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選秀女と東宮妃

1年後の禅譲にあたり、宮中も市中も活気づいていた。


東宮妃選抜の為に選秀女が行われると公示されたからである。


この為、この選抜が行われている間は、平民も婚儀が行えないようになる。


選秀女は、平民女性でも宮中に出仕できる機会にもなり良家は、宮中での婿探しができると躍起になる。


奉公の期間は3年と決まっており、その間、里帰りは1年に1度で余程の事情がないと宮中から出れない。


その為、案外嫌がる者も多い。


まぁ、そんなことお構いなしに両親に勝手に申し込まれるのが普通だった。


さすがに、東宮妃候補になれるものは、そこそこの地位の家柄の者なので選秀女といえど特別枠でご招待された女子たちだ。一般枠は、皇帝の面通しなどない・・・・・・。


稀に、下女から側室になったりするが、侍女になるのさえ難しいので本当に稀である。


乾清宮西の間で奏の声が響いた。


「陛下!!どうして、藩涼麗が候補から外されているのですか?」


藩涼麗・・・月涼のことである。

奏は正式に妻にできると思っていたらしく候補にすら入っていないことで直談判に来ていたのだ。


「あちら側から断りだ・・・。仕方あるまい。無理強いもできぬ。」


陛下は、奥歯に挟まったような言い方で口をつぐんだ。


皇后がわざと口を挟んだ。


「東宮が嫌われるようなことをしたのではないですか?」



「とにかく、もう一度・・・涼麗に話します。選抜候補決定はまだしないでください!!」


奏は、陛下に言い放って、乾清宮から出て行った。


「帰ったから出てきなさい涼麗…。」


皇帝の西の間の奥寝所から出てきた月涼。


「あれで、良かったのか・・・。」


月涼に諭すように言う皇帝。


皇后がふっと言う。

「涼麗・・・その姿で見ると月華がそばにいるようね。」



「辛くなるだけです・・・。今のままで、大丈夫です。選秀女候補が決まるまで東の砦に向かいます。」

月涼は、普段と変わらぬ声で言いその場を去った。


月涼が帰った後

「陛下・・・あの子が不憫でなりません。いっそのこと異国へ留学に出しては…。」


皇后が切に言う。


「朕も同じ気持ちだ・・・。だがいつかは乗り越えねばなるまい。逃げても解決はせぬ。本人が一番知っているからこそ、今のままで良いと言っているのだからな・・・。」


奏は、この後、何度も月涼の屋敷へ行ったが月涼に会える事は無かった。


結局、月涼が候補者に入らぬまま選秀女が始まった。


「月~都に帰らなくて良いのか?選秀女の仕事あるって言ってたじゃん。」


「良いんだよ。許可もらったから。それに、始まって、少したってから忙しくなるんだし。今はここで、残処理。」


毎日書簡を燃やしている・・・。あの後、出てきた不都合な書簡などである。内乱の出来事は皇室としてもあまり記録に残したくないらしい。


「それにさ、涼麗としてだったら、妃候補にも挙がるんじゃないのか?藩路冠と言えば、名だたるお方だぞ。その娘なんだからさ。」


痛いところついてくる藍に月涼も少し困った・・・。


「お前だから言うけどさ・・・なれないんだ。なりたくてもな・・・。」


「ふーん。月がそういうんだったらそうなんだろうな。」

自分から聞いておいて簡単に納得する藍。


月涼は、気を遣わずに素の自分でいれる時間を簡単に作ってくれる藍のこういうところが好きだった。


その晩、皇帝からの使いで仲達がやってきていた。


月涼、藍、仲達は久しぶりの再会で月見酒を始めた。


「仲達さん久しぶりだね~。」

藍が楽し気に声をかける。


「3人で飲むのは妓楼で暮らして以来ですしね。」


等と言いながら和やかな酒盛りになっていた。


酒盛りをしながら、陛下からの任務について仲達が言った。


「最有力候補は二方に絞られたよ。北光国公女 李斉明様と 太夫の息女秀蘭児様だ。今回、陛下がここに使わせたのは、月涼と共に斉明公女を国境まで出迎えに行くようにとの事だ。」


少し仲達は、月涼に対して複雑な心境であった。


今回の内乱の後、東宮の近衛以外に皇帝の密使もすることになった仲達は、月涼の本来の身分を皇帝から知らされていたのである。


もちろん、奏の気持ちもなんとなく今回の件で知ってしまった。


「そうですか。どっちの格好で行きましょうかね…。」


冗談交じりに月涼が言う。


「月涼、ちょっと酔いすぎだ・・・。明朝、範安に立つぞ。」


「範安ですか?楽しみ~!!あの街、うまいもんが揃うって有名になってますよね。」


藍は目をキラキラさせて喜んでいる。


仲達は頭の中で思った『藍、良いなお前って』と。


「藍・・・膝かせ!」


そう言ったかと思うと月涼は、藍の膝でそのまま眠ってしまった。


仲達が、寝所まで運んでやり、藍に伝えた。


「今日は、そっとしておけよ・・・。」


「うん。分かってる。月、ちょっとだけ・・・。明日はいつもの月だ。うん。」

藍がそういい。仲達も頷いたのだった。


翌日、良く晴れた朝、月涼、藍、仲達は、国境の街範安へ向かった。



その頃、北光国大和殿


「陛下、斉明様をお迎えに上がりましたが・・・。斉明様が見当たりません。」

護衛部隊隊長が女官からの知らせを国王に伝えていたところだった。
















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