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内乱の結末と和睦

内乱は、左丞相の謀反として処理され一族は、全て、平民への降格とされた。左丞相自身は、貼り付けの上、断頭になり見せしめとして城下で晒された。皇太后は、利用されたとはいえ離宮で起きた内乱であり責務を全くとらないという事にするのは難しかった。さらに、謀反人の娘でもあるからだ。


「内乱であるが故、事は大きくするわけには行かない。諸外国に知れ渡らせずに済ませたい。」


陛下が静かに諸侯・六省に朝議で言う。


「皇太后には、出宮していただきその余勢を過ごしてもらうことにする。」


大臣達が口をそろえて言った。


「それでは、甘すぎます!!」


「これは、先帝の遺言でもある。」


陛下がさらに言う。


『先帝の遺言』という言葉に朝議は、大いにざわついた。


陛下が目配せをすると太師が前に出て上訴文を読み上げる。




「陈安里(皇太后)は、皇帝に上訴する。父である陈平易の起こした罪は許しがたき事であり死をもって償うことである。我は、ここに先帝の遺書を皇帝に差し出し廃位を願い出る。また、我が生きることは先帝の願いである故、死をいただく事は先帝の遺言に反することになる。」


太師が読み上げた後、さらに、先帝遺言が読まれ大臣達にその遺言の審議をさせることになった。


遺言は2通あった。1通目にはこう書かれていた。


『朕の死後、いかなることが有ろうとも皇后安里に死を与えてはならない。朕の死後出産する皇后安里の子は紛れもなく朕の嫡子である。この遺言の開示は、皇后安里に死が迫った時もしくは、朕の嫡子が疑われた時に開示せよ。』


そして、2通目である。


『1通目の遺言が開示された場合のみこの遺言を開示せよ。朕の嫡子は、即位させず朕の兄である李奏を即位させよ。李奏に子供が出来なかった場合のみ皇位継承権を与えよ。』


先帝遺言は必ず履行されなければならないこととなっており大臣達は従わなくてはならなかった。この遺言により奏の即位反対派の意見は完全に抑え込まれた。


時は、内乱前にさかのぼる。


太師が陛下に謁見していた。


「皇太后様よりご相談が有りました。陛下…。」


「して、あちら側からの相談とは?珍しいの。」


陛下が怪訝な顔で答えた。


「それが、左丞相謀反の計画の件でございます。穏便に消し去りたいと仰っております。」


太師も用心しながら答える。


「皇太后は、父親を売ったか?保身のため・・・。口では何とでもいえる。腹の子の件もある。」


陛下は本当だろうか?と半信半疑であった。


「皇太后は、隠居したいとお申し出です。お子様とご一緒に宮外へ出たいと。それから、崔寧皇后様の死の真相と当時、廃妃の上訴書簡を探し出してほしいと言っておいでです。それをもって、父親の謀反をあばいて、失脚させてほしいとの事でございます。」


太師の言葉に陛下がさらに聞く。


「だが何をもってそれを信ずる。腹の子の件は?」


「その件も直接お会いして陛下と話がされたいと、お見せしたいものもあるとの事です。」


太師も事が事だけに慎重に話を続けていた。


「表立って動けぬな・・・。宮中と離宮どちらが動いても目立つ。あそこで待つか・・・。妓楼に連絡しておけ。太師。」


かくして、月涼に上訴文を探す命令が東宮を通して下ったのである。


陛下との密会で皇太后は、これまでの経緯と自分は謀反に加担することはない事。そして、先帝の遺言の一部を見せたのである。


公女については、二人の努力が仇となり先帝の子ではないと噂が先行した結果であった。


二人は、子供を作るつもり自体が無かったのである。


病で長く生きられないのを知っていた先帝は、無理やり嫁がされた安里の立場を不憫に思っていた。


それに、安里との間に子供が出来れば必ず騒動が起こるだろうとも思っていたのだ。


だが、堕胎薬を飲んでいた安里に子が出来たのだ。一度は流れたと思われたがかろうじて助かっていた。


その一件で、妊娠月数がおかしいと思われたのだ。


できないように隠し続けた二人にとってつらいが嬉しい出来事となったと同時に未来への不安に苛まれた。


皇太后は、先帝が亡くなるまで献身的な看病を続け亡くなる直前にその遺言は、二人きりの時に渡されたのだった。


この話を聞き陛下は、皇太后に言った。


「皇太后様のお話を信じたとしましょう。だが、左丞相のことだ皇太后様を犠牲にしても謀反を起こすと思いますが・・・起こした場合、その立場でどう責任を取るつもりですか?」


「廃位すればよい。もともとこの地位等要らぬ。それに、血筋を戻すことは、先帝の願いだからだ。私は、先帝との・・・腹の子供さえ無事に育てられたら良いのだ。先帝は、自分が正当な血筋にあたらないことも全て知っておられた・・・。」


皇太后がこらえながらさらに言う。


「当時5歳の私は、父の策略など知る由もなかった。伯母上は、離将軍と仲睦まじいのになぜ、皇后に即位したのか?不思議だった。先帝から事実を知らされた時に愕然としたのだ。父の残酷さを・・・。私も価値が無くなれば簡単に捨てられるのだと・・・。」


そこまで言うと皇太后は泣き崩れた。


陛下は、信じるしかなかった。いや、信じたいと思った。



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