16,冷めた食事と食文化
遅れた昨日の分です。
宿題に追われて、終わったら寝落ちしてリリアーネ書けませんでした。
「やぁおはよう、リリアーネ。」
そうやって声をかけてきたのはレグトルス……もとい、リリアーネの父親。
そしてこのグルベンキア邸の主。
「おはようございます、お父様。」
セシルが椅子を引いて座らせてくれたんだけど、挨拶をしている一瞬で音も立てずにどこか行っちゃった。
……まぁ仕事か食事のどっちかなんだろうけど。
二人だけで食べるのも何だか味気ないし、何人か呼んで一緒に食べればいいのに……。
まぁ、それがレグトルスの意思なのなら、ひいてはグルベンキア家の方針なのだから、私が口を出せることではないのだけれどね。
……と、レグトルスが
「アーメン」
と呟いてからナイフとフォークを手に取って、食事を始めた。
……っていやいやいや、世界観どうなってるのよ!
どう考えてもアーメンの世界じゃないんだけどなぁここ……。
世界設定作った人が適当だったのかしらねぇ……。
そんな事を思いながら深く考えずに手を合わせた。
「いただきます。」
もちろんいつもの習慣だから、深い意味はない。
無いのだけれど…………。
「なんだ?いただきますとは。」
……あ!そうだった!
お父様にそう聞かれてしまった。
……そう、そうなのよ、すっかり忘れてた……。
ここはいただきますの世界でもないじゃない!
日本じゃあるまいし“いただきます”なんてもっとありえないじゃん!
うっかりしてたぁ……。
でも習慣なんだもん!
しょうがないよね!
……なんて風に自分に言い訳はしたけど、お父様にはなんて言おう…………。
「とある国の形式なんだって。
何かで読んだことがあるのを思い出したの。
『あなたの命を有難く“頂きます”』っていう意味を込めて、言うらしいわ。」
神に食物を感謝するのではなく、その命を持っていたそれそのものに感謝する。
“アーメン”とは全く違う価値観。
これは深く話すと、『唯一神』を否定することになっちゃうから注意が必要だけどね。
だからそこまで詳しくはお父様にも話さなくていっか。
「リリアーネは昔から外国の本が好きだもんなぁ……。
沢山勉強しているようで何よりだ。」
「ありがとう。」
リリアーネは外國の本が好きなのねぇ……。
……と、ここで、会話は途切れてしまった。
どちらもそれとなく気まずくて、静かな沈黙が周りを包む。
──き、気まずい………………!
普通なら当たり前に起こるはずの“家族の会話”ってもんが一切ない…………!
お父さんも無表情だし、これがこの親子の当たり前……?
ちょっと反応に困るな……。
……早いとこ食べて、この状況から離脱したい……!
って思いながら、食べ物を口に運んだ。
今日の分は放課後出します。