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ある王の話

作者: 五月

【ある女騎士の話】を読んでからの方が分かり易いかもしれません。

今まで零した全ての言葉を信じていたと言ったら

お前は嗤うだろうか?


初めて出会ったあの日から

お前を拾った瞬間から

俺の世界が色付き始めたことを

お前は知らないだろう




その夜

隣国との条約の締結を祝ったパーティーも終わり

心地よい疲労と高揚感の中で

ふかふかの椅子に腰掛けながら

ワイングラスを傾ける


窓から月が覗いている

…なんとなく嫌な予感がした

無事に条約を結ぶ約束を取り付けることはできた

だが、どこか違和感が絶えない


隣国の使者の貴族達を

どうにも好きにになれないからだろうか?


あいつもあの連中が好きではないようで

あまり外では表情を出さない

あいつにしては珍しく

何度か眉間に皺を寄せていた


女騎士というのは世界的に見ても珍しく

好奇心の滲み出る眼差しには

あいつはもちろん

俺も苛立っていた


さらに俺付きの護衛もこなしているあいつには

馬鹿な連中の間で

下世話な噂が流れたことも何度かあった


あいつを異性として意識したことはないと

言い切れる自信があるし

俺はあいつを愛人や妻にするぐらいなら

悪魔と契約する方がましだと思っている


そんなことを考えていると

突然廊下が騒がしくなった


なにが起こったのかはすぐに分かった

軍師がこの部屋に飛び込んできたからだ


【隣国の使者が女騎士に殺されました!】



誰が殺された?

条約を結んだ隣国の使者が

誰によって?


この国に一人しかいない女騎士によって



軍師に何か指示を出し

机を思い切り殴った

涙が止めどなく流れ

怒りに目の前が赤く染まった


ガラスの割れる音がする




事が起きてからしばらくの間

あいつと会うことは出来なかった

そりゃそうだ

あいつの罪名は『王への反逆』

そう簡単に会える筈がなかった


俺としても今あいつに会いたいとは思わない


応援してくれたのだ

夜遅くまで案を練っていると

いつも丁度良いタイミングでお茶を運んできてくれたり

俺が悩んでいると

誰よりも早く気付いて一緒に悩んでくれた


信じられないのだ

あいつが俺を裏切ったことが

そして、

あいつに裏切られた自分がとても情けなかった




あいつが捕まってから初めて会いに行った

あいつは何も言わない

俺も何も聞かなかった

ただただ見つめ合っていた



あいつの真っ直ぐな瞳が忘れられない




気が利き忠義心の厚い俺の一番の部下

博識で気の強い俺の唯一の親友


俺はお前の相棒になれなかったのだろうか










昼も過ぎ、闇の気配が色濃くなった頃

その知らせは俺の耳に届いた


【反逆者が脱走した】


かなりの数の兵を捜査にあたらせたが

結局、あいつが見つかることは無かった


その事を俺が密かに嬉しく思っていたことは

誰も知らないだろう




そんな中広がる戦の魔の手

あいつの存在は

俺以外の者の中から消えていった

国は 俺は 大いなる戦いへと身を躍らせたのだった


結果は散々

周りは敵兵に囲まれ兵力も最初の約2割にまで落ち込んだ


我らはこのまま滅びてしまうのだろうか?


国は絶望感に包まれる




俺がふと顔を上げると、目の前に

かつて親友だと思っていた女の顔があった



【…とうとう俺も終わりか。嫌な幻覚が見えるぜ】


【素敵って言ってちょうだい。それに私は貴方を終わらせたりしないわ】


【よく言うぜ。俺を見捨てていったのは何処の誰だよ】


【私の話をきちんと聞かなかったのは貴方でしょ】


【……本当にお前なのか?】


【信じるのは貴方であって私じゃないわ。しっかりしなさい。まだ終わらせないわよ】


【…………悪魔か、お前は】


【勝利の女神よ。お馬鹿さん。さぁ立って!全てを諦めるのはもう少し頑張ってからにしなさい】


【もう十分頑張ったっての】


【貴方まだ最終手段使ってないじゃない】


【……アレはお前がいないと使えない】


【…………誰か変わりの人間を置けばよかったのに。無理じゃないでしょう?】


【お前じゃないと意味がない。俺が唯一と決めた相棒はお前だけだ】


【…まだその言葉を言って貰えるとは思わなかったわ。

 私を跪かせることのできる、ただ一人の私の主。

 私の全ての力をもって、この状況を覆してみせましょう。

 さぁ、我が君。ご命令を】


【俺に勝利を】


【この命に換えても】









後にガーデスの奇跡と呼ばれる大逆転が起こるまで

残り数時間




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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして 小説を読ませて頂きました。将来性を感じる作品だと思います。また伺いますね。私も小説を書いているので、読んでいただければ幸いです。http://syosetu.com/g.php…
[一言] >今まで零した全ての言葉を信じていたと言ったら >お前は嗤うだろうか? この文書がとても素敵です。もっと膨らませてみると面白いと思います。ですが、あえて物語を二つに分けた意味がわかりません…
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