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選秀女と東宮妃 2

北光国大和殿では、国王の雄たけびにも近い叫び声が響いた。


「お前たちは!!!何をしていたんだ!?・・・。国境には、使者が着く頃ではないのか!!」


大臣が口を挟んだ。


「先ほど、早馬にて、出立が遅れたと伝令兵を送っております。少しですが時間稼ぎを・・・。」


国王は今にも卒倒しそうである。


「そなた、昨日、逃がしたのではあるまいな?」

国王は、側妃に言う。


「とんでもございません・・・。そのような国事になるような事をつぶすなど・・・。嫁ぐことが決まってからかなり言って聞かせました。それに、陛下も甘やかしていたではございませんか。」


泣きながら言う斉明の母。


斉明は、正妃の娘ではなかったが末娘で甘やかされており、かなり無鉄砲なところがあった。


宮殿でこんな大事になっているなど露知らず斉明は、先発で出立した自分自身の荷物の荷車の中に隠れ出国していた。


「いたっ。もう、狭いんだからここの中・・・。もうちょっとそっと移動できないのかしら。」


自分のしでかしている事も忘れて、荷車に文句を言っている斉明。


「此方は、これから一人で生きていくのよ!!大丈夫!何とかなるわ。」


妙に自信満々な斉明は、決められた結婚なんて嫌だと思っていた。正妃では無いかもしれない妃候補なんて、もっと御免だとも思っていた為、今回の行動に出たのである。



その頃、月涼たち一行は、無事、範安の交流拠点についていた。



「さっき、伝令兵がこれ持ってきたぞ。」

藍が文を受け取り、月涼に渡した。


「なんて書いてあるんだ?月涼。」

仲達がのぞき込む。


「お行儀悪いですよ・・・仲達さん。」

月涼が文を読みながら、仲達の頭をのける。


「なんか、変ですね。準備に手間取って到着が遅れるとしか書いていません。国がらみです・・・手間取るとは…あり得ませんよね。これ、なんかあったんでしょうね緊急事態が・・・。」


推測しながら話す月涼。


藍が思い出して答える。


「そういえば北光国側の関所が物々しかったぞ。人数も多い感じがした。」


仲達と月涼が顔を見合わせる・・・。『逃げたんじゃないのか?』二人の頭の中で浮かんだ。


「斉明様の年齢っていくつでしたっけね。仲達さん。」


「確か14か15だったな・・・。」

思い出しながら答える仲達。


月涼も仲達も思った。まだまだ、なんかしでかしそうな年齢であると。


そんな話をしながら、空腹になった藍が食事に出かけようと言い始めた。


「さっき通ったところの茶店からいい匂いしてたんだよなあ~。あそこに行こうよ。月~・・・。」


腕を引っ張って甘える藍を尻尾振って喜んでいる待っている犬の様だ・・・と月涼も仲達も思った。


「あーもう。分かった。分かった。行こう。」


月涼が言うと両手を上げてさらに喜ぶ藍。呆れてそれを見ている仲達だった。


茶店に着くと何やら店の奥でもめている。


「払う金もなく食べたってのかい!?」

店主が怒鳴っているが相手は、そんなことお構いなしで聞く耳を持っていないようだ。


「誰かが払いに来ますわ。そのうちに。」

そう言って残っているものを食べ終わり、さらに注文しながら文句まで言っている。


「もう少し、味が濃くてもよくってよ。この肉料理・・・。」


店主が机をたたきながら言った。


「払うもん払ってから追加注文しな!!」


「何を言っていますの?そのうち誰か来ます。此方は、お金など持って歩いたことなどございません。」

そう自信満々に答える・・・少女が目の前にいる。


「あっ・・・・・・・・・・・。だよね仲達さん。」

「だな・・・・・・・・・・・。月涼。」

「えっ・・・・・・・・・・・。誰?」


二人の答えに不思議そうに反応する藍。


「藍、一旦ここを出よう。ちょっと相談してからだ。飯食べるのは。」

月涼が言い仲達が藍を促して外に出た。


「仲達さん、あの少女。そうですよね?」

月涼の問いにそうだろうと頷く仲達。


「どうします?見て見ぬふり?しときます。」


「そういうわけにもいくまい・・・もともと出迎えに来ているのだから。」


「ですが、一人このまま連れて行くと誘拐かとも思われますよ。」


「それもそうだな・・・どうする?」


そんな二人の会話が続いているとき藍が大きな声で


「あー!もしかしてあの子が斉・・・」


月涼が藍の口をふさいだ。


「バカモノ!!!分かったからって声にしてどうすんだ!!!」


仲達も藍に拳骨を落とした。


「痛い・・・。」

さっきまで尻尾振ってた犬が、尻尾を撒いて耳まで垂れてしゅんとしているかのように反省する藍。


くくくっ笑いをこらえながら仲達が言った。


「お前はいつも表情豊かだな~月涼がそばに置いているのが分かるよ。」


「どういうことですか?」


月涼と藍が口を揃えた。


「それは置いといて、ここに公女がいれば大事になるぞ。お互い穏便に済ませたい。国事だしな。噂には尾ひれがつきやすい。助けるか?月涼?」


「そうですね・・・このまま放置したいところですがね。そうもいかないですね。」


偶然を装って、とにかく知らないふりで助けるとしますか。


「だな・・・。」


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