ep1 魔法を使えない魔法使い
初めて「小説家になろう」に投稿させて頂きます。少しでも読んでもらえればありがたいです。
「おお、何という凄まじい魔力の量なのだ!」
「リオンこの子はきっと歴代の魔術師の中に名を連ねる存在になりますよ」
リオンの魔力を見ているのは魔法学校の校長の老師とその側近の女性そして回りを囲む様に座る人々が皆リオンという少年に期待の眼差しを向けていた。
そしてリオン自身もその期待に答えようと決心していた。
しかし、その状況を180度変える事態が起きたのだ。
魔法使いとしての才能を見出され、特待生として入学したリオンだったが、入学して数ヶ月経っても魔法を一度も使えなかったのだ。
詠唱には何の問題もないが不発するどころか何も起きなかったのだ。
おかしいと感じた。校長達が医者や教会の神父、呪術師に見てもらうが誰一人として原因をつとめる事が出来ず全員匙を投げたのである。
入学してから1年が経ち一向に魔法を使える気配がないリオンはついに魔法学校を去る事になる。
それから3年が経ち、リオンは大きな籠を背負い家を出ると近くの森に向かっていた。
道中、4人の冒険者パーティーとすれ違う。リオンはすれ違い様パーティーの一人が気付き声を掛けてくる。
「おい、リオン魔法使いが籠背負ってどこに行くんだ?」
声を掛けてきた男性ケットはリオンと同郷で真新しい鎧に剣を背中に差していた。
「何だよ?魔法使いだから薬を作る為に薬草を摘みに行くんだろ?」
一緒にいた背中に弓を背負った弓使いの男がケットに問い掛ける。
すると、ケットは口角を上げ不敵な笑みを浮かべる。
「こいつ、魔法学校に特待生て入ったが魔法が使えなくて学校辞めさせられて今野草を摘んで暮らしてんだぜ」
「マジかよ! そういえば魔法使いならお前も知ってるんじゃないか?」
もう1人の黒いローブに身を包み小さな眼鏡を掛けた魔法使いの女性に弓を背負った男性が問い掛ける。
「確かに一時期噂になっていたけど、魔力があるのに魔法を使えないなんて理解出来ないわ」
ローブを着た女性は小さな眼鏡を指で掛け直しながら答えた。
「ハッハッハ、そうだな訳分かんねーよな」
ケットが笑っていると、もう1人いた女性が声を掛ける。
「もうそろそろダンジョンに向かった方がいいんじゃないかな、早くしないと日が暮れるよ」
声を掛けた女性は、パーティーの中で一番身軽な格好をしていて手には籠手を着けている。
「そうだなリタこんな奴ほっといて行こうぜ」
ケットが歩き出すと弓使いの男性と魔法使いの女性が後ろに付いて歩き始めるが、リタだけリオンに近づきリオンに話し掛ける。
「ごめんねリオン、ケットの奴わざわざあんな事言わないのに」
「いいよ、それより一緒のパーティーになったんだね」
「う、うんケットに同じ所出身だからってね向こうは近接戦闘が出来る奴を入れたかっただけだと思うけどね」
リタは苦笑いを浮かべていた。
リオンとリタは家が近くの幼馴染で家族ぐるみで仲良くしていた仲だ。
「オイ、何してんだリタさっさと行くぞ!」
ケットの声が遠くけら響く。
「ごめん、もう行くね」
「うん、気を付けて」
リタはリオンに手を振るとケット達の元へ走っていった。
リタを見送るとリオンも森へ向かう。
野草を摘む場所は大体決まっているが、あまり取りすぎると生えてこなくなる為数カ所に分けて摘んでいた。
その内の一ヶ所に向かうと野草の群生地がある所が荒らされていた。
森には魔物が出る為魔物に荒らされたのかと思ったが、野草のいくつかは刃物によって切られた後があり踏まれた所には鎧特有の跡が残っていた。
犯人はすぐに想像がついたが、責めている場合ではない。他の場所はまだ摘んだばかりなのでまだ生えていない、仕方なく他場所を探す事にした。
森の奥に行かなければいけないが、奥に行くにつれ魔物に遭遇する可能性が上がる。護身用にナイフを腰に差しているが、もし襲われたら間違いなく命を落としてしまう為慎重に歩みを進める。
しばらく歩くと目の前に崖が現れた、木々が生えているが野草が生えている様子はない為引き返そうとすると、突然地鳴りがし直後地面が大きく揺れ始める。
リオンは立っている事が出来ず、地面に伏せていた。
すると、「ゴゴゴ」という轟音と共に崖が端から崩れ始める。崖の近くに生えていた木が崩れる崖と共に下に落下していく。
地崩れがリオンに迫り起き上がろうとしたが間に合わず地崩れに呑まれてしまう。
リオンはふと目を覚ますと崩れた土砂の上に倒れていた。
柔らかい土砂の上に落ちた為、擦り傷が体のあちこちに出来ていたが、体を動かす事が出来た。
体を起こすと目の前に石造りの建造物が現れた。
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