13,羽根ペンを揺らせば⑵
日記の続きからです。
……さてリリアーネの日記にあった“氷魔法”の件だけど、余興は無事大成功をおさめたわ。
いきなり使えた魔法を使って、空中にいわゆる雪のアートを作り上げたのよ。
みんな拍手喝采の大盛り上がりという事で、楽しんでもらえて嬉しかったわ。
大変だったのは知らないことを知ってるふりすることかな。
いつボロが出ないかってひやひやしてた。
だから、この日記も誰かに見られたら終わりね。
お父様が勝手に日記を覗くタイプの人間じゃないことを祈るわ。
もちろんセシルも。
あとは、今後部屋に入るかもしれない攻略対象達にもね。
……できれば入れたくないけど。
沢山書いていたら、リリアーネよりも長くなっちゃったわね。
そろそろ切り上げようかしら。
じゃあおやすみ。
“あなたのリリアーネ”
「こんなもんでいいかな。」
ふぅ、とため息をひとつ吐いて羽根ペンを置いた。
なんかリリアーネが書いてるやつよりも随分長くなっちゃったけど。
今まで日記を書くって習慣がなかったからちゃんと続けられるか不安だけど、なんだか楽しみかも。
「ふわぁ…………。」
欠伸が出た。
……少し眠くなってきたかな…………。
時計を見ると、いつの間にか十二時を回っていた。
「そんなに長い時間書いてたっけ……?」
三十分位しか経ってないような感覚だった。
なのに一時間経っているなんて……!
久しぶりにゆっくりと自分の好きな事を自由に書くことができたから、思わず楽しくて時間を忘れてたのかなぁ…………。
……そろそろ、寝た方がいいかも。
よいしょ、と椅子から立ち上がって、本を手に持った。
ちゃんと本棚に戻しておかなくちゃね。
つかつかと本棚に向かって歩く────
「きゃッ!」
ずてん。
何もない所で躓いて転んじゃった……!
日記も落としちゃったし……!
恥ずかしい……!
誰も見ていないとはいえ恥ずかしいよ……!
……慌てて、立ち上がった。
服に付いた埃をパンパンとはたいて……。
あぁ……。
せっかくのアメジストパープルのネグリジェが少し白くなっちゃった……。
まぁセシルに言えば綺麗にしてくれるかな。
明日言っとくかぁ〜。
なんてことを考えて、落としてしまった日記を手に取る。
開かれていたページになんとなく目をやると……。
「え……!?」
思わず、閉じかけていたページを開いてじっくりと見た。
そこは、リリアーネが階段から落ちる二日前の日記──つまり、私がさっき読んだリリアーネの日記のひとつ前──なんだけど……。
「そっか……。」
なるほどねぇ。
ひとつ、思い出したわ。
「ふふふ、良かった良かった。」
リリアーネの日記……もとい、今は私の日記ね。
日記を本棚に戻して、そのままの足でベッドに向かった。
さっき日記を読んで思い出したことは、多分明日になったらはっきりするはず。
さぁさぁ、楽しみにしておきましょ♪
「おやすみなさい、リリアーネ。」
そう言って私は、目を閉じた。
次から新章に入ります。
章設定はしてないですけどね。
他にもいろいろ書こうと思っているのがあるので、良かったらお気に入り作者登録してくれると嬉しいな。
もちろん異世界だよ。
リリアーネが一段落したら書き始めるつもりなり。