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内乱の結末と和睦 2

現帝と皇太后の密会での約束で動き出した宮中機密事項処理は、最終的に左丞相の内乱に持ち込まれてしまっため書簡の存在は、またも宙ぶらりんになってしまった。


この事件で対外的に利があったと言えば北光国との和睦であろう。


離将軍(仁軌)が北光国へ帰化し劉将軍として生き延びたおかげで和睦がすんなりと進んだからである。


和睦内容は、貿易でのお互いの関税を食物に対してはかけず、その他の物資は譲歩しあって話し合いで年毎に関税をかけること。水源確保のための設備への補助人員を送るなどの条件等で折り合いがついた。



国境にお互いの物流拠点の街を建設することも盛り込まれた。これにより、同盟国として、通府が簡素化され行き来が盛んになるようになる。



この書面をもって、仁軌は北光国への帰路に立つ。


「世話になったな、仲達、月涼。」

仁軌が出立の準備をしながら言った。


「なんで、俺がいないんですか!」

と藍が膨れっ面で言う。


「ははは。おっそうだな藍。ありがとう。」

仁軌は笑い飛ばした。ここに滞在中、仁軌と仲達は藍をからかって楽しんでいたらしい。


奏は、内乱の後処理に追われて妓楼に足を運ぶ暇がなく輪をよこして文句だけ言ってきていた。


「皇太后・・・安里様は、ほとぼりが冷めたころに仁軌様のもとへ送り届けます。」

月涼が仁軌に言った。


「そうか。公女の事は私に任せよ。侍女と共にな。あちらで迎える準備もしてから来たからな。」

仁軌は、優しい目で公女を抱きながら言った。


「そういえば、あの時すり替えられて連れてこられた赤子は?どうなったんだ?」

藍が思い出した。


「あの子の親を探したんだがすでに殺害されていたんだ…。安里様が公女の代わりに育てておられるよ。乳がよく出て困っていたのもあってね・・・。ということでですね。仁軌様もう一人子が増えても良いでしょうか?」

上目遣いでお願いするように聞く月涼。


「そうだな。仕方あるまい。乳まで与えた子を捨て置けないであろうしな。」


仁軌は、安里が来るのを楽しみにしている様だった。


崔寧と面立ちと声がよく似ているのもあったからだろう。


帰路に就く前に何とか一度だけでも、対面をしたいと安里の出宮先の菩提寺を尋ねた時かなり動揺していたのもそのせいだ。


「そうだ!! 月!! あの時の書簡とか取りに行かなくて良かったのか?」

藍がさらに思いだして言う。今のところ、危ないことが無くなり聞いても良いと思えてきたのだろう。


「あれなぁ~、全部処分されたよ。見つけたの全部、灰になったよ。皇室の汚点でしかない書簡だしな。それに、後の代でまた騒動が起こって蒸し返されないようにって陛下からお達しが出たんだよ。」


あれほど頑張って探して、命かけて持ち出したのに……。まぁ、私の盾になって役に立ったけどな・・・あの時担いでなかったら、矢が直接刺さってたし・・・と頭の中でぼやいていた。


「藍、これからの事なんだけどなぁ。今回の件は片付いたけど、当分、奥司書で出仕になったんだ。これ以上要らぬものが出てこぬようにと。(隠蔽だな)陛下が1年後に禅譲するとお触れを出したからその準備に駆り出されることになった。藍はどうする?一緒に出仕できるように手配できそうだけど・・・・・・。」


藍は、ちょこまか動き回るほうが好きだから、雑用の方が向いてるがと思いながら聞いてみる月涼。


「うーん。俺、じっと座ってるの嫌いだしなぁ。月のそば仕えで、月の家で雇ってもらえないかな?へへへ。」


藍からの納得のいく回答が来た。


「お前、欲が無いな~。門番から司書配属なら、出世じゃないか?」

仲達が口を挟んだ。仁軌も頷いている。


「俺は、庶子で手習いも独学だ。以前の出仕先で月と出会って、いろいろと教えてもらってから随分変われたけど、まだまだだ・・・。だから、降ってわいたような昇進に飛びついても身の程知らずだと思う。」


「ほーお前、ちゃんと考えてんだな。見直したよ。」

仲達も仁軌も関心していた。


「なんだよ~ちょっと馬鹿にしてるだろう!!」

膨れっ面の藍だったが、皆が心配してくれているのはよくわかっている顔でもあった。


「じゃあ、藍、荷物まとめて置けよ。一緒に帰るから。」

月涼は藍を連れて帰ることにした。


明朝、日も登らぬうちに出立が決まっていたので、今日で仁軌とはしばらくお別れになる。


仲達もなんだか寂しそうにしている。


月涼は、仁軌に最後の質問をした。


「あの短冊の唄は、どちらが書いたものですか?『東風吹く世に青海の華咲き相まみえん・・・西寧美』」


「あれは、私だ。最後の文字が消えていてたから崔寧が書いたように思われていたが。令妃に送る際に入れておいた。故郷に帰ってまた暮らそうという意味で書いた。」

仁軌は、遠くを見つめるように話した。


「では、返歌は、青い箱にありましたか?」

月涼が見つけた青い箱の事である。


「ああ。」

にっこり笑う仁軌だった。


「短い間だったが、いい時間を過ごせたよ。次は、北光国で会おう!」


お互い握手をして、別れを告げた後、妓楼での仁軌、藍、仲達の生活は終わりを告げた。


この後、藍と二人きりで帰る馬車で、藍からの質問攻めにあったのは言うまでもなく・・・。


「月、なんで?名前がたくさん有るんだ?どれがほ本当の名前なんだ?」


から始まったのである。


「俺、すごい我慢してたんだ。まだだ、まだ、聞いちゃダメだって!!」












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