ep7 新天地と出会い
生まれ育った村を出たリオンは西の方に向かっていた。特に目的は無く自分を知る人のいない所に行きたかった。
道中、百姓の荷馬車に乗せてもらい立ち寄った街では、野草で稼いだお金で宿に寝泊まりしていた。
そんな生活を2週間程していた時、リオンは中型都市『アーシヤス』に辿り着いた。周りを山々に囲まれている都市の周りには10m程の壁が建てられていて、砦の様な作りになっている。
『アーシヤス』に入ると多くの出店が軒を連ね、新鮮な野菜や雑貨等が売られている。『サキニラ』も大勢人がいるが、比にならない多さである。人混みの中を揉みくちゃにされながらもようやく目的の宿に到着した。
中に入ると、1階は広間になっていて円卓の机が数台と椅子が置かれていてそこでは料理を食べたり酒を飲む人達が集っていた。奥に進むとカウンターがあり20代前半の女性が立っていた。
「いらっしゃいませ、宿屋『陽だまり』へようこそお泊まりですか?」
「はい、7泊でお願いします」
「かしこまりました、1泊銅貨5枚なので7泊で銅貨35枚です」
この国のお金は金貨、銀貨、銅貨の3種類で価値はそれぞれ10倍の価値があり、銅貨10枚で銀貨1枚の価値があり銀貨10枚で金貨1枚の価値があるのだ。この都市での宿屋は1泊は大体銅貨7〜8枚なので、今回泊まる宿屋は安い方なのだ。ここに来る道中におすすめの宿屋を聞いていたのだ。
銅貨を35枚払い、2階部分に案内される。2階に上がると真ん中に廊下があり、廊下を境に6室の部屋が均等に並んでいる。角部屋に案内されドアを開けると縦に開けていて、小さなテーブルとそれに合わせたような丸椅子が1脚とベッドが1台置かれている。格安なので部屋自体はそれ程広くないが、リオンにとっては十分な広さだった。
荷物を置き一息つくと宿屋を出てギルドに向かう。『アーシヤス』のギルドは『サキニラ』のギルドの2倍近くの大きさがあり、建物の周りは円柱の柱が並び壁には人物や魔物の彫刻が彫られている。
ギルドに入ると冒険者達で賑わっていた。カウンターに向かい男性職員に話し掛ける。
「すいません、ここの周辺の地図を貰えますか?」
「はい、地図ですね……はいこちらになります」
男性職員が棚から丸められた紙を出すとリオンに手渡す。その地図には『アーシヤス』を中心に周りの地形について書かれている。山々に囲まれているので地図がないと知識が無い人は必ず遭難するらしいので地図を貰う事は必須なのである。
『アーシヤス』を出たリオンは、地図をもとに山道を歩いて行く。途中で道が複雑に分かれている部分がありその都度地図を確認しながら進んで行く。そして目的地のダンジョン『ムジナ』に到着するする。
山々の中に急に現れる洞窟、それは山をくり抜いた様にぽっかりと穴が開いていて見ていると吸い込まれそうになる。到着した時点で日が暮れ始めていたので今日は帰り明日改めて来ようと戻ろうといた時ダンジョンの入り口から騒ぐ声が聞こえてきた。
「くそ、お前がもたもたしてる性であまり稼げなかったじゃねえか!」
「すいません、でもそれは皆さんが雑に魔物を倒すんで素材を取れる部分が無くて探すのに時間が掛かるんです」
男性数人と少女が何やら揉めている様だ、男性達は皮鎧を着た冒険者で少女はフードが付いたコートの様な服を着て背中に大きなリュックを背負っている。
「チッ、ほら今日の分だ!」
男性の1人が少女に銅貨を1枚投げ渡し、少女が慌てて受け止める。
「約束が違います! 銅貨5枚の約束のはずです」
「なんだと! お前がちんたらしてた性で稼ぎが少なくなったんじゃねえか、貰えるだけありがたいと思え!」
「で、でも」
少女が反論しようとすると、腹部を男性に蹴られ地面に倒れて少女は腹部を抱え震えている。
「立場を弁えろよ、俺達が雇ってやんなきゃテメエみたいな薄汚えガキ誰が雇うって言うんだ! これに懲りたら2度と俺達に逆らうんじゃねぇ、分かったか?」
少女は痛みを堪えながら顔を上げると男達を睨み付ける。その顔を見た男性は顔が顔が赤くなりおでこには血管が目に見えるくらいに浮き出している。
「何だその目は! どうやらもっと痛い目を見なきゃ分らねぇようだな」
男性は腰に差していた短剣を取り出す。
「おいおい、使い物にならなくする気か?」
側で見ていた他の男性が短剣を持つ腕を掴もうとするとその腕を払いのける。
「大丈夫だ、利き手じゃねえ方の腕ねら仕事につかえねえだろ」
そういうと少女の左腕を掴み押さえると短剣を高く振り上げる。
「やっ、お願いしますやめて下さい!」
少女が泣き叫ぶがそれを無視した男性が短剣を振り下ろそうとすると、「止めないか」大きな叫び声が響き渡ると同時に草陰から何者かが飛び出してくる。
振り下ろした短剣を止め男性達が咄嗟に声がした方を向くと、白銀のフルプレートの鎧を着た人物が立っていた。
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