ep4 洞窟内での死闘
「な、何でこんな事になったんだ」
膝まづくケットの周りにはリタ達が倒れていた。
時は1日前まで遡る、ダンジョン『トジロ』に入っていたケット達は多数の魔物と戦闘をしていた。
「フン、エヤー」
「ホッ、ハー」
ケットは迫る敵を剣で切り倒し、リタは正拳突きと回し蹴りで魔物を倒して行く。
「トト、横から来る奴を撃て!」
「はいよー、喰らえ」
弓使いトトは壁をつたい迫る魔物を弓で端から撃ち抜いていく。
「さすがに数が多い…」
「任せて、『我の前の敵を撃て、サンダー』」
稲光と共に電撃が残りの魔物を一掃する。
「助かったぜローゼ」
「この位どうて事ないわ」ローゼはクイと眼鏡を直す。
倒した魔物からギルドに出す素材を剥ぎ取る中、ケットだけダンジョンの奥の方を見ていた。
「ちょっと、ケットも少しは手伝ってよ」
リタの言葉にケットは振り向きリタ達を見回す。
「なぁもう少し奥の方行ってみないか?」
ケットはスッとダンジョンの奥の方を指差す。
「奥って今日はここで魔物を倒すって言ってたじゃん」
「もうここの魔物だったら俺達なら楽に倒せる、もう少しぐらい奥に行っても大丈夫だ」
リタの言葉を聞かず、自分の考えを通そうとするケット。
「まぁ、まだ弓もあるし少しぐらいならいいんじゃないか?」
「そうね、もっと攻撃魔法の研鑽もしたいし」
トトやローゼもケットの考えに賛同する。
「よし、じゃあ行こうぜ」
ケットが歩き出すと、トトとローゼが後を付いて行き更にその後ろを不満の表情を浮かべたリタが歩く。
しばらく歩くと2足歩行で全身が毛に覆われ狼の頭を持つ『コボルト』が4体が現れる。まだケット達に気付いてない様で地べたに座り手持ちの武器を磨いている。
「まだこっちに気付いてないな、よし先ずはトトが1体を集中して撃て、動揺した奴らを俺とリタで襲撃するからローゼはその間に魔法を撃て!」
「よっしゃあ、分かったぜ」
「ええ、分かったわ」
ケット達が動き出す。コボルトの1頭がケット達に気付き振り向いた瞬間、3本の矢が頭と体を射抜いてその場に倒れ込む。直ぐに残りのコボルト達が体を起こすと同時にケットとリタが攻撃を仕掛ける。
不意を突かれたコボルト達はろくに武器を持てず、傷を負っていた。
本能で悟ったのかコボルト達は倒された仲間をそのままにダンジョンの奥に走って逃げて行く。
「なっ! 逃げんじゃねー!」
「ちょっと! これ以上奥に行ったら」
「うるせー、後もう少しで倒せるのを見過ごせるか」
ダンジョンは奥に進む程、高難度の魔物が住み着いているのを知っているリタが止めようとしたが聞く耳を持たずケット達がコボルトを追いかける。
しばらくするとダンジョンの袋小路にコボルトを追い詰めたケット達は取り囲み戦闘準備を整える。
「よし、行くぞ!」
ケットが剣を構えた瞬間ダンジョン内が大きく揺れ始めた。
「なっなんだ!?」
「地震?」
地震が治らぬ中、ケット達とコボルトのいる足場にひびが入る。
「ヤバイ、崩れるぞ逃げろ!」
ケットが大声で叫び走り出そうとした瞬間「ゴゴゴ」という音を立てて地面が崩れだしケット達は下に落下した。
「うっ、おい大丈夫か?」
「お、おう大丈夫だ」
「私もなんとか大丈夫よ」
ケットの声掛けにトトとローゼは答えるがリタだけは返答をしなかった。
ケット達がリタを探すと、崩れた瓦礫が山積みになっている側でリタが頭から血を流し倒れていた。
「おい大丈夫か?」
ケット達が近寄り声を掛ける。
「うっ…」
意識がありとりあえず安心していると、瓦礫の向こうから傷を負ったコボルト達が向かって来る。
「クソ、死に損ないどもが」
「今度は全部倒してやる」
「纏めて灰にしてやるわ」
ケット達が身構えるとコボルト達がいる所の壁が爆音と砂埃と共に吹き飛んだ。
「なっ何が起きた!」
ケット達が爆音がした壁の方を見ると、砂埃の中からぼんやりと影が見える。徐々に砂埃が晴れると一体の魔物の姿が露わになる。
そこにいたのは、『オーク』と呼ばれる魔物で人に似た姿をしていて、角と牙を有している。人間程ではないが、知性を持っている。だが、そのオークは彼らが知るオークとは違っていた。大きさが普通のオークより一回り大きく、体は硬質な筋肉に覆われ体はまるで体中の血液が沸騰しているかの様な赤色をしていた。
「何だあのオーク今まで見たことがない」
「もしかして『ハイオーク』オークの希少体!」
ローゼの言葉にケットやトトは顔色を変える。
コボルト3頭は傷を負っているとはいえ、闘える状態でオークも加わり4体に対してこちらはリタが戦闘不能で3人数では向こうに劣る。
「こうなったらやるっきゃねぇ! トト援護を、ローゼはでっかいのを喰らわしてやれ!」
「よっしゃあ、任せとけ!」
「もう準備してるわ、でかいのかますわよ!」
「よし、行く…」
ケットが叫ぼうとした瞬間、「グチャ」鈍い音がして言葉を失ったケット達は唖然としていた。
ハイオークが手に持っていた棍棒でコボルトの1頭を頭から殴り倒したのだ。
殴られたコボルトは頭から地面にめり込み生き絶えていた。
仲間の死にたじろぐコボルト達にハイオークが棍棒を次々と振り落とす。始めはギリギリ避けていたコボルト達もやがて力尽き、まるで紙切れの様に宙を舞い生き絶えた。すると、ハイオークはコボルトの亡骸を1頭足から持ちあげると、もう片方で首を持つと胴体に鋭い牙で噛み付き食べ始めた。
内臓を噛む音、骨が折れる音だけが、ダンジョン内に響き渡る。ケット達はただその光景を見ているしかなかった。
やがて全てのコボルトを食べ終えると、血で汚れた顔を拭う事なく、ケット達を鋭い眼光で睨みつける。
「こうなったらやるしかない、トト援護をローゼは飛びっきりの魔法を喰らわしてやれ!」
「もう準備してるわ、もう少し時間を頂戴」
ローゼは集中し、魔力を込めていく。ケットがハイオークに近づき剣を振るうが、硬質な筋肉に弾かれてしまう。背後の四角に回り込んだトトが弓を射るが、背中に回した棍棒に刺さり防がれてしまう。
「くそ、剣が通らねえ」
「こいつ後ろにも目が付いているのか?」
ハイオークがケット達に向けてこを振り上げた瞬間、ローゼの声が響き渡る。
「轟け雷鳴、我が前の敵を迸る迅雷で貫け『ライトニングサンダー』」
ローゼの杖から放たれた魔法がハイオークを包み込む。
「やったぜ! さすがローゼ」
「ふん、私の魔法にかかればこんなものよ」
ケット達がローゼに近寄ろうとすると、さっきまで笑みを浮かべていたローゼの顔が一気に青褪めた。
ケット達も気付いて振り向くと瓦礫の中からハイオークが起き上がってきていた。
「嘘でしょ、私の高位魔法でも倒せないなんて」
「諦めるな、まだポーションもある俺達で時間を稼ぐからさっきのもう一発喰らわしてやれ」
「分かった、任せて」
「よっしゃあ行くぜ」
それから時間だけが過ぎていき、ハイオークの攻撃を何とか凌ぎローゼが魔力が溜まり次第高位魔法を打ち続けたが、決定打にはならなかった。
「『サ、サン』うっ!?」
ローゼは魔力が不足しその場に倒れ込む。
「ローゼ! くそっもうポーションが無い」
「うっ、うおおああ〜」
トトが残りの力で足を走らせ、壁を足場に跳躍する。
「喰らえー!」
トトが放った矢はハイオークの顔に向かい放たれたが、ハイオークは左腕で顔面を覆うと矢が腕に当たる。顔面を覆っていた腕を広げる様に振ると宙にいたトトに衝突し、衝撃音と共にトトが壁に叩きつけられる。
「トトー!?」
腕に刺さった矢を抜き地面に投げ捨てたハイオークはケットの方を向く。その時放たれた圧でケットはその場に膝から崩れ落ちる。
ゆっくり近づいて来たハイオークが棍棒を上に振り上げる。
ケットは絶望感から動く事が出来ない。
ハイオークが棍棒を振り下ろすと同時に何者かの影がケットとハイオークの間に入り込むとその瞬間、衝撃波が発生する。衝撃波で思わず顔を腕で覆っていたケットが恐る恐る顔を上げるとそこにはハイオークの棍棒を盾で受け止める。全身に白銀の鎧を着た騎士の姿があった。
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