4,生まれ変わったら主人公!?⑷
※加筆修正済み
毎日更新テッテレー
記憶の鮮明なところとうろ覚えなところが入り混じって、曖昧だった。
リリアーネとかグルベンキア家の詳細とかはそれとなく覚えているのに、他のこと──つまりセシルの死因とか攻略対象たちのこと──とかになると全然思い出せない。
本人に会ってしまえば、攻略対象たちのこととかは思い出せるかもしれないんだけどなぁ……。
でもそれが誰だかもわからないから、誰に会えば良いかすらもわからないのが問題。
“攻略対象”って事は自然偽生活してればそのうち接触できるとは思うんだけどね。
だから少しは、楽観思考でいても良いか。
……こういう時は普通元の暮らしへの未練とかあると思うんだけど、不思議とそれもない。
そもそも戻りたいと思ったって、異世界転生したラノベの主人公が戻れた試しもないし!
……………………多分。
「まぁともかく、頑張って生活でもしてみるか。
あわよくば元の世界に戻る方法を知ってる人とかを見つけられたら御の字って事で!」
異世界のことを知ってるシャーマン的な人だって存在するかもしれないからね!
よしっ、と言って立ち上がると、一瞬目眩がして倒れそうになった。
のぼせちゃったのかな……?
危ないわね。
「もう上がっておこうかしら。」
あまり長く湯船につかりすぎるのも体に良くないし、そうするのが良いわよね。
また倒れる、なんて事になってしまったら大変だし。
そもそも、これが明晰夢である可能性だってまだ捨て切れたわけでは無いわけだもの。
……今さらではあるけれど。
そんなことを考えつつ脱衣所に戻った。
もちろん、きちんと体を拭いてからでたわよ?
「……あら、準備のいい。」
そこには、着替えらしきものがおいてあった。
だから、準備がいいわねってわけ。
……まぁ用意されてなかったらむしろどうするんだって話ではあるわけだけどさ。
うっかり大慌てでお風呂に入りはしたは良いものの、着替えがなかったら大変だものね。
バスローブだけで屋敷内をうろつくハメになってしまうもの。
だからセシルには感謝しなくちゃいけないわ。
そんなことを考えながら着替えのほうに目を移すと……。
「あぁ……。この問題のことをすっかり忘れていたわ……。」
さっそく、そして唐突に、それなりな大問題が発生した。
◆◆◆
「はぁ……。やっと終わったわ…………。」
考えもしていなかったわ。
まさか着替え一つにこんなに時間を要する事になるなんて、ね。
お嬢様の服を甘くみすぎていたようね……。
ドレスの着付け方なんて私にわかるはずもないでしょう?
とても面倒なのよ、これが。
悪戦苦闘してどうにかシュミューズだけは着ることができたけど、あとはもう全然ダメ。
試しに持ってめたドレスはとても重いし、こんなものを着て歩くことができるのどうかさえ不安。
次いでファスナーとかもどう考えたって一人じゃ着れなさそうだし、リボンやショールなんてもう何が何だかわからない。
「さっきの服、こんなにたくさんあったっけ……?」
なんだか、もう少し少なかったような気がする。
やっぱり病人が着ていた服だったからかな……。
……いや、違うわ。
私がさっき着ていた服、ドレスなんかじゃなくてネグリジェだったじゃない。
っていうかシュミューズの上にドレスなんか着るっけ?
シュミューズは肌着でしょ?
……ああもう!わからないわ!
そもそも私は服のことに詳しくなんかないのよ!
この世界のこととなってしまえば尚更なのはわかり切ったことじゃない!
「リリ様?」
急に、外からセシルの声が聞こえた。
「え、えっと、なに?」
まだ服をちゃんと着れてないけど、大丈夫かな……。
……いや、セシルだから大丈夫か。
「入らせていただきますよ……あら?」
返事を待たず入ってきたセシルは、私を見て驚いた声を上げた。
「ドレスも一人で着ようとしているのですか?」
……はい?
「えっと……、どういうこと?」
「今日のパーティードレスは、リリ様お一人で着用できるものではなかったはずです。
ですので、私が着付けを行う手筈だったはずですが……。」
……え?パーティー?なんのこと?
調子乗ってます。