ep3 初めてのダンジョン
リオンは何気に目を覚まし体を起こす。大広間の床には残骸と化した石像達が床に散らばっている。
まだ頭がぼんやりする中、自身に起こった事を思い出していた。
あの後無我夢中で迫る石像達をどうにか倒し、全ての石像を倒しきると同時に魔力が無くなり意識を失ったのである。
魔力が無くなった為か鎧は脱げていた。しかし鎧は何処にも見当たらない。
「夢だったのか?」
「夢デハアリマセン、マスター」
まだ覚めきっていない頭に例の声が突然聞こえ、思わず大声を出してしまいそうになったが、まだ体力が戻らない為出なかった。
「あの鎧の声?何処にいるの」
「胸元ヲ見テ下サイ」
胸元を見ると、透明で一寸の曇もない宝石の様な結晶が銀色のチェーンにくっついていてネックレスの様に首に架かっていた。
どういう仕組みになっているか気になったが、身体的にも精神的にも疲れている今、取り敢えず考えるのをやめて外に出る事にした。
壁をつたいながらようやく外に出ると日が沈みかけ暗くなりかけていた。朝早く出た筈なのに大分意識を失っていた様だ。
日が落ちない内に何とか家に着いたがそのままベッドに倒れ込み意識を失う様に眠りについた。
翌日、昼前まで休んでいたリオンはダンジョンの洞窟のすぐ前まで来ていた。
このダンジョン『トジロ』はリオンの住んでいる村から北東の方角に位置するダンジョンで山肌を掘り進めた洞穴の様な見た目をしている。
リオンは胸元に架けられている宝石を握り目を瞑り集中すると宝石が光りを放ち出す。光りが止み目を開けると、鎧を着装していて右手にソードを左手にシールドを持っていた。
「本当に出てきた」
家からダンジョンへの道のりの間に鎧の声に色々聞いていた。
鎧を着て動く事が出来るのは、鎧と僕との間に魔力で埋める事で足りない部分を補っているそうだ。その魔力を循環する事で重厚なシールドや大剣であるソードを持つ事が出来る。魔法で例えるならば、身体強化の魔法を常に使用している状態らしい、どおりで疲れるわけだ。
鎧や武器の一式は今いる空間とは別の空間に存在していて、取り出す時は一時的に空間同士を繋げ取り出すのだそうだ胸元の宝石はその為に必要な媒体なんだそうだ。
準備が整いダンジョンの中に入っていく。中は薄暗く向こう側は完全に暗闇で視認出来ない。
慎重に進んでいると天井から何かが音を立てて飛び出して来た。大型の蝙蝠の魔物である『ディービルバット』である。
「キィー」という金切り声の様な鳴き声を上げてリオンの周りを飛び回る。
リオンの後ろに回った『ディービルバット』が鋭い爪を持った足で襲いかかるがシールドで妨げられ体勢を崩され、体勢を立て直そうとした時にソードが頭の上から振り落とされ、縦から真っ二つに切断された。
「ふう、よし倒す事が出来た!」
初めて魔物を倒す事が出来た。魔物に対しての知識はギルドに魔物に対する資料があり、野草を精算している間に目を通していたので魔物の習性を知っていたので死角からの攻撃も防ぐ事が出来た。
奥に進むと床や天井がウゴウゴと動いていたので目を凝らして見ると芋虫の『ロールキャタピラー』が群れをなしてこっちに迫って来る。リオンの近くまで来ると、『ロールキャタピラー』が体をくねらせ跳ね上がると体を前に屈めて車輪の様な形になりそのまま上から落ちて来る。
シールドで防ぎながらソードで切り進んでいくが、数が多く大剣のソードでは大振りの攻撃しか出来ず、効率が悪い。どうにかしないとと考えていると、鎧の声が聞こえた。
「ソードノ『アダプデイション』ヲ行イマス」
またよく分からない単語が聞こえたと思えば、ソードの大きさが小さくなり、片手で持ちやすい大きさになった。
お陰で小回りが効く様になり、大勢いた『ロールキャタピラー』達が徐々に数を減らし、ようやく全て倒しきった。
ダンジョンに入り、半日程経ったが昨日みたいに魔力不足にはなってはいない。鎧の声が言うには初めて着用した時は、鎧の貯蓄魔力が空だった為僕の魔力だけで動いていたのですぐに魔力が枯渇してしまった様だ。
昨夜休んでいる間に僕の魔力を宝石を通して貯めておく事で長い時間の活動が出来ているとの事だった。
しかし、あまり時間が掛かるとギルドで精算する時間が無くなってしまうので今日はここで中断する事にした。
ダンジョンを出たリオンは鎧を解除すると、ギルドのある都市『サキニラ』に向かった。
『サキニラ』はダンジョンから西の位置にあり、近隣の村から農作物を売りに来る商人達で賑わう中規模都市である。
都市の中央に建物を構えているギルドでは、多くの冒険者が集まり倒した魔物をお金に換金したり、飲み食いしながら冒険者同士で交流を深めて盛り上がっている。
ギルドに来たリオンは受付で倒した魔物の一部を入れた袋を受付の男性職員に渡す。
「確認致しますのでしばらくお待ち下さい」
男性職員が袋を持ちカウンターの奥の方に進んで行った。
男性職員を目で追っていると、職員数名が騒いでいた。すると、その内の一人の女性がリオンと目が合うと近づいて来た。
「リオン君来てたんですか?」
女性は額に汗を滲ませ息を切らしていた。
「エリセさんどうかしたんですか?」
エリセは20代前半で小さな丸渕の眼鏡を掛けた女性、リオンが野草の換金の時に何度か話しをした事がある仲だ。
普段お淑やかな彼女が今日は明らかに様子が違った。
「エリセさん何かあったんですか?」
「えぇ、昨日ダンジョンに入ったという冒険者パーティーが戻っていないという連絡が今ギルドにあったの昨日地震があったからもしかしたら巻き込まれたのかもしれなくて、今救助隊を編成してたの」
彼女の言葉にリオンの頭の中にはダンジョンに行くと言っていたリタ達の事が浮かんでいた。リタの身に何かあるかもしれないと思った時には既に駆け出していた。
「リオン君!?」
エリセの声が響いたギルドを後にし、都市を出ると胸元の宝石を握り鎧を着装すると、暗くなる道を駆けた。
3話目を読んで頂きありがとうございます。仕事や休日の合間に少しずつ作業しています。慣れない所もありますが、引き続き更新していきます。