57,少しだけ⑴
また遅れてしまいました……。
まぁ不確定要素がない転生なんて今まで見たことも聞いたこともないんだけど!
だからまぁ、成り行きって感じ……なわけにもいかないけど、とにかくなんとなくやってみようかな。
不確定要素だってある程度は楽しいわけだし。
それなら、まぁ……ね。
シュヴァルツの事だって、すっかり忘れちゃって名前を聞くか会うかしないと思い出せない攻略対象たちだって、まぁなんとかなるさ!
楽観的にね。
「シュヴァルツ…………と言うよりは“精霊”だけど、それに関してはこれもあるわけだしね!」
……そう言って取り出すのは、「精霊手記」の⑴。
つまり、買った本のうちの一冊。
まぁ別に取り出すのは四冊のうちのどれでもよかったんだけど、ちょうど一番上にあったから。
「カリバー・ドン作、精霊手記。
4572年発行……………………って、今何年!?」
どー考えても時系列がアレなのよ。
21世紀とかはるかに昔じゃないのさ。
“ゲーム”だからってぶっとんだ設定作りすぎじゃない!?
っていうか私が住んでた所が“西暦”だとして、この世界は“何暦”だ?
そこからまず分からないや……。
……ちょっと冒頭部分、読んでみようかな……。
今は荷物整理の途中だけど、結構できてるしちょっと初めの方を読むだけならいいよね……。
「少しだけなら…………。」
……そう呟いて、私は本の表紙をめくった。
びっしりと、文字が目に飛び込んでくる…………けど、そんなに細かい訳でもない。
至って普通の文字サイズで、きっと読みやすい。
「……へぇ。」
まず驚いたのは、この本の発行日が“4572年”でも、原文が書かれたのはもっと昔ってこと。
“2553年”って、すごい昔だよね。
ほんとに昔。
2000年以上前だ。
暗算なんて超絶面倒だから詳しい数字なんか数えないけど、この差分くらい西暦から引いたら、余裕で紀元前とか行っちゃうんじゃないかな?
「なんかもう、スケールが……。」
デカい。途方もなく。
こんな設定を“ゲームだ”て言って作ってる人たちなんかすごいな。
……そりゃ、売れないのはショックだっただろうな……。
ちょっと同情。
だから“裏ルート”なんて魔改造が現れたわけだしさ。
たぶん。
きっとこの世界を隅々まで調べたら、もっと色んな設定が沢山出てくるんだと、思う。
「プレイヤーには明かされない、“裏設定”的存在、ねぇ…………。」
……ぽつりと、呟いた。
なんだか楽しそうじゃないの。
今は何年なのかとか、“何暦”が使われてるのかとか、そういった簡単なことならすぐに調べられるはずだし。
……っていうかその情報が私の頭の中に勝手に存在していなかったって事は、リリアーネはそれを知らなかったって事なのかな?
基礎情報っぽいのに……。
週一ぐらいで徹夜しないと間に合わないかもしれないな……。