51,ガラクタ部屋⑴
とうとう51話!
楽しいな。
私は、にやりと微笑を浮かべながら言った。
「私だって使えないわけじゃないもの。魔法♪」
「何魔法?」
「氷よ。」
元々、鍵の型版って金属を流し込んで固めて作るでしょ?
それなら氷でもできないこともないはず。
習得したばかり(らしい)の氷魔法、使わない手はないわよね!
「なるほどな……。」
どうやらシュヴァルツも納得したらしい。
「でもひとつ心配なのは強度だけど、大丈夫なワケ?」
やっぱりそこは心配よね。
なんてったってただの「氷」だもの。
脆いったらありゃしないわ。
でも大丈夫、そこはもう解決してるのよねぇ。
「そこは既に検証済みよ。
魔法の氷は結構丈夫みたいで、細長く剣の形にして打ち合わせてみても、壊れなかったから。」
他にも壁に叩きつけたりとか色々としてみたけど、多分大丈夫でしょ。
「なら実行だな。」
「そうね。早速部屋の前に行きましょう。」
早速、私の部屋から二つ離れた部屋の前に来る。
そして型版を取り出すと、その空洞を氷魔法の氷で埋め尽くす。
どこから氷が出てきたのか分からないけど、多分空気中の水蒸気を集めて結晶化させてるんじゃないかなぁ。
そうでもないと説明つかないし。
そしてみるみるうちに氷はできて、鍵の形になった。
「……よし、完成ね!」
早速鍵穴に差し込んで、回してみる。
…………カチャリ。
「やった!」
「っしゃ!」
鍵は空いた。
すんなり綺麗にあっさりと。
そのまま扉をガチャっと開いて、中を覗く。
「おっと、これまた……。」
「あんたの家どうなってんの?」
「私に聞かれても……。」
なんとそこには、大量の本棚と大量の薬品と……。
……大量の、よく分からないもの。
「明日の朝にはこの屋敷を出なちゃいけないのが惜しくなってきたわ……。
なんて探検しがいのある屋敷かしら……。」
「え?屋敷を出る?どういうこと?」
思わずつぶやくと、それにシュヴァルツが反応した。
「私、明日から寮制の学校に復帰するのよ。
講義は午後かららしいから、八時には馬車に乗らなきゃいけないかしらね。」
グルベンキアの領地からアルドンサ魔法学校までは二時間ほどかかるって記憶が言ってるから、そうなるわよね。
詳しいことはセシルから聞けばいいけど。
「じゃあ、この屋敷を紹介してくれた張本人はそこに居ないってわけか。。
まるで宿貸しだな。」
「そう。
せいぜい人に見つからないように気をつけるのね。」
いざ見つかったとしても、私がそこに居なくちゃ庇うこともできないし。
「じゃあこの部屋も、なるべく物を動かさないように居座るとするよ。」
「そうするといいわ。」
主人公は結構無責任です。