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ep9 2人でダンジョン

名前の表記でリオンとシルヴァスの区別を分かりやすくする為、ルルカの鎧着用時のリオンの呼び名をシルヴァスその他はリオンで表記します。

ダンジョン『ムジナ』は縦横共に広く、鎧を着たリオンでも楽に歩く事が出来、武器も思うがままに振るう事が出来る。道のりは何度も入った事のあるルルカが案内してくれるので迷う事無く進む事が出来る。すると前を歩いていたルルカが急に足を止める。



「どうしたルルカ? 何かあるのか?」



「はい、あそこにある横穴には魔物達が巣を作り潜んでいる事があるんです」



「そうか」とリオンが理解していると目の前の横穴から魔物がぞろぞろと出て来た。『ゴブリン』の群れだ、大きさは子供と同じぐらいでおそらく冒険者から奪ったであろう形が違う防具や武器を身に着けている。数にして10体のゴブリンがリオンの前に立ちはだかる。



「ルルカ、岩陰に隠れていろ」



「はい!」



ルルカが岩の後ろに駆け出すと同時にゴブリン達がルルカに襲い掛かる。すると、目の前に刃が突然現れ勢いがついたゴブリン数体が胴体から切断された。後ろにいたゴブリン達は何が起きたのか分からず動揺している。



「勘違いするなよゴブリン供お前達の相手はこの私だ!」



「キギャー! ギャギャー!」残りのゴブリン達がリオンに一斉に攻撃を仕掛ける。槍や剣の多彩な攻撃を仕掛けるがシールドで的確に捌くと1体ずつゴブリンを倒していき、10体いたゴブリンは全て亡骸と化していた。



「ルルカ、もう出て来ても良いぞ!」



岩場に隠れていたルルカがひょこりと顔を出すとリオンの所に駆けて来る。



「凄いです!これだけのゴブリンの大群を1人でしかもこんなに早く倒してしまうなんて!」ルルカが目を輝かせてこちらを見上げてくる。



「そうか? これぐらいの敵ならどうという事ないと思うが?」



「おー流石です! あっ採取は任せて下さい!」



ルルカは腰に付けていたナイフを取り出すとゴブリンの死骸から慣れた手つきで素材を手際良く捌いていく。リオンがするよりも早い時間でゴブリン10体分を終了した。



「ふぅー終わりました」ルルカは自身が背負っていたリュックに素材詰め終わると勢いを付けて背負いリオンの元に小走りで近づいて来た。



「ありがとう、おそらくここにはもう魔物はいそうにないからここで少し休も休むとしよう」



「はい、分かりました!」



リオン達は座るのに適した岩に腰を下ろす。すると、ルルカがリュックの端のポケットから黄色いチーズを取り出す。



「シルヴァスさんも良かったらどうですか? 美味しいですよ」ルルカが取り出したチーズを2つに割りリオンに勧める。



「いや、私は大丈夫だルルカ君が食べなさい」



「そうですか? なら頂きます」ルルカはチーズをひと齧りする度に「う〜ん」と声を出しながら美味しそうに食べている。まるで小動物を見ている様でなんだか癒される感じがした。



「そういえば、シルヴァスさんさっきゴブリンを倒す時に剣の刃が伸びていたんですけどあれは何なのですか?」ルルカはチーズを食べるのをやめて思い出した様に聞いてきた。



「えっ!?」チーズを食べるルルカを微笑ましく見ていた所に急に思いもしない内容の質問をされてリオンは何て説明するか脳を回転させる。そんな姿をルルカは小首を傾げて見ている。



「あーあれは我が一族に代々伝わる固有の魔法で自身の武器の形を自在に変化出来るのだ」



「『固有魔法』!? 凄いですそんな魔法ルルカ聞いた事ないです!」



『固有魔法』自体とても稀なものでリオン自身も見た事がない。魔法学校にいた頃に書物庫で読んだ本に記載されていたのだ。この鎧を着ていなければ使用出来ない所だけ見れば固有という意味も間違いではないかもしれない。



「もしかして道中の分かれ道の時にあまり強い魔物と出会わなかったのはそれもシルヴァスさんの『固有魔法』何ですか?」チーズを食べるのを忘れ目を輝かせて立て続けに聞いてきた。



確かに『熱源探知』で魔物の位置を確認していたがこのまま話し続ければいずれボロを出しかねない。そこで話題を変えるべくリオンの方からルルカに質問を投げかける。



「あ〜ま〜所でルルカさっきの手際とても良かったぞ、どうして冒険者の荷物持ちをしている?」



リオンの質問に目を輝かせていたルルカの目が曇り沈んだ表情になる。



やばい、採取の手際を褒めつつ話題を変えようと思ったが地雷を踏んでしまったのか?



「すまない、踏み入った事を聞いてしまったか?」



「いえ、気にしないで下さいルルカは小さい頃に両親を亜人と人間との戦争で亡くしたんです、孤児になったルルカはこの都市に流れ着いて生きてく為にこの技術を身に付けたんです」



「そうだったのか」亜人と人間との戦争についてはリオンのいた村で話しだけは聞いた事はあった。亜人は魔物とは異なる存在で優れた肉体能力を用いて独自の文化を築いていた。しかし、人間が新たな領土を求め亜人のいる土地に侵攻したのだ。優れた肉体能力を持った亜人達だが、人間達の数の多さと智略により人間に敗れ、亜人達は北の端の土地追いやられてしまったらしい。



その後、休憩を終えてもうひと狩りしたリオン達は下山してギルドに向かった。ギルドの前に着くとリオンはルルカに素材の換金を任せてそのままギルドの前で待っていた。ギルドの建物の外観と相まって鎧を着た状態のリオンはまるで城を守る番兵の様になっていた。



それから大分時間が経つがルルカが戻る様子が無い。心配になったリオンがギルドの扉を少し開けて覗き込むと想像した通りの状況になっていた。もちろん悪い意味でだ、ルルカが以前一緒にいた男達に絡まれていた。



「おい、ルルカ今日はよくもばっくれやがったなお前の性で稼ぎが減ったじゃねえか!」



「何言ってるんですか、あれから何の連絡も無かったですし、それにお酒の匂いがしますしさっきまで飲んでたんじゃないんですか?」



「うるせー! 迷惑料としてこの金を貰うぞ」男がお金の入った袋に手を伸ばそうとしそれをルルカが振り払う。



「駄目です! これはシルヴァスさんのお金です渡せません」ルルカがお金の入った袋の前に立つ。



「この、ふざけんじゃねえぞ!」男は右腕を振り上げる。ルルカは目をギュッと瞑るが何も起こらず男の悲鳴が聞こえてくる。



「ぎゃ〜!」ルルカがそっと目を開けるとリオンが男の振り上げた腕を掴んでいた。



「どうやら懲りていない様だな」冷静でありながら怒りの感情のこもった声に男が「お前はあん時のギャ〜」男が言い終わる前に更に強く掴み腕を高く持ち上げ男の足が地面から浮かび上がる。



ふともう2人の方を見ると、酒で赤くなっていた顔が青褪め酔いが冷めている様だった。



「さてどうやらお前達は口で言っても分からない様だな、なら直接体に刻み込むしかないか」するとボキッとまるで木の枝を折る様に男の腕を折り、男の悲鳴がギルド内に響き渡る。



「次に何かした時はお前達の首をへし折る、2度と彼女に手を出すな」リオンが腕を離すと、男達は一目散にギルドを出て行った。



「ルルカ大丈夫か?」



「はっ、はい大丈夫です」



周りがザワザワしている中1人の男性が現れる。「何事ですか?」40代ぐらいの長身で腰までのばした金色の髪を1つに結っている。人混みの中でも頭1つ出ていてとても目立つ存在だ。職員の1人が慌てた様子で近づき状況を説明する。すると長身の男性がリオン達に近づいて来る。



「状況は聞かせてもらいました、私はこのギルドでマスターをしていますクライドと言います、この度はこちらの対応が遅れてすいません」ギルドマスターのクライドは謝罪を述べると軽く頭を下げる。その光景に周りの冒険者だけでなく職員の方もザワザワし始める。



「いえいえ、此方こそ皆さんに不快な思いをさせてしまったので謝る必要はありません」



「そうですか、あなたが相手をした彼等にはほどほど手を焼いていまして」



「と言うと?」



「彼等はこの『アーシヤス』の周りの山々を拠点にしている山賊集団の構成員なのです。集団の名は『黒螈団』《コクゲンダン》構成員の数は不明で居場所も日によって変えている為、足取りが追えないのです」と言うとクライドは深く溜め息をつく。



「そうですか、一応釘を刺しておいたので流石に彼等ももう手出しはしないでしょう」



「なら良いんですけどね」クライドは再び溜め息をつく、この人凄い苦労人だなとリオンは同情していた。



その後ギルドを出たリオン達はしばらく歩き人通りの少ない所に来るとルルカが「これを」と言ってお金の入った袋を出す。2人分で分けてあったが、明らかにリオンの方が多かった。



「確か二等分するという約束だったと思うがこれは…」



「はい、でも今回シルヴァスさんの活躍が大きいですし、さっき迷惑を掛けてしまったのでその分足しましたなのでどうぞ」多く入った袋をリオンに差し出す。



「そうか分かった」というとリオンは少ない方の袋を取った。「えっ、どうして」と困惑するルルカに対し「迷惑を掛けてしまったのは私も同じだ、それにギルドマスターにはああは言ったが、奴らが復讐しに来る可能性も無いとは言えない」



「それでもこの量は…」



「それは今回の給金と先払い分だ、私は後5日程この都市に居る予定だ無論ダンジョンにも行く、その時にまた荷物持ちを頼みたいと思うが駄目だろうか?」



「はっはい!大丈夫です、よろしくお願いします!」

ルルカは満面の笑みで答えた。



しかし今回の事がこれから起こる事態の序章に過ぎない事をまだリオン達は知る由もなかった。

9話を読んで頂きありがとうございます。感想、誤字報告いつでも受け付けています。

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