斉明公女の結婚
扉の向こう側から、数人ほどの足音が急に聞こえてきた。
謁見の間の全員が何事だろうと思ったその矢先、宰相が狼狽した面持ちで入ってきた。
「陛下、大変でございます!!第7皇子が結婚を発表されました!!」
やられた!先手を打たれた!この場にいるものすべてがそう思っても、もう後の祭りである。
大体的に発表した結婚は、すぐさま、西蘭国と北光国に伝えられた。
しかも、北光国への友好の証としての結婚であるとまで付け加えられていた。
既成事実どころの話ではない・・・・・・・。
そして、当事者達は、ハネムーンとばかりに海南国最南端の諸島へ逃避行していた。
これには、西蘭国としては、黙っていられない。北光国、海南国へ抗議書簡がすぐさま送られた。和睦も撤回しかねない状況だ。
そして、何も知らない国民だけが歓喜に沸く中、月涼たちは、海南国城内で軟禁状態となった。
海南国王に謁見の間から2つ繋ぎの客間に移され、『各国の窓口となってくれ」と言われ、それぞれが各国に書簡を出し返事待ちの間、城外に出してもらえなくなったのだ。
月涼だけは、ジアン公の監視下なら城外に出ても良いと言われたが監視下なら意味がない。
「国民に発表した以上、無かったことにはできなくなった。最初から、こちらに嫁ぐ予定に変更したとして西蘭国として、どう対峙するかだな?月涼・・・。」
仁軌と仲達が極論を言う。
「仁軌さん、北光国が新たな和睦の証として、出せるものは何でしょうか?」
「そうだな・・・もともと、痩せた土地の為、事あるごとに西蘭国の土地を奪おうとしていたぐらいだからな・・・。これといってな・・・。今、調査中の採掘現場に金が出る可能性はあるがなぁ。未知数だぞ。返事待ちだな・・・。」
退屈そうに藍がぼやき始めた。
「月~、ここから、いつ出れるんだろうな?明明のせいでえらいとばっちりだよな~。」
「そうだな~。北光国次第じゃないか?ね、仁軌さん。」
「おい、月涼、俺が何かしでかしたみたいに言うな。」
仁軌は、たじろぎながら月涼を見て仲達に助けを求めた。
「北光国は、連絡待ちとして・・・海南国は、多分、鼈甲の技術を持ち出すか専売権でなんとかと交渉してくるだろう。西蘭としては、貿易黒字で納得する?だろうな・・・。しかし、あの二人にお咎めなしっていうのも・・・。これだけ国をうごかしているんだからな。」
仲達の言葉に皆が頷くが・・・こればっかりは、なかったことで動いているだけに仕方がない。
4人が思案に暮れ、退屈な時間をすごしている時だった。
神妙な面持ちで海南国王ローデアルがやってきた。
「うちの愚息の為に、すまなかった。末の子故、甘やかしすぎた。こんな大胆なことをするとは・・・。あの二人は、離島から3年間は出れないように軍をつけ幽閉という形をとった。侍従もほとんどつけておらん。不自由な生活で考え方を改めさせる。この件は、北光国も了承した。」
「分かりました。この件、早速伝達いたします。後は、お互いの貿易での繋がりを強固にすべく国司を派遣して頂ければと・・・。」
月涼が答え、西蘭国と海南国との和解の準備段階に入れた。
「それとな、この度の一件に対して4人を労いたい。ついては、宴会を開く準備ができた。揃って参加してほしい。では、後ほど待っておる。」
そう言って部屋を出ようとした海南国王が戻ってきた。
「おっ・・・言うのを忘れておった。ジアン公も招いておる。何やら、ジアン公が其方に会わせたい者もつれて来るといっておったぞ。では、」
今、爆弾落として行きました?ローデアル陛下?月涼は、振り返って、3人を見た。
「・・・何?月、どういうこと?」
「そうだ、月涼、会わせたい者ってなんだ?まるで、話がついてそうな感じだったが?」
「えーっと・・・・・・・。多分、見合い相手?かな?」
「えーっっっ!!!!!!」
3人が白目をむくくらい驚いたのはいうまでもない。
「そうか!だから、あんなに遅かったのか!!!」
藍は拗ねて、後ろを向いている。『月のばか』とつぶやきながら・・・。
「ま、さらっと断りますよう。興味ないし。」
「だよな!だよな!月~!!!」
「馬鹿だな、藍、月涼だって一応は、女だからな。見合い相手によっては・・・」
「仁軌さんの鬼!!」
藍が半べそをかきながら怒る。
「仁軌さん・・・一応って何でえすか!!今ちゃんと女してるでしょ!!」
「うむ。今はな・・・。」
仲達も頷いていた。
「ま、それよりこの部屋から出れるようには、なりそうだな。北光と海南はこれで手打ちだしな。」
仲達の言葉に改めて4人は、ほっとした。
藍は、さっきまで、怒っていたのに宴会の食事の話をし始めていた。
「月~こないだの鳥料理みたいなのが出るのかな?」
「あーあれは、宿屋とかの庶民的な料理だからな~。今晩のは、宮廷料理だからもっとすごいと思うぞ。それに、派手な踊り子が演技するから賑やかだぞ。仲達さんも仁軌さんにも目の保養になるんじゃない?」
仁軌と仲達は、そんな月涼と藍を見ながらまだまだおこちゃまだなと思いつつ、月涼の見合いに一波乱ありそうな予感を覚えていた。
この二人の予感は、しっかり当たってしまったのである。




