの月涼。


「私、許嫁なんて知りませんが・・・。」


「其方は知らなくても私は知っているし、其方がそんなに物覚えが悪かったとはな・・・。」


ふんっ。と鼻息荒く言われてしまった。


背丈は、月涼よりかなり高く、体格は、仲達や仁軌に近いがやや細い。切れ長の目に高い鼻、長い群青の髪に紫の瞳。青華国独特の雰囲気を持つこの男性が、例の人だった。


その様子を、少し離れたところから見る3人の事を月涼は、分かっていなかった。




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