表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/72

海南国入り 2

「部屋は、二つとってあるぞ。さすがに、一つの大部屋じゃ、月の着替えが大変だからな。俺は見慣れているけど。」


なんか、変に自慢げに話す藍。


「なんで、大変なんだ。」


仁軌がすっかり忘れて聞いてしまう。こういうところは、少し天然だ・・・。


「仁軌さん、月は、女性です!!」

藍がちょっと怒る。


「お、お~そうだった。そうだった。しかし、私は、涼麗としての姿を見たことがないから、ピンとこないんだよ。すまん月涼。」


「良いですよ・・・別に。私は、月涼として過ごす時間の方が遥に長いですし。この格好の方が好きですから。女人の物は、捌いて歩くのとか大変じゃないですか~・・・。それより、藍、お前はどっちで寝るんだ。?」


「えっ、俺は、月のそば仕えだから、月から離れません。」

満面の笑みで答える藍に、仲達と仁軌は、やっぱり、忠犬だ!と思うのだった。


案内された部屋で荷を解いて、それぞれ、明日の準備にかかった。


月涼は、明日から涼麗として過ごすため、衣類、化粧道具を準備したりと、他の者より忙しい。


「月~このビラビラ何?」

さっき、月涼が買ってきた着物を見て言う藍。


「あー、それは、ベールと言ってこっちの国は日差しがきついから、顔覆うんだよ。こうやって。」


「おっ見たことあるぞ。」


「そうだろ。」


などと会話しながら、藍が明日の準備を手伝うのだが、邪魔しているに等しい。


「俺はさ、月は月涼の時の方が好き。」


「だろうな。そんなことはどうでもいいから寝台整えといて、藍。一緒に寝るんだろ。」


「うんうん。腕枕してやるからな~。月。」


藍がそば仕えになって、傍らで寝るようになってからといもの月涼は、寒い時に藍の布団に潜り込んで良く寝ている。最近では、寒くなくても一緒に寝るのが当り前になっていた。


だが、何も起こらないのだ・・・・・・・。というか二人ともそんな事を考えたこともなかった。


一方、仲達、仁軌の部屋では、


「おい、あの二人いつも一緒の部屋で寝てるような会話だったよな?」


「うむ。そういう感じだな・・・。」


「仁軌は、二人を見てどう思う?」


「そうだな、ご主人と犬。」


「だよな。まさかな・・・。」


「ないな。いや、絶対ない。しかも多分もう寝てる。」


そんな会話が交わされつつ夜は更けていった。


翌朝、月涼は、涼麗姿で仲達、仁軌の前に出てきた。


「目の保養にはなるが、なんだな、月涼の方が・・・。」


「仁軌もそう思うか。私もそう思う。慣れなくてな~。話しづらい。」


「どうでもいいですけど。私は私です!!ここから、馬で2刻ほどでアナンの街です。そこで一度休憩をとった後、いっきに首都まで行きましょう。」


4人は馬に乗りまず、アナンの街へと向かった。


「昨日の寝台ふかふかだったな。月。」


「あーそうだったかな。覚えてない。すぐ寝たし。間にいた猫の方が温かった。」


その時だった。


「にゃあ。にゃあ。」


「・・・・・・・・・紛れてるよな。昨日の猫。」


ひょっこり月涼の積み荷から顔出す子猫が落ちそうになったので、それをかばおうとした月涼が落馬しかかった。仲達が馬を寄せて、月涼をひょいと抱きかかえた。


「すみません。仲達さん。いつもの格好じゃないのでバランスを崩しました。(にゃあ~)」

とっさに取った行動とはいえ、涼麗姿の月涼に思わず仲達が赤くなる・・・。


「いや、気をつけろよ。」


「あー!!仲達さん顔が赤い。だめですよ!月は!」


「お前!!ふざけるな!!」


仁軌がふんと鼻で笑う。月涼は、子猫を胸元に入れて馬に乗りなおした。


アナンの街へ着き食事を軽くとり、馬を休ませる。ここからは、かなり整備された道が続く為、馬車を手に入れることにした。この手配は、交渉事が得意な藍に任せた。


藍は、早速、馬車を探してきた。


「都合のいいのがあったよ。馬付きでなくていいならって売ってくれた。」


少々、傷んでいるが乗れないわけでもない。さっきまで乗ってきた馬を繋ぎ、荷物を積んだ。


積み荷に紛れた子猫を預ける先を探したが見つからず、結局、首都まで連れて行くことにした。


「こいつ、月のこと気に入ったんだろうな。昨日、俺たちの間で寝てからずっと月にくっついてたからな。」


俺たちの あ・い・だ???

この言葉に仁軌と仲達が顔を見合わせる。


『ないって!絶対ありえん。』

『しかし、あ・い・だっていったぞ!てことは、同じ寝台だろ?』


頭の中で会話する二人。


「お、お前たち・・・?同じ寝台で寝たのか?」

仲達が恐る恐る聞く。

仁軌は唾を呑み込んで、二人を見ていた。


ん???なんだこの空気???と月涼と藍は思う。


「いつも二人で寝てますけど・・・。昨日は、この子が間にいたから2人と1匹ですね。」


「お、おい、そういう仲に・・・。」


「えっっ仲って???何が?」


きょとんとして、全く分かってない月涼と藍。


真っ赤な顔の仲達とどっちなんだと興味津々の仁軌・・・。


馬車の中でこの妙な空気と時間が流れた後、藍が爆弾を落とした。


「月の腕枕をするのは、俺の役目だ!!ふん!」


「うん。良い枕だ。この腕は。この子猫も気に入っていたぞ。藍。」


月涼の言葉で馬車の中は、妙な雰囲気がさらに増したのは言うまでもない。


そして、子猫の持ち主である宿屋の老婆は絶叫していた。『血統書付きの猫が逃げたと・・・。』





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ