閑話 月涼の誕生
月涼(涼麗)は、趙顕徳現帝と鄭月華の間に双子で生まれ落ちた。
海南国の血を色濃く受け継いだ月涼の目鼻立ちは、しっかりしており瞳は、薄い緑で髪の色は、伽羅の様な淡い色だった。
後から生まれた月涼は、忌み子として扱われ、顕徳の護衛をしていた藩路冠に預かられた。
月涼が3歳になる頃、双子の姉、涼華が夭折。月涼は、夭折した涼華として顕徳の手に戻される予定であった。
所がこれを猛反対したのが、母である月華の祖父で海南国王末弟ジアン公であった。
ジアン公は、生まれた時点で忌み子として、扱われた月涼を引き取ると申出たが、藩氏に預けたとはいえ近くに置いておきたかった顕徳が月涼を手離すことはなかった。
藩氏の妻は、趙奏の乳母と仲が良かったこともあり、奏と月涼は、幼いころ共に過ごすことが多かった。
その頃の奏は、背が低く、目がクリっとしていて、女の子の様に可愛らしい面立ちだった。逆に月涼は、背が高く細身で、凛とした面立ちで、活発な男の子の様だった。
「奏!また、泣いてるの。虫が頭に乗っただけでしょっ!」
「だって、気持ち悪いんだもん・・・。ひっく、ひっく ・・・うわぁぁぁぁぁん。」
泣き止まないので、月涼は、いつも拳骨を落とした。
「涼麗が殴った・・・。」
「泣き止みなさい!奏!強くならなきゃダメ!」
「いいよ。涼麗がいるから。涼麗がお嫁さんになってくれたら強くなくてもいいもん。」
「ばかね。なれるかどうかわかんないでしょ。」
こんな光景が二人の毎日だった。
奏が8歳、月涼が6歳の事である。
奏暗殺の為、菓子に仕込まれた毒を月涼が誤って食した。
生死を彷徨い、命を取り留めたが後に、その時の副作用なのか不明だが年頃になっても月涼は月のものがこなっかった。
心配した祖母の流華が月涼を連れて、里帰りとして海南国のジアン公の元へ一時的に身を寄せた。
海南国の医師にも見せたが、改善されることはなかった。
帰国してから、月涼は養父の藩氏に伝えた。
「私は、女性ではいられない様です。この先、奏を守るために義父の仕事を手伝います。」
「それで、良いのか?お前は、まだ、12歳だ・・・そんなに先を急ぐほどではないと思うぞ。それに、本来の身分から考えても反対されると思うが。」
「それは、私の決めることです。」
月涼の誕生であった・・・。
奏は、今もこの事実を知らない。




